「表紙」2018年10月11日[No.1746]号
独自のスタイルで楽しむ海あっちゃー
フライフィッシングは英国発祥の釣り。エサに見立てた毛針(フライ)を駆使して魚を釣ることを目的とする。誰もが気軽に始めることのできるレジャーとは言い難いが、自然の中で身体を動かし、水に浸かることもいとわないので、総合的なアウトドア活動として独特の魅力がある。県内の海をフィールドとし、その面白さを発信する「フライフィッシング沖縄研究所」で話を聞いた。
「フライフィッシングを楽しむ人の中でも、海でやる人はかなりマニアックですよ(笑)」と話し始めたのは「フライフィッシング沖縄研究所」代表の本間偉人(たけひと)さん。専用の糸の重さのみを利用してフライを投げるため、その日の風向きを考慮した釣り場を選ばなければ、思うように釣りができない。またフライを投げる「キャスティング」も習得するためには練習を必要とする。それらの理由から、初心者が挑戦する際には高いハードルがあることを始めに伝えてくれた。
フライフィッシングの魅力は一般的に想像される「釣り」の範囲に収まらない部分にこそあるようだ。
自然観察の奥深さ
フライフィッシングに欠かせない要素の一つに「自然観察」がある。これは釣りを行うにあたり、釣り場に生息する魚がどのような暮らしをしているかを知るための大切な準備だ。沖縄では、干潮時に露出するサンゴ礁や岩場の潮溜まりが主な釣り場となるが、その場でまず行うのは、魚が何を食べているか探ることである。水面付近や岩の裏などにいる小さな生物を探し、魚のエサとなっていそうな生物から、どのような形状のフライを選び、投げるか判断する。フライと言っても、形状は様々で、小魚に似せたもの、エビやカニに似せたもの、さらには何にも似せず、魚の注意を引くための形に特化したものもある。
遠くまで仕掛けを飛ばすことのできないフライフィッシングでは、ターゲットの魚にできるだけ近づくことも重要とされる。魚を目視しながらフライを投げ、糸を操作することもある。「魚の死角となる岩陰に隠れながら、なるべく目立たないように糸を投げます。野生動物になったような気持ちになりますよ」と本間さんは語る。
釣れなくても楽しい
必ずしも釣果を上げることを目標としないのがフライフィッシングの特徴の一つである。「釣った魚は基本的にリリース(逃す)することが多いんですよ。海水に浸かりながらやるので、釣った魚を保存するためのクーラーボックスは持ち歩けないですし」という本間さん。フライを自作する際にもリリースをすることを考慮し、一番初めに釣り針の返し部分を潰している。加えて、釣り場でも可能な限り人工物を残さないように心がけている。自然環境を直に感じながら行うレジャーだからこそ、持続可能な形で続けていきたいという意識が生まれるという。
本間さんは「フライフィッシングは釣れなくても楽しいんですよ!」と笑う。前述した「キャスティング」はその正確さや飛距離を競う大会があり、自然観察やフライ作りもそれぞれ独立した趣味として始める人も少なくないそうだ。
五感を生かした魚との駆け引きがより際だつのがフライフィッシングのだいご味であり、体を使って自然を楽しむ感覚が得られる。沖縄ではまだ認知度の低いレジャーだが、難易度の高さゆえに、一生熱中することができそうだ。
(津波典泰)
フライフィッシング沖縄研究所
☎︎ 090-6045-3178
flyfishingokinawa@gmail.com