沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1711]

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「表紙」2018年02月08日[No.1711]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 44


和太鼓奏者 金刺 凌大(かなざし りょうた)さん 
シンガーソングライターフルート・篠笛奏者 金刺 文美子(ふみこ)さん

和楽器の音 二人で響かせ

 プロの和太鼓奏者として国内外で活躍を続ける金刺凌大さん(36)。妻の文美子さん(35)は、フルート・篠笛(しのぶえ)の奏者、またシンガーソングライター・女優として幅広い表現活動を行っている。東京を拠点にキャリアを重ねてきた二人だが、数年前、凌大さんを原因不明の病が襲った。先の見えないつらい日々、苦しむ凌大さんを文美子さんは懸命に支えてきた。そして2016年、二人はこれまでの生き方を変えようと沖縄への移住を決意。ともに新たな一歩を踏み出した。



生き方変えようと沖縄へ

 腹の底から全身に響く、勇ましく力強い和太鼓。天に届かんばかりの高い音(ね)を奏でる篠笛──。

 太鼓を打つのは、和太鼓奏者として国内外で第一線の活躍を続けてきた金刺凌大さん。おととし、沖縄に移住したことを機に、妻・文美子さんと夫婦ユニット「そらなり」を結成。文美子さんは雄大な和太鼓のリズムに合わせ、あでやかに歌い、また和のフルート・篠笛の音を響かせる。

 二人の演奏の根底にあるのは、自然への感謝、そして祈りだ。その思いを強く抱くようになったのは、夫婦の身に起こったある出来事がきっかけだという。

出会いは奉納演奏

 夫婦は、ともに東京都の出身。凌大さんは、10歳の頃、地域の祭りで太鼓を打ったことをきっかけに、和太鼓を始めた。

 「実家は邦楽とは縁のない一般家庭。もともとは俳優になりたくて、大学でも演劇学を専攻していました。その時、ある人からアドバイスを受け、和太鼓をとことん突き詰めてみようと思ったんです」。本気で和太鼓に向き合ううちに、表現をするという意味では太鼓と演劇は同じだと気付いた。

 そして20歳の時、兄弟とともに和太鼓ユニット「は・や・と」を結成。以来、十数年にわたりプロとして和太鼓奏者の道を歩んできた。

 文美子さんは9歳からフルートを始め、15歳で芸能プロダクションに所属。女優・モデル・レポーターとして活躍していたが、20代半ばからフルート奏者として活動を開始。音楽ユニット「花と月」を結成し、シンガー・ソングライターとして作詞・作曲を手掛けるなど、表現の幅を少しずつ広げてきた。

 そんな二人が出会ったのは、2010年のこと。文美子さんの実家の神社で奉納演奏を行うことになり、その作曲・指導に凌大さん、メンバーに文美子さんが含まれていた。相性ぴったりの二人は、すぐに意気投合。交際開始と前後して、文美子さんは篠笛の演奏にも挑戦するようになり、二人は翌年に結婚した。

病で気付いたこと

 「出会った頃と今では、私たち二人の価値観は大きく変わりました」と文美子さん。その言葉を受け、凌大さんは「当時、自分はバリバリの仕事人間だったんです。『太鼓のために生きて太鼓のために死ぬ』という感じでした」と続ける。しかし、不眠不休で仕事に全力を注いだせいか、凌大さんは体調を崩してしまう。原因不明の激しい喉の病から、うつ状態に陥った。

 苦しい日々の中で、本当の幸せとは何かを考えさせられ、家族でゆっくり過ごす時間、また自然のありがたさに気付きはじめた、と二人は話す。

 暗いトンネルのような毎日に、15年、一筋の光が差し込んだ。娘の紗貴子ちゃんの誕生だ。

 凌大さんは少しずつ元気を取り戻した。「これからはゆっくり生活しよう」と16年、演奏活動などで縁があった沖縄へ家族三人で移住。「まだ波はありますが、沖縄へ来て、体調はだいぶよくなりました」と笑顔を見せる。

 凌大さんは、演奏活動で国内外を飛び回る傍ら、和太鼓の魅力を伝えるため、県内で定期的にサークルの指導も行っている。「練習場所を確保するのが大変ですが、沖縄の人たちは演奏を楽しむことが上手。一緒にやっていて、こちらも楽しくなる感じですね」と笑う。

 「妻はしっかり自分を持っている芯の強い人」(凌大さん)、「夫は真面目で誠実。きちんと自分に向き合う姿が素晴らしい」(文美子さん)と、互いの人格に敬意を払う二人。今後も支え合いながら、和太鼓と篠笛の音を響かせてくれることだろう。  

(日平勝也)



円満の秘訣は?

凌大さん・文美子さん: お互いをアーティストとして尊敬し合うこと。一人で焦っていると、結局家族に迷惑が掛かるので、家事なども分担して助け合っています。

プロフィール

かなざし・りょうた: 1981年生まれ、東京都出身。10歳から和太鼓を始め、大学在学中にプロ活動をスタート。和洋問わずさまざまなジャンルの音楽やパフォーマンスとのコラボレーションを国内外で展開し、ももいろクローバーZ、嵐とも共演した。2016年に結成した夫婦ユニット「そらなり」では和太鼓を担当

かなざし・ふみこ: 1982年生まれ、東京都出身。9歳からフルートを始め、15歳から女優・モデルとして活躍。2007年からフルート奏者として活動し、作詞・作曲も行う。10年から篠笛の演奏も始め、16年夫婦ユニット「そらなり」を結成。篠笛と歌を担当

そらなりブログ -そらなりのみち-
http://soranari.jugem.jp/
●ライブ情報
「キンザーナイト! Vol.05」
日時:3月21日(水・祝)※雨天中止 場所 Cafe&Bar キンザーハウス(浦添市港川)
料金:前売り 2500円、当日 3000円
問い合わせ:☎098(878)5999〔キンザーハウス 12時〜19時 月曜休)またはsoranari2016@gmail.com(そらなり)

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金刺 凌大さん 金刺 文美子さん
ステージ衣装に身を包む金刺凌大さんと文美子さん。二人は2016年夫婦ユニット「そらなり」を結成。和太鼓と篠笛、歌を組み合わせた演奏を県内各地で定期的に行う=沖縄市知花「沖縄市老人福祉センターかりゆし園」ホールにて 
写真・村山望
金刺 凌大さん 金刺 文美子さん
夫婦ユニット「そらなり」による今帰仁城跡での演奏後。愛娘の紗貴子ちゃんと共に
金刺 凌大さん 金刺 文美子さん
「そらなり」では、文美子さんが歌・篠笛、凌大さんが和太鼓を担当
金刺 凌大さん 金刺 文美子さん
琉球芸能とのコラボレーションも展開。県内各地の祭りやイベントなどにも積極的に出演している
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