沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1781]

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「表紙」2019年06月20日[No.1781]号

海から眺める平和のシンボル 株式会社 助っ人SEKIMARIN

陸では味わうことのできない絶景

 船舶関連の事業をメインに展開する「株式会社 助っ人SEKIMARIN(セキマリン)」は、糸満市から協力依頼を受け、観光客にアピールできる平和観光船ツアーを市と共に企画した。現在は同社が主体となりツアーを盛り上げようと力を入れる。地元の活性化に意欲的な社長をはじめ従業員らは、今年8月からのツアー開始に向け準備中だ。今回は慰霊の日を前に、「糸満の平和観光船ツアー」のモニターとして船に乗せてもらった。

 波の高さ1〜1・5メートル、風速4〜6メートル、晴れ―。最適なコンディションの中、糸満市の西崎漁港から平和祈念公園を目指し出港した。この日の船長は株式会社助っ人SEKIMARINの社長・関屋洋一さん。そのほか取締役の新垣寛尚さん、新垣雅理さん、ガイドの渡美吉和枝さんが同乗した。

海岸線の表情

 平和観光船ツアーは大小3つの島が連なるエージナ島、喜屋武漁港、海側から見るヒーフチミー(火吹き穴)、喜屋武岬、大きな岩が被さってできた奇岩カサカンジャー(笠かぶり)、大度浜海岸、そして平和祈念公園で折り返す2時間強のコースだ。

 風を感じながら見渡す海岸線は実にさまざまな表情を見せてくれた。

 波打ち際に多数散在する巨大な岩、岩礁にぶつかり躍動する波。喜屋武岬あたりでは、東シナ海と太平洋の海流がぶつかり合う。荷物の上げ下ろしに使われ、有事の際の脱出経路にもなったという具志川城跡のヒーフチミーは、海側から見ると圧巻の景色だ。

 大度浜海岸を過ぎ、しばらくすると平和祈念公園内に建つ平和祈念堂と平和祈念資料館が姿を現した。

糸満のよさ伝えたい

 関屋さんは生まれも育ちも糸満。父やおじが漁師だったこともあり、子どものころからよく海で釣りをした。

 「海からみる糸満の景色が素晴らしいということは知っていたので、いろんな人に海岸線のダイナミックな絶景を見てもらいたいと思っていました。まずは地元の人に見てほしいですね」と話す。

 子どものころ地元を通る平和行進を見ては「どこに行くんだろう?」と思っていた関屋さん。観光船ツアーでは、悲惨な出来事があったポイントで沖縄戦の話をし、さらに「糸満のよさ」も伝えていきたいという。同社は新鮮な魚料理などを提供する食堂「食工房まほろば」も経営しており、人気のキンメダイ定食をいただきながら、従業員らと交流を持つ機会も観光船ツアーの最後に組み込む予定だ。

 また、天候不良で中止になったときの代替案も検討中。自然や穴場スポットなど、陸の楽しみを味わってもらえるようアイデアを練る。

 関屋さんは「南部といえば戦跡というイメージが強いと思いますが、それ以外にも糸満にはいいところがいっぱいあるんですよ」と笑顔を見せた。

  *  *  *

 もうすぐ6月23日の慰霊の日がやってくる。行き場を失い追い詰められた人々が、崖から飛び降り命を絶ったという喜屋武岬の海岸線一帯を船から眺めた。穏やかな景色の中に、すさまじい光景を重ねることはとても難しい。約30㍍の高さから飛び降りたときの気持ちなど想像すらできない。海面が見えなくなるほど米軍艦隊で埋め尽くされたという海も。渡美吉さんは「私は補足として説明をしますが、実際に見てもらうことが一番胸に突き刺さるのでは」と話していた。今回の取材では、陸からはうかがい知れない景色を楽しめたと同時に、違った角度から改めて沖縄戦を考え、海から慰霊する機会となった。

(𥔎山裕子)



株式会社 助っ人SEKIMARIN
糸満市糸満2228
☎090-6867-2670(新垣)
http://www.sekimarin.com/
糸満の平和観光船ツアー(定員6〜7名)は毎月第4日曜日のみ。8月25日(日)の予約から受け付け。

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株式会社 助っ人SEKIMARIN
(後列右から)関屋洋一さん、渡美吉和枝さん、(前列右から)新垣寛尚さん、新垣雅理さん 写真・村山 望
株式会社 助っ人SEKIMARIN
ヒーフチミー。大きな穴は陸側の具志川城跡の穴とつながっている
株式会社 助っ人SEKIMARIN
巨大な岩が連なる波打ち際
株式会社 助っ人SEKIMARIN
岩に10畳ほどの大きな岩が被さってできたカサカンジャー。見る方角によってはゴリラやカエルに見える
株式会社 助っ人SEKIMARIN
「食工房まほろば」のキンメダイの煮付け
株式会社 助っ人SEKIMARIN
社長の関屋洋一さん
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