「表紙」2019年11月14日[No.1802]号
活躍の場広げる3人の女性
港や物流倉庫、工場などで荷物の運搬に使われる荷役運搬車両、フォークリフト。男性が扱う車両というイメージが強いが、那覇市港町の沖縄荷役サービス株式会社では、フォークリフトを操る3人の女性たちが働いている。全国フォークリフト運転競技大会に2年連続県代表として出場した比嘉真由美さん(36)の後を追うように、川﨑尚子(なりこ)さん(45)、山城美也子さん(42)も運転技術を磨いている。
フォークに似た2本のつめを上げ下げし、人の力で持ち上げることのできない荷物やコンテナを運ぶ荷役運搬車両、フォークリフト。乗り手には男性が多いのは事実だが、沖縄荷役サービス株式会社 代表取締役社長の新垣益幸さんは「今ではパワーハンドルが搭載され、女性も扱えます。作業には注意力が求められるので、むしろ、慎重かつ繊細に操作できる女性のほうが向いているといえるかもしれません」と説明する。 同社では、男女の性別にかかわらず、やる気のある人材を受け入れ、フォークリフトを扱う現場に投入。現在、3人の女性が活躍しているという。
人生の夢ほしかった
その中の一人、比嘉真由美さんは勤務歴約3年。前職は接客業で、フォークリフトとは全く縁がなかったという。
「夢がなかったので、夢がほしかった」と振り返る比嘉さん。転機となったのは、ポリテクセンター沖縄(沖縄職業能力開発促進センター)で受講した職業訓練コースの一環として、沖縄荷役サービスを見学に訪れたことだった。
同社の従業員が、港の岸壁に設置され、コンテナ船から荷物の積み下ろしを行う巨大なガントリークレーンを操作する姿を目の当たりにした比嘉さんは「これに乗りたい」と衝撃を受け、ガントリークレーンを操ることが人生の夢になった、と笑う。
その夢をかなえるため、比嘉さんは同社に入社。ガントリークレーンという夢に続くステップとして、職業訓練コースで取得した免許を生かし、フォークリフト運転手として働き始めた。
現場では、フォークリフトの扱いに苦労した。「講習の時とは全く違う。現場ではスピードと正確さが求められる」。現場に求められる感覚や判断力を身に付けるまでには苦労もあったが、夢を目指して奮闘を続け、見よう見まねで技術を習得。その結果2年連続で、県の女性代表として全国フォークリフト運転競技大会に出場するまでとなった。
現在は、ガントリークレーンの免許取得に向け、受験や講習の準備にも取り組み、夢に向けて着実に一歩を進めている。
一致団結感がやりがい
比嘉さんに続くように、約1年半前に入社した川﨑尚子さん、4カ月前に入社した山城美也子さんの2人も、フォークリフトの運転手としての勤務を開始した。
川﨑さんは前職の工場勤務時にフォークリフトの免許を取得していたが、ペーパードライバー状態からのスタート。現場で技術を磨いた。「現場は体力を使う。大変な仕事だが、それだけに皆でやり遂げた時の一致団結感がやりがい」と話す。
農業に従事していた山城さんは、比嘉さんと同様にポリテクセンター沖縄でフォークリフトの免許を取得。現場で女性を受け入れてくれるということで、沖縄荷役サービスへ入社した。「体力的にはきついが、私は体を動かすのが好きだし力もある。毎日楽しくやっています」と明るく笑う。
「真由美さんが頑張ってくれたから、後に続く私たちも現場に受け入れてもらえた」と山城さん。比嘉さんの入社時には、フォークリフトの運転手は男性のみだった。男性社会の現場で女性が活躍する道を切り開いてくれた先輩として、比嘉さんに感謝を惜しまない。
「夢があるから頑張れる」と目を輝かせる比嘉さんと同じように、川﨑さんは「大型の車両も乗りこなせるようになりたい」、山城さんは「オールマイティーに業務ができるようになりたい」と目標を話す。現場での苦労もあるが、3人は励まし合いながら技術の向上に取り組んでいる。
(日平勝也)
代表取締役社長 新垣益幸さん