沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1692]

  • (木)

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「表紙」2017年09月28日[No.1692]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 26


「MOMO絵画教室」主宰・画家 青山 映二さん
手芸家 青山 裕子さん

笑い絶えない2人の時間

 結婚して26年、今でもアツアツの2人。画家の青山映二さん(64)、手芸家の青山裕子(ひろこ)さん(56)だ。沖縄市山内に自宅兼の「MOMO絵画教室」を主宰する。自宅内には裕子さんが作った小物を扱う店「ねこはうす」もある。画材となるオブジェ、手作りの雑貨類が飾られた教室は2人が過ごす空間。ここで読書したり、DVDを見ての感想を述べ合ったりする。豪快に笑う映二さんとクスクスと笑みを見せる裕子さん。仲のよさを探ってみた。



鈴が鳴ったあの日から…

 映二さんは、1990年代初めは、車の模型を作るプラモデルフィニッシャー(仕上げ師)として活躍していた。「モデルカーズ」という雑誌から送られてくるプラモデルキットを作製し、その雑誌に載せていた。この仕事は4年ほど続く。自宅の一室には自身が製作したプラモデルを飾っている部屋がある。約300台が展示されている棚は、まるでプラモデル博物館かと思うほど。マニアが見たら、垂涎(すいぜん)の的だろう。車だけでなく、戦闘機や戦艦大和などもある。

 現在は、週に4回絵画教室を開いている。約20人の生徒たちは年齢層もさまざま。最近は男性が多いそうだ。本職の画家としては、80年代から、定期的に個展、グループ展を開いている。

 裕子さんは手芸家。大学では国文学を専攻したが、小さいときから好きだったものづくりを生かしたいと思っていた。大学卒業後、具志川市(当時)の職業訓練校でものづくりの基礎を学び、修了後、嘉手納にあったアパレルメーカーで働いた。91年に出身地の北中城に念願の店「ねこはうす」を出す。

1カ月通い詰めた

 ある日、その店に映二さんがふらりとやってきた。「店の作りがとてもモダンで気になっていた」。中に入ると、「いらっしゃいませー」と優しい声が聞こえた。声の主を見たとたん「僕の頭の中で鈴がカランカランと鳴った。かわいいなーと思った」と映二さんは振り返る。これが2人の出会いだ。

 映二さんは家に帰り「電話の前で4時間悩んだ」。意を決し受話器を取る。裕子さんはそれを受けた。「今日、店に来ていた人だ。『やばい』と思った」という。1回会っただけなのに、自分は彼に引き込まれていくのではないのか……。その人が気になったというのではなく、見えない何かに引っ張られていくような気がした、と話す。

 それから約1カ月、映二さんは裕子さんの店にほぼ毎日通い、長い時で2時間も店にいた。自然に仲良くなっていった。店に来てずっとおしゃべりをする映二さんを見て、徐々に気持ちも傾き「当時の私は31歳だったし、これは一緒になるしかないだろうな、けじめをつけなければ」と結婚に踏み切った。

妻は夫の耳となって

 6年前、映二さんは、以前からのメニエール病の影響で事実上両耳失聴し、中途聴覚障がい者になった。以来、裕子さんは映二さんの耳となっている。映二さんが誰かと話すとき、常にそばにいて大学ノートに相手の質問をさらさらと書いて伝える。それを読んで映二さんは答えるが、少し時間のズレがあるなど、もどかしさもあるようだ。

 「私は、相手からの質問を要約して伝えることが時々あって、そのことで夫から苦情が来ます」と笑いながら裕子さんは言う。絵画教室では、生徒の質問や話を裕子さんが筆談で映二さんに伝えている。話好きで話題豊富な映二さん、友人たちとの会話も裕子さんの筆談が頼りだが、彼らに「俺、おしゃべりが減った?」と聞いたら、その友人たちは「今がいいよ」と答えたという。

 北部をドライブするのが好きだった2人だが、最近はその機会も減った。その代わり、読んだ本の感想を述べたり、DVDを見たりと家の中での楽しみが増えた。2人とも冗談を言い合って笑いが絶えない。どちらかが面白いことをいうと「座布団1枚!」と相手を褒める。どこまでも息の合う2人だ。

 映二さんに「裕子さんへ伝えたいことがあれば」と記者がノートに書いて見せると、「手放せない」と即答。あの日、映二さんの頭の中でカランカランと鳴った鈴は、しっかりと調和ある音を響かせている。

(又吉喜美枝)



円満の秘訣は?

映二さん: 自分の話す言葉が彼女に通じ、彼女の言葉は僕に通じる。要するにコミュニケーションをとること
裕子さん: 笑うこと、面白いことをいうこと

プロフィール

あおやま・えいじ: 1953年沖縄市(旧コザ市)生まれ。75年東京で4人展。80年県芸術祭美術展10回展優秀賞受賞。81年絵画教室開設。新象展25回展佳作。83年第16回現代日本美術展出展。沖縄市文化センターの壁画および緞帳(どんちょう)を制作。90年より雑誌「モデルカーズ」のプラモデル製作。現在「MOMO絵画教室」主宰

あおやま・ひろこ: 1961年北中城村生まれ。83年琉球大学文学部国文科卒業。86〜90年アパレルメーカー勤務。91年手作り小物屋「ねこはうす」を始める。95年個展ファブリックピクチャー。NHK沖縄放送局の番組出演。現在、夫と共に絵画教室に携わる

MOMO絵画教室
沖縄市山内3-15-18
営業時間=9時〜19時
電話 098-932-5156

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青山映二さん 青山裕子さん
映二さんは画家、裕子さんは手芸家。裕子さんが持っているのは自身が作ったお気に入りのハートのクッション。いつも会話が途切れない2人は笑いも絶えない。写真からもにぎやかな声が聞こえてきそうだ=沖縄市山内の自宅で仕事場も兼ねる「MOMO絵画教室」
写真・村山 望
青山映二さん 青山裕子さん
北中城から、現在の自宅に移ったころの2人。自宅内にある裕子さんの手作り小物の店「ねこはうす」で
青山映二さん 青山裕子さん
映二さんの作品は独特の色合い。80年代前半の展示会で、自身の作品を前に
青山映二さん 青山裕子さん
自宅の一室にずらっと映二さんが作ったプラモデルが飾られている
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