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[No.1602]

  • (金)

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「表紙」2016年01月07日[No.1602]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 39

茶道裏千家・華道風水流 基督聖契教会 牧師 運天 君子さん
茶道裏千家・華道風水流 佐久間 エリザさん

茶華道は生涯の学び

 自宅に構えた茶室で、凛(りん)とした和服姿でほほ笑む運天君子さん(74)と娘の佐久間エリザさん(46)。2人は共に、茶道裏千家で準教授の許状を持ち、また華道風水流の宗家として活動している。「茶華道は生涯の学び。どんなに技が上手でも、宗教性・内面性が欠けていては十分ではありません」と君子さんは言う。厳しい伝統の道を進む心を支えてきたのは、キリスト教への信仰だった。そばで母の茶華道人生を支え、今は自身も指導者として活躍する娘のエリザさんも「母は祈りの人。苦しいことも、祈りの中で乗り越えてきたんです」と話す。



祈りに支えられた人生

和服姿が似合う運天君子さんと娘・佐久間エリザさん。茶道に加え、華道、書道、短歌、俳句と幅広い道を修めている。
 いずれも和の芸事だが、2人の精神的中核となっているのは、実はキリスト教への信仰だという。



キリストに導かれて

 与那国島で生まれ育った君子さん。キリスト教との出合いは、子ども時代にさかのぼる。「小学校の時、とても優しいクリスチャンの女性の先生がいて、自分も教会に通いたいと思ったんです」。その後、那覇市内の高校に通い始めた君子さんは教会に足を運ぶようになり、17歳で洗礼を受けた。

 君子さんとキリスト教の縁は、夫との出会いによってさらに深まる。琉球大学に進学した君子さんは、化学講師だった運天康正さんと22歳で結婚。もともと康正さんはクリスチャンではなかったが、東京大学元総長の故・矢内原忠雄氏が講演で来県した際に「真の教師になりたかったら聖書を読みなさい」と説かれ、洗礼を受けた。やがて康正さんは牧師となり、生涯を神に捧げるため化学講師の職を辞して宣教に打ち込むようになった。

 君子さんが茶道と華道の道を歩み始める契機となったのも、夫の宣教活動。「29歳のころ、アメリカへ宣教に行くという話が出て、日本の文化を紹介したいという思いから習い始めたのがきっかけです」と話す。

 君子さんが体調を崩したため、アメリカ行きは実現しなかったが、以後も茶道と華道を継続。書道、短歌、音楽も含めた文化宣教を宣教の柱の1つとし、基地内や国外ともさかんに交流を行った。特に台湾には、10年間にわたり月1回通い続けた。子育てを終えた1995年、君子さんは基督聖契教会の牧師となり、いっそう精力的に茶華宣教の道にまい進し、現在に至っている。

ベスト尽くす生き方

 君子さんの次女、エリザさんは、茶道と華道に触れて育った。「子どもの時から、茶会のお手伝いをするのが当たり前という感覚でした」と振り返る。

 中学時代には、救護園で目の不自由な人たちが花をいける手伝いをした。最初は疑問を持っていたが、花をいけ終わると、みな表情がいきいきと輝き出すことに感銘を受けた。

 結婚・出産後は子育てに専念するかたわら、母の仕事を背後で支えた。「私はもともと前に出るのが苦手な性格。『母の背後の働き手』という思いで過ごしてきました」と謙遜するが、「何でも自分で考えて行動できる子」と君子さんからの信頼は厚い。君子さんが2000年から7年間、識名園で月1回のペースで開いた茶会の実務も見事にこなし、母から「あなたならできる」と背中を押され、2011年から茶道・華道の指導を開始した。

 「母は、4人の子を育てながら茶道・華道を極わめ、海外宣教も行った人。苦しいこともあったけれど、祈りの力で乗り越えてきました。私は母と同じようにはできませんが、母がつないできたものを後の世代に伝えたい」とエリザさんは力をこめる。

 「お互い、性格も生き方も違う」と話す母娘だが、2人に共通するのは「神に与えられたタレント(才能)を生かし、自己のベストを尽くす」という姿勢。2人の凛としたたたずまいに、どこか同じような印象を受けるのはそのせいだろう。茶の湯と信仰に育まれた母の心は、娘へ、そしてその次の世代へと受け継がれていくに違いない。  

(日平勝也)



プロフィール

うんてん・きみこ
 1941年生まれ。茶名は宗君、雅号は聖水。茶道裏千家準教授、華道風水流理事長兼副家元。高校生の時に教会に通い始め、洗礼を受ける。高校在学中に、夫となる運天康正さんと出会い22歳で結婚。牧師となった康正さんの宣教活動を牧師夫人として支え、文化宣教の一環として29歳から茶道・華道を習い始め、幼児教育、台湾を中心とする国外宣教・交流、医療宣教など幅広い分野で活動。1995年からは、基督聖契教会で牧師を務める

さくま・えりざ
 1969年生まれ。茶名は宗理、雅号は聖久。茶道裏千家準教授、華道風水流家元教授。幼少期より茶道、華道に親しみ、琉球大学大学院教育学研究科修了後も、母・君子さんの茶道・華道活動を支え続ける。2011年から茶道・華道の指導を開始。琉球新報カルチャーセンターで講座「茶道 裏千家」を受け持つ

琉球新報カルチャーセンター
☎098(865)5277
茶道・華道教室 ☎090(9787)1969



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佐久間 エリザさん 運天 君子さん
自宅茶室で茶釜の前に座る運天君子さん(右)と佐久間エリザさん。穏やかな表情の中に、すがすがしい気品が漂う=那覇市首里石嶺町 
写真・村山 望
佐久間 エリザさん 運天 君子さん
25歳の運天康正さんと17歳の君子さんの受洗記念写真
佐久間 エリザさん 運天 君子さん
エリザさん[手前]が高校生の時の家族写真
佐久間 エリザさん 運天 君子さん
1990年、台湾の華道研修生に門標を授与する君子さん
佐久間 エリザさん 運天 君子さん
1995年、62歳の康正さんと54歳の君子さん。この年、君子さんは牧師として活動を開始
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