沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1691]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2017年09月21日[No.1691]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 25


タイヤショップ ロータリーカデナ 金城 照子さん 金城 善信さん

顧客の信頼に応え35年

 嘉手納町水釜でことし創業35年目を迎える老舗のタイヤショップ「ロータリーカデナ」。代表の金城善信さん(66)の仕事を、妻の照子さん(65)が助手として支える。タイヤ交換を行う2人は、まさに阿吽(あうん)の呼吸。テキパキと息の合った動きを見せる。「夫は、お客さんからの注文に、できるだけのことをして応える。職人だと思います」と笑う照子さんの言葉に、善信さんも「2人で作業すれば、半分の時間ですむ。妻に手伝ってもらって十人力です」と応える。



老舗のタイヤ店営む2人

 金城善信さんの朝は、お店で扱っているタイヤを外に出して洗うことから始まる。

 「営業時間は9時からですが、だいたい8時ごろから洗っていますね」と善信さん。お客さんにきれいなタイヤで気持ちよく車に乗ってほしい、という配慮からだ。もちろん、タイヤ交換や足まわりのチューンアップの際にも、洗浄は欠かさない。

 「夫は、仕事に対して本当に熱心。お客さんからの無理な注文にも、『ここまでやるの?』ということまで、出来る限りのことをきちんとやる」と照子さんは評価する。

 善信さんの丁寧で徹底した仕事ぶりは、顧客からの信頼も厚く、リピーターも多い。「場所柄、米軍関係者のお客さんもよくいらっしゃるのですが、ある人から『ナンバーワン・タイヤショップ』と言ってもらったこともありますよ」と照れながら話す善信さんの言葉を、照子さんが「35年も店を続けてこられたのは、本当に地域のリピーターの皆さんのおかげです。でないと、もちませんから(笑)」とつなぐ。

優しい夫、明るい妻

 善信さんが照子さんと出会ったのは、28歳のころ。照子さんの姉夫婦が、善信さんと仕事上での付き合いがあった縁で知り合った。「柔らかい雰囲気で、優しそうな人だなと思った」(照子さん)、「よく笑い、よく話す明るさに引かれた」(善信さん)とそれぞれの印象を話す。

 引かれ合った2人は、1980年に結婚。ちょうど同じ時期に、善信さんはタイヤショップを開業する友人に誘われ、転職を決意した。

 善信さんは、中部工業高校の自動車科を卒業後、車の整備や塗装の仕事に従事していた。だが、タイヤに関する仕事は未経験で、転職直後は苦労もあったという。「接客は特に大変でした。声掛けが苦手で、お客さんが何が欲しいのかも分からない。だんだんスムーズに話ができるようになりましたけどね」と苦笑いする。

 タイヤのことも教わりつつ3年ほど修業した後、個人でタイヤ店をやってみないかと声がかかり、善信さんは独立を決意。83年3月に嘉手納町水釜に「ロータリーカデナ」をオープンした。

 照子さんは「オープンは長男が生まれた次の年。私は子育てがあったので、事務を手伝っていました。当時はバブル時代だったこともあり、夫も仕事が忙しく、夜の10時や11時まで店にいることもありましたよ」と振り返る。「でも、仕事は楽しそうにやっていました。大変だったけど、若いからできたんでしょうね」

 自宅が近くにあったこともあり、子どもたちが店にやってきて過ごす時間も多かったそうだ。和やかな店の様子が目に浮かぶようだ。

妻がいれば十人力

 子育てが一段落ついた10年ほど前から、照子さんは助手として店頭に立ち、善信さんのタイヤ交換などの仕事を手伝うようになった。

 ずっと事務の面で店を支えてきた照子さんにとって、初めて取り組む仕事も多かったが、大変さは感じず「できなかったことができるようになるのが楽しかった」と笑う。

 「2人いると作業が敏速にでき、半分の時間で仕上がる。お客さんを待たせないので喜ばれる。妻に手伝ってもらって十人力です」との善信さんの言葉に、照子さんも「お待たせしないことがうちのモットーですから」と続ける。

 現在、6人いる孫たちを店で預かることも多い。昔はけんかしてしばらく口をきかない状態が続くこともあったという2人だが、「孫たちの顔を見ていると、自然に仲直りしている」と話す。来年には、7人目の孫も誕生を控えている。

 「最近は、昔のように若い人が車にお金をかけなくなってきているという現状はあるが、タイヤはずっと必要」。夫婦が営む店は、これからも地域の人々に愛されていくに違いない。

(日平勝也)



円満の秘訣は?

照子さん・善信さん お互い過度に干渉せず、適度な距離感を保つこと。やりたいことをやらせておけば、いい関係が保てると思います。


プロフィール

きんじょう・てるこ: 1952年生まれ、嘉手納町出身。読谷高校卒業。80年、善信さんと結婚。3人の子どもを育てる傍ら、夫の善信さんが開業した「ロータリーカデナ」の事務を担う。子育てが一段落した10年ほど前からは、善信さんの助手としてタイヤ交換などの作業もこなしている 

きんじょう・よしのぶ: 11951年生まれ、北谷町出身。中部工業高校の自動車科を卒業後、車の整備や塗装の仕事に就き、28歳の時、タイヤ店に転職。3年ほど修業した後、83年に独立し「ロータリーカデナ」をオープンした

ロータリーカデナ
嘉手納町水釜112番地
営業時間=9時~19時
電話 098-956-2684


このエントリーをはてなブックマークに追加



金城 照子さん 金城 善信さん
「ロータリーカデナ」のカーピットにて、タイヤ交換の作業を行う2人。以前は事務を手伝っていた照子さんは、10年ほど前から善信さんの助手を務めるようになり、善信さんの作業もサポートしている
写真・村山 望
金城 照子さん 金城 善信さん
1983年、創業当時のロータリーカデナ
金城 照子さん 金城 善信さん
創業間もないころ、当時1歳だった長男の善人(よしと)さんと
金城 照子さん 金城 善信さん
孫の李朱(いじゅ)ちゃん(左)、杏朱(あんじゅ)ちゃん(右)と一緒に。店で孫を預かることも多いという
>> [No.1691]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>