沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1686]

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「表紙」2017年08月17日[No.1686]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 20


「わが家のハルラボ商店」経営
穐葉(あきば) 陽子さん 穐葉 武人さん

健康でおいしい「食」届けて

 健康志向の高まりとともに、安全で安心して食べられる「食」への関心も大きくなっている。そんなニーズを満足させてくれそうなのが那覇市泊にある「わが家のハルラボ商店」だ。経営しているのは穐葉武人さん(52)・陽子さん(45)夫妻。無農薬で作った沖縄県産の野菜を中心に、オーガニックの食材を販売している。多くの人が健康で楽しい食卓を続けるために、「安全、安心」「地産地消」にこだわった「おいしいもの」を、2人は笑顔と一緒に届けている。



地産地消と安全を重視

 店内には、無農薬で作られた県産野菜のほか、無添加の調味料や洗剤、菓子、オーガニックワイン、オリーブ油、カレーのルー、ありとあらゆるものがそろっている。地産地消にこだわり、世界中の無添加、安全安心な商品を厳選して置いている。 この中で武人さんの一押しはインドネシア産のナッツ菓子、陽子さんはオーガニックワインがおすすめだ。店内での販売のほか、毎週木曜日には人気商品を車に積み、読谷村と沖縄市でも移動販売を行っている。

将来考えて沖縄移住

 2人は神奈川県出身。沖縄に移住したのは2012年5月。その前年、東日本大震災が起こった。当時、穐葉夫妻は東京に暮らしていた。

 地震にともない、福島第1原発事故が発生。放射能が放出され、汚染が広がった。福島に遠くない東京に住んでいた穐葉夫妻は「このままここ(東京)にいて生活していていいのか。子どもの将来を考えたとき、自分たちも健康じゃないとちゃんと育てられない」と強く思った。事故後、国は「安全」を強調するために放射能汚染の基準値を発表するなどしたが、陽子さんは納得いかなかった。

 1年後、新しい生活を始めるために沖縄に引っ越した。新天地で武人さんは、これまでの仕事の経験を生かし、市町村から各家庭に災害予報を知らせる気象メール、那覇市内の小・中学校での保護者メールを送る会社の営業に携わった。

 ある日、夫妻は農産物関連のイベントで野菜農家の人と出会う。そのとき、「無農薬だが、形が不ぞろいの野菜は流通に乗らない」ということを聞いた。形は整っていなくても、無農薬で沖縄で作っている野菜は体にもいいのではないか。そういう野菜を取り扱う店が必要ではないかと、13年、「ハルラボ商店」を開店させた。

 「ハル」は沖縄の方言「ハルサー」(農業をする人)から、「ラボ」は英語のラボラトリー(研究室)から。陽子さんは「日常の暮らしの中で使う品を扱う店を目指している」と話す。武人さんは、自らも畑で野菜を作っている。

 2人が出会ったのは01年。当時、建築事務所で働いていた陽子さんは30歳直前。家庭を持ちたい、ずっと仕事を続けるか、将来を考え揺れ動く時期でもあった。そんなとき、同僚が「合いそうな人がいるよ」と紹介してくれたのが武人さんだ。その同僚は2人の共通の知り合いだった。

 何回か会っているうちに陽子さんは「感覚が似ているなあ」と感じたという。武人さんは、最初に陽子さんに会ったとき「かわいいな」と思った。2人はその年に結婚した。

 沖縄に移住する以前には3回旅行で来たことがある。海が美しく、ゆったりとした時間が流れる場所だと思った。武人さんは「ひそかに、リタイアしてここに住めたらいいなと思った」と打ち明ける。

 今でも野菜の仕入れで回っているときに、「今沖縄で生活しているんだな」としみじみ思い、不思議な気持ちになることもあるそうだ。陽子さんは住んでみて、沖縄が抱える問題の深さに驚いた。

仲間と食の事業を展開

 店を始めて5年目。今では客の7割がウチナーンチュだ。「こういう店があってよかった」「私の欲しいものがそろっていてうれしい」という声を聞くのが一番励みになる。

 同じ志を持つ人たちのつながりも増え、武人さんは県内の農家とともに、自然栽培野菜を給食で利用してもらうプロジェクト、また、宜野湾市内の田芋農家と県内初のレンコン栽培を行う会社も立ち上げた。

 陽子さんのこだわりは産地、無添加、そして自分たちが買い続けられる価格で商品を置くことだ。もう少し店舗を広げて、総菜や飲み物なども提供していきたいという。2人の「食」や「店づくり」のさらなる希望が広がる。

(又吉喜美枝)



円満の秘訣は?

陽子さん・武人さん: お互い考えていることは、きちっと話すことを心がける。けんかするときは、3日ほど口を聞かないときもある。仕事が忙しくなったので、「あ・うん」の呼吸でわかってほしい。そのためには、とにかくよく話すこと。

プロフィール

あきば・ようこ:1971年、神奈川県出身。共立女子大学 家政学部で住宅設計を学び、住宅設備メーカーで営業事務を3年務めた後、二級建築士を取得し設計事務所に勤務。2001年結婚を機に退職。12年沖縄へ移住し、13年夫と共に「わが家のハルラボ商店」開店。

あきば・たけひと:1964年、神奈川県出身。中央大学経済学部国際経済学科卒業。広告代理店で企画・営業のマネージャーとして23年間勤務。退職後、2012年沖縄に移住しバイザー(株)の自治体向け「防災気象メール」、保育・小中学校向け「保護者メール」の県内営業をサポートしながら、13年に「わが家のハルラボ商店」を開店。翌年、自然栽培農家と共に「NPO沖縄の自然栽培野菜を給食にするプロジェクト」を立ち上げ、代表理事として活動中。昨年からは田芋農家と共に県内初のレンコン栽培に挑戦。今年「合同会社 沖縄れんこん」設立、業務執行役。

わが家のハルラボ商店 那覇市泊3−1−15−102
営業時間=月曜〜土曜 11時〜18時(日・祝日休み)
☎098−943−9575
〔HP〕 http://hallab.pecori.jp/

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穐葉 陽子さん 穐葉 武人さん
提携している農家が作った野菜、モーイ(赤うり)とシブイ(冬瓜)を手に持つ穐葉陽子さん(写真左)と武人さん夫妻。安全安心にこだわった商品を売る「ハルラボ商店」を開いて5年目。今では客の7割はウチナーンチュだ=那覇市泊、ハルラボ商店 
写真・村山 望
穐葉 陽子さん 穐葉 武人さん
2008年、2度目の沖縄家族旅行(瀬底島にて)
穐葉 陽子さん 穐葉 武人さん
2009年、東京の自宅前の桜の下で
穐葉 陽子さん 穐葉 武人さん
毎週木曜日は「お出かけ商店」の日。野菜や人気商品を車に詰め込んで、読谷のカフェ「自然いぬ。」や、沖縄市の美容室「きらり」の駐車場などで開催(8月中は夏休み)
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