沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1636]

  • (金)

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「表紙」2016年09月01日[No.1636]号

父娘日和

父娘日和 22



空手指導者(小林流守武館) 照屋 雅浩さん
照屋 真子さん

沖縄の誇り拳に込めて

 「沖縄に生まれたからには、イキガ(男)の嗜みとして学びたい」という思いで、高校卒業後すぐ空手を始めた照屋雅浩さん(53)。35年を経た今、男女問わず子どもから大人まで多くの門下生を抱えるまでに。子どもの頃から雅浩さんの指導を受けた娘の照屋真子さん(25)は、空手道を真っすぐに引き継いでいる。「小学生の時に父が道場を開き、習って当たり前だという感覚で始めました。勝負に勝ちたいと思ったのは中学生になってからです」と語る。稽古は毎日欠かさない。空手が日常生活に溶けこんでいる2人だが「精神面も技も毎回学びがある」と、精進を重ねる。



沖縄の男なら空手!

 琉球王国時代の沖縄が発祥地とされる空手。2020年開催の東京オリンピックでは競技に採用され、2017年3月には豊見城市に沖縄空手会館がオープンする。日本を代表する武道として、また県内外をはじめ世界の注目を集める武道スポーツと言えそうだ。

 競技人口が急増しそうな空手の道を、20年近く二人三脚で歩み実績を残してきた照屋雅浩さん、真子さん親子。

 高校生まで野球一筋だった雅浩さんは、高校卒業後に消防士になり、勤務を終えると空手道場に通った。

 「物心がついた頃から空手を学びたい」気持ちがあり、秘かに道場見学をしていたという。

 父親たちから「沖縄の男なら空手をやるべき」と言われ、伝統文化に触れたいと思い続けていたそうだ。

 動きが俊敏で技の威力が特徴的な小林流(しょうりんりゅう)の守武館(しゅぶかん)で稽古を積み、35年たった。

 「心から尊敬できる上間師匠と、父の紹介で出会えたことが人生の喜びです」と語る。

父を師に空手人生開く

 空手を始めて15年が過ぎた頃、雅浩さんは指導者となり「照屋道場」を開く。ボランティア活動として自宅近くで教え、最初の生徒は3人。

 「自分の娘2人と息子1人に指導しながら友達を誘うように言うと、広がっていきました」と雅浩さん。

 次女の真子さんは、「当時6〜7歳ではっきりとは覚えていませんが、嫌々通っていた記憶はなく…でも空手が好きだというわけでもなかったです」と笑う。

 だが父親に教わり、姉と弟と共に技を身に付けていった真子さんの生活の大部分を、空手が占めるように。大会出場時、勝敗を意識する気持ちも湧き出したそうだ。

 「私には空手しかない、という思いが高校生の時に芽生え、続ける以上は優勝を目標に掲げました。授業が終わると部活動は空手。終えて夜になると道場に通い、武道館に行って練習もして、空手人生を突っ走ってきたんです!」

 空手が楽しくて仕方なかったという真子さんだが、高校時代は2位止まりで優勝とは無縁。その悔しさが継続心に火をつけた。大学生になってからは、県国体予選で6連覇。県民体育大会では5連覇と、自身の記録更新を続ける実力派だ。

 「空手を始めて約19年ですが成功の実感はなく、やる分だけ課題が出てきます。練習を重ね、技も教えもしっかり身に付けたい」と努力を忘れない。

国際的視野で努力

 2014年の県民体育大会では雅浩さんが壮年男子の部、真子さんが一般女子の部で優勝し「父娘で頂点」と新聞紙面を飾った。

 「努力家の真子は、沖縄の女子空手界を引っ張る存在になっていると思います。競技を続けながら指導者を目指し、豊かな人生を過ごしてほしい」と雅浩さん。

 真子さんは「試合後に父は、良いところも悪いところも教えてくれます。師匠としても父としてもかっこいいと思っていますよ」とお互いを語った。

 より国際的に広まるであろう空手については、「良い成績を残すことで、父の教えは正しいと広めたい。沖縄空手界に貢献できるよう、一生勉強を続けます!」と思いは熱い。

 沖縄の文化である空手がオリンピック競技になるまで発達したのは素晴らしいと喜ぶ雅浩さんは、「50歳代の自分はまだ下っ端。先人が„空手家は死の直前まで空手するべし“という言葉を残したほど、奥深い世界です。今は指導した子どもたちの成長が楽しみで、自信をつけていろいろ挑戦してほしい」と願う。空手を通じた国際交流が増える中、「足元を見ながら築いてきた伝統を守り、さすが沖縄の空手と認められたい」と気を引き締める。

 精悍(せいかん)な姿で真っすぐ拳を突く照屋父娘の活躍に、期待が高まる。

(饒波貴子)



プロフィール

てるや まさひろ
 1963年生まれ、那覇市出身。那覇高校卒業後、消防士に。那覇市消防局に所属し、現在警防課長を務めている。また高校卒業と同時に「小林流守武館」にて空手を学び始める。空手歴は30年を越え日本体育協会公認コーチ資格を持ち、国体強化副部長、那覇市空手道連盟副理事長を兼任。「小林流守武館照屋道場」指導者として、牧志駅前ほしぞら公民館・開南小学校・沖縄県立武道館など那覇市内で老若男女に空手を指導中

てるや まこ
 1991年生まれ、那覇市出身、琉球大学卒業。中学校教師を目指しながら、非常勤職員として若夏学院に勤務中。父・雅浩さんの指導で小学校1年生の頃から空手を始めた。県国体予選では今年6連覇を果たすなどの実績があり、9月に予選が始まる県民体育大会は6連覇をかけ出場予定

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照屋 雅浩さん 照屋 真子さん
父娘で空手の稽古に励む、照屋雅浩さんと照屋真子さん。雅浩さんは指導者として真子さんを厳しく導き、父親として温かく見守る。「会話は多くない」という2人は、空手を通して親子の交流を図っている=那覇市牧志駅前ほしぞら公民館
写真・村山 望
照屋 雅浩さん 照屋 真子さん
雅浩さんの誕生日を祝い家族でパーティー、右が真子さん(1998年)
照屋 雅浩さん 照屋 真子さん
「第66回県民体育大会」では父娘で優勝を勝ち取った(2014年)
照屋 雅浩さん 照屋 真子さん
「小林流守武館照屋道場」の生徒たちと記念撮影(2016年)
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