沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1649]

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「表紙」2016年12月01日[No.1649]号

父娘日和

父娘日和 35


喜納畜産代表 喜納 憲政さん
喜納 忍さん

沖縄の青 ガラス玉に込めて

 沖縄の海のように深い青色に輝く「ホタルガラス」を使ったアクセサリーは今や人気の沖縄土産だ。そんなホタルガラスにいち早く注目したのが12月10日で創業30周年を迎える有限会社ホーセルの金江新一さん(68)。国内で初めて商品化に乗り出したのは今から二十数年前のことだ。現在、長女の大城朋子さん(38)と次女の相原綾子さん(35)も事業をサポート。ブランドに新しい息吹を吹き込み、さらなる飛躍に貢献している。品質にこだわり続け、観光客だけでなく、地元の人にも喜んでもらいたいという思いで商品開発に取り組んでいる。



地元にも愛される商品に

 熊本県出身の金江新一さんは、東京で出会った県出身の好子さんと結婚し1973年に来沖した。海洋博前の好景気の中、義兄の経営するサンゴ加工会社を手伝い始めた。海洋博後に、熊本に帰る予定だった新一さん。しかし、「初めて経験する営業も楽しく、商売が合っていた」と振り返る。以来44年、沖縄で暮らしている。

 義兄のもとで14年間働いた後、妻と独立。天然石をメインにしたアクセサリーの製造と卸販売を始めた。何でも売れた時代だったが、ありふれた商品はだんだんと売れなくなっていく―。

 そんな時、県外で出合ったのがトンボ玉の一種「ホタルガラス」だった。溶かしたガラスに銀箔(ぎんぱく)を重ね特殊な技法で作られたホタルガラスは「青く輝く色が沖縄のイメージにぴったりだった」。高度な技術を要し、簡単に色が出せないという点も工芸品としての価値があると確信。ホタルガラスの商品化に乗り出した。

 2004年、初めての店舗「ククルロコ」を那覇市の国際通りにオープン。県内外に計5店舗を展開するほか、ホテルや観光施設にも商品を出荷。現在は主にホタルガラスや天然石、サンゴのアクセサリーを制作、販売している。

娘たちの発想で急成長

 流行が移り変わる中で、大きな支えとなったのは子どもたちだ。デザインや店舗でのディスプレーなども、アイデアを出し合い、ブランドイメージを一新。会社は成長を遂げた。 現在、大城朋子さんはデザイナーとして、アクセサリーのデザインや国内外への買い付けを、相原綾子さんは製作統括として、事業に携わっている。長男の幸一さんは、ちょうネクタイの新ブランド「ハベル」を設立。沖縄の伝統工芸とコラボした商品が話題だ。

 子どもたちの活躍について、何も言うことないという新一さん。「そのままの状態だったらいずれ売れなくなっていたはず。今は余計なことを言わずに静かにしている」と笑う。

 ブランドは変貌を遂げた後も、新一さんが今も変わらず大切にしているのは人間関係だ。

 「父は、人との関わりをとても大切にする。いろいろなジャンルの友人がたくさんいて、すごく良い人間関係を築いているのはすごいと思う」と朋子さん。

 「ここまで来れたのは、周りの人たちのおかげ」と常に感謝の気持ちを持ち続けている新一さん。顧客一人一人の声も大切にする。「商品は応用が可能なのが特徴。ネックレスの長さ調整、素材の取り外し、ピアスからイヤリングへの変更などができ、修理の対応に感動してくれる人も多い」と新一さんは話す。

 仕事の魅力について「自分がデザインした商品を身に付けてもらえるのはうれしい」と声をそろえる朋子さんと綾子さん。

 「県外で自分の作ったアイテムを着けている人を偶然見掛けたときも思わず声を掛けたくなってしまった」とほほ笑む綾子さん。朋子さんも「誕生日などのギフトとして選んでいただけるのも光栄」と話す。

「脱観光」を目指して

 商品作りの根底にあるのが「脱観光」。新一さんは「長男の幸一は観光だけで通用するものはやりたくないという思いが強い。私も、地元の人が欲しがるアクセサリーを観光客にも売るというのが理想」と抱負を語る。

 今は海外製の類似品なども多く出回っているが、品質には妥協しない姿勢を貫いている。「いろいろ見てきた中で、日本製に勝るものはない。金具一つにしても、手に取ったときに違いが分かる。今後はより良質の材料を使い、品質を高めながらアクセサリーからジュエリーに展開していけるような、もの作りをしていきたい」と朋子さん。

 それぞれの個性を生かしながら、今後も多くの人に喜ばれるアクセサリー作りを目指していく。

(坂本永通子)



プロフィール

かなえ・しんいち
1948年熊本県熊本市生まれ。中学校卒業後、上京し就職。東京で好子さんと知り合い1972年に結婚。1973年に沖縄に移住。サンゴ加工業を営む義兄の元で働いた後、夫婦で独立。1986年に有限会社ホーセルを創業し、アクセサリーの製造と卸販売を開始。ホタルガラスや天然石、サンゴを使ったオリジナルアクセサリーを販売。2男2女の父。3人の孫に恵まれた。間もなく、孫が2人増える予定

おおしろ・ともこ
1978年豊見城市生まれ。南部商業高等学校卒業後、上京。アートフォーラム株式会社に入社。2年間の勤務を経て帰沖。父が取締役を務める有限会社ホーセルに入社。勤続18年。1歳の娘の母

あいばら・あやこ
1981年豊見城市生まれ。高校卒業後、結婚・出産を経て2002年有限会社ホーセルに入社。現在15歳の息子の母。12月末に第2子を出産予定

有限会社ホーセル
豊見城市豊崎1-328
☎098-987-1591
http://hoosel.com/

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金江新一さん 大城朋子さん 相原綾子さん
アクセサリーパーツショップ「ティアラ」にて(左から)相原綾子さん、金江新一さん、大城朋子さん。綾子さんと朋子さんが身に付けているのはホタルガラスのアクセサリー。綾子さんは今月末に出産予定=豊見城市豊崎
写真・村山望
金江新一さん 大城朋子さん 相原綾子さん
新一さんと朋子さん(左)、綾子さん
金江新一さん 大城朋子さん 相原綾子さん
綾子さんの幼稚園主催の祭りに家族で訪れた時の写真
金江新一さん 大城朋子さん 相原綾子さん
3年前、韓国に買い付けに行った時。朋子さん(左)と綾子さん
金江新一さん 大城朋子さん 相原綾子さん
ホタルガラスを使ったアクセサリー。ホタルガラスは職人の手で一つ一つ作られている
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