「表紙」2017年02月09日[No.1659]号
錬成たゆまぬ、弓道一家
県内弓道界で活躍する外間一雄さん(57)、みゆきさん(31)親子。一雄さんは高校生の頃弓道部に入り、40年以上続けてきた。選手として競技に出場し、20代から国体強化選手を育てる立場に就いている。妻の佳代子さんも初心者向け講座の講師を務める弓道一家で育ったみゆきさんは、高校入学と同時に迷うことなく弓道部へ。両親に指導されながら、国体の県代表選手になるまで成長した。会社員になった現在も、2016年秋の「希望郷いわて国体」に主将として出場、チーム6位入賞を率いる実力者となり、今後が期待されている。
気を引き締め、弓を引く
「無になる時間が持て、緊張感に包まれるのが弓道の魅力です」
高校生の頃から弓道を続けてきた外間一雄さんは、今も魅了されたままだという。弓道に興味はなかったそうだが、同級生に誘われて入部した日から40年が過ぎた。弓道が縁で妻の佳代子さんと出会い、3人の子どもは全員弓道経験者という、弓道と共に人生を歩んでいる人物だ。
「普段の生活では緊張する場面はなかなかありませんが、弓道をやっていると、審査を受ける時など気が引き締まります。どんなに弓を引いても、完璧にできない点も続けたくなる理由と言えますね」
若い人から80代の年配者まで、幅広い年齢層が挑戦できる競技でありながら、作法の学びも忘れてはならない武道が、弓道だという。
「体力によって弓の強さなどが一人ひとり違いますし、歩き方や目線の作法でミスをすれば実科審査に通らない厳しさがあります。世代を超えた仲間がいること、県内の弓道人口が少しずつ増えていることには喜びを感じます」
県外遠征の時に環境が違う弓道場で弓が引けるのも、楽しみの1つだそうだ。
両親に導かれ弓道の道へ
次女のみゆきさんは、高校入学と同時に弓道部への入部を決めた。
「小・中学生の頃はバレーボールをしていましたが、弓道をやったら何度も飛行機に乗れると母が言うので入部しました(笑)。実際に県大会での成績に比例して、たくさん乗ることができましたよ」
みゆきさんは両親の活動に導かれるまま、自然に弓道選手としての道をスタートさせた。「続けているのは、やっぱり好きだからなのだと思います」と語る。
「礼儀作法重視の武道の位置付けよりも、私は的に当てるスポーツ要素が好き。でも技術3割、メンタル7割といわれる競技ですので、作法をしっかり学ぶことも意識しています」みゆきさんいわく、武道とスポーツが程よく合わさっている点が弓道の良さだそうだ。
父の一雄さんはコーチとして、みゆきさんの癖や弱点を指摘し直してきた。受け入れたみゆきさんは練習を重ねるなど努力を続け、腕を上げたのだろう。国体選手の県代表常連となり、2016年にはチームの主将を務めた。
「私はまとめ役というより、盛り上げ役。選手は年齢差のある3人でしたから、仲良く会話できる雰囲気を作りました」
体育会系女性らしく、はつらつとした印象のみゆきさんは、国体という大舞台でもさわやかに活躍したようだ。チーム戦で6位入賞を果たし、「20年ぶりの快挙」と話題になり、注目を浴びた。
気合入れ真っすぐ前進
みゆきさんのこれからの目標は、できるだけ長く弓道を続けること。
「可能な限り現役でいたい。結婚や出産経験後にカムバックできるのが弓道。身近な母が一番の手本だと思っています。試合で勝つことも目標にして、練習に励みます!」
一雄さんは県内弓道界のレベル向上を目指すという。
「全国順位で沖縄は30番台半ばですが、少しずつ順位が上がってきていて素質のある子どもが増えてきました。良い指導ができるよう、自分の技術も磨いていかなければならないと思っています。国体をはじめ、全国大会での優勝を目標にします!」
家族から見ると一雄さんとみゆきさんは、性格がそっくりとのこと。はかまを着て気合を入れ、一直線に前進する親子の活躍が楽しみだ。
(饒波貴子)
プロフィール
ほかま・かずお1959年生まれ、那覇市出身。那覇工業高校在学時に弓道部に入部。卒業後も会社勤めをしながら継続し、現在は県弓道連盟の指導者に。強化部長も務める。弓道錬士(れんし)五段。また妻の佳代子さんと、沖縄市体育協会主催の弓道教室講師も担当している。電設資材などを扱う新光産業株式会社の営業職勤務
ほかま・みゆき
1985年生まれ、那覇市出身。那覇商業高校在学時に弓道を始め、会社員となった現在も継続中。2012年から2016年まで、5年連続で県代表として国民体育大会出場。2016年10月開催の「希望郷いわて国体」では、弓道成年女子チームの主将を務めた。弓道五段
写真・村山 望