沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1685]

  • (木)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2017年08月10日[No.1685]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 19


植物屋 HADANA(ハダナ)
葉棚 由真さん 葉棚 達也さん

自然に向き合う2人の心

 海が好きで波乗り仲間だった縁を深め、夫婦になった葉棚達也さん(42)と由真さん(48)。20代のころは国内外を旅して波乗りを続けていたが、2005年に結婚し関西から沖縄に移住。海に囲まれたこの島での生活を楽しんでいる。仕事がきっかけで植物に触れた達也さんは、経験を重ねながら育て方をはじめとした知識や情報をどんどん吸収していった。「植物屋 HADANA」の看板を掲げる2人は植物と対話し心で海を思い、いつでも自然に向き合っている。



海に導かれて結婚、沖縄へ

 個人の庭から大型施設の庭園まで、人と環境にマッチした植物を提案し、庭づくりを手掛ける「植物屋 HADANA」。2008年の創業以前、達也さんと由真さんは波乗りに熱中する日々だったという。

 「神戸にいた20歳のころに波乗りを始め、波に乗るためのお金をアルバイトで稼ぐ毎日だったんですよ」と達也さん。

 由真さんは学校卒業後に内装会社に勤め、インテリア関連のデザインやコーディネートを仕事にしていた。

 「趣味が波乗りで、毎週海に行きました。夫との出会いは神戸のサーフショップ。神戸の海で波乗りはできないので、みんなで集まって四国や関東の海に出向いていました」

 達也さんは、真っすぐ波に突き進む由真さんの勇敢な姿に。由真さんは天候や波の状態など自然に対して研ぎ澄まされた感覚を持つ達也さんに引かれて交際し、2005年に結婚に至った。

 そして大好きな海の近くに住む共通の夢をかなえるため、結婚と同時に沖縄移住を決意。

 「他県にはない風土に憧れていました。沖縄では、お金よりも興味のある分野の仕事に就くことも決めました。花と植物が好きだったので花屋に勤め、観葉植物を担当することになったんです」と、爽やかに笑う達也さん。「植物屋 HADANA」創業のきっかけが、そこで生まれた。

植物との触れ合い

 達也さんと由真さんは、「自然という視点でくくると、海も植物もつながっていて愛する気持ちは同じ」と話す。

 「観葉植物は知れば知るほど楽しくなり、仕事を通していろいろ学びました。1店員としてではなく、自分のスタイルで植物と関わりたい気持ちが強くなったので、独立したんです」

 同じ植物でも環境や水やりなどの手入れによって、育ち方が違う。深く追求するタイプの達也さんは気になる植物を見つけると2つ購入し、日なたと日陰に置くなど条件を変えて育て、毎日観察した。目を引く庭があると外から眺めたり、道路に植えられた大木の支柱を確認するなど、ハダナ流の研究と実践を続けた。

 「沖縄に来たころは波乗りもしていました。でも独立後は海に行っても仕事が気になり集中できない。その上僕らぐらいの年齢になると、週に2〜3回海に通わないと技術も体力もキープできません。5年前、中途半端な気持ちで波に乗るのは止めようと決めました」と達也さん。

 「今は植物に触れ合う時期だと思っています。波に乗る時間はいずれ作りたいと思っていて、気持ちが離れることはありません。自然を見る力が強い夫の感覚は、植物を育てることで開花したのでしょう。私たち夫婦にとっての礎は、いつも自然の中にあるんですよ」と由真さんはほほ笑む。

美しい自然に教わる

植物の名前はほとんど1度で覚え、観察記録もほぼ記憶しているという達也さん。現在は「庭」という顧客の空間が作業場であり、個性を出す場所でもある。

 「インテリア業界にいた妻に助けられています。建築物や芸術に興味はありませんでしたが、世界各国に旅行して見物するのは刺激的。40歳過ぎて感動することなんてない、と思っていたらイギリスでミュージカルを見て興奮しました!」

 由真さんは「波乗り以外に興味がなかった夫ですが、気持ちが向くと吸収が早い。各地を訪ねて自分の目で景色や文化を見ることが、植物屋の仕事に生かされると思っています。美しい自然が私たちの先生です」と語った。

 常に自然を意識している葉棚夫婦。「葉」という文字が名字に入っているのも、植物屋が天職というメッセージに違いない。

(饒波貴子)



円満の秘訣は?

由真さん:よく話をして、思っていることを全て伝えています。遠慮せずに言いたいことをぶつけると、後を引かないのでスッキリします。意見が一致することももちろんあって、夫婦の会話を楽しんでいます。

達也さん:けんかもしますが、デザインに関することなどは妻には勝てないと分かっています。僕1人では絶対にできないことを実現できているのは、100パーセント妻のおかげ。これからもそう思いながら、過ごしていくでしょうね。

プロフィール

はだな・ゆま:1969年生まれ、和歌山県出身。内装会社に就職しインテリアデザインを手掛ける。2005年、達也さんと結婚し、来沖。その後は宜野湾市のインテリアセレクトショップ「MIX life-style」にてコーディネートなどを担当し、現在は公私共に達也さんを支えている

はだな・たつや:1975年生まれ、兵庫県出身。20歳のころから波乗りをライフワークとし、2005年に海に囲まれた沖縄へ移住。花屋で働き、観葉植物担当になったことをきっかけに植物の魅力を知り、植栽や庭造りへと興味を広げる。08年、「植物屋 HADANA」を創業

植物屋 HADANA(ハダナ)
〔HP〕 http://www.hadana-g.com

このエントリーをはてなブックマークに追加



葉棚 由真さん 葉棚 達也さん
「植物のある暮らし」の心地良さを提案する、葉棚達也さんと妻の由真さん。事務所内も庭も緑にあふれ、爽やかで涼しげな空間を作り出している。愛犬3匹を代表して、ハナちゃんが一緒にポーズ!=宜野湾市内
写真・村山 望
葉棚 由真さん 葉棚 達也さん
友人とスリランカ旅行。熱帯建築の神様ジェフリー・バワ設計の「ヘリタンス・カンダラマ」ホテルでゾウに対面=2017年
葉棚 由真さん 葉棚 達也さん
「マニラヤシ」を中心に達也さんがデザイン、植栽した個人庭園=2016年
葉棚 由真さん 葉棚 達也さん
ギリシャ・ミコノス島へ夫婦旅。世界を見ることが仕事につながると実感=2016年
>> [No.1685]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>