「表紙」2020年02月13日[No.1814]号
患者同士の交流が原点
那覇市牧志にある「県難病相談支援センター アンビシャス」。無料相談や就労支援活動などを通して、県内の難病患者を18年にわたり支援してきた。同センターを立ち上げたのは自らも難病のクローン病当事者である照喜名通さん。相談支援や県内外での講演活動をはじめとする数々の活動を通して、難病患者のためにひた走ってきた。
現在国が指定している難病は合計で333疾病。沖縄県の難病患者は約1万人に上る。難病の定義は、①原因不明 ②治療法が確立していない ③希少な疾病 ④長期療養が必要―という条件を満たすこと。アンビシャスは、患者数も少ないことから孤立しがちな当事者に寄り添い続けている。
照喜名さんが消化器系の難病「クローン病」と診断を受けたのは1997年。コンピュータプログラマーとして働いていた35歳の時だった。入院中にさまざまな本や資料をそろえ、病気のことを調べ始め、怒りやもやもやとした感情を埋めていた。
そんな中、活動のきっかけとなる出来事があった。看護師に同じクローン病の青年と話してほしいと頼まれた。手術を拒み、個室に閉じこもったままだという。絶望の淵にいる男性の病室を訪れ話しだすと意気投合した。彼は手術を受ける決意をし、無事退院。親族からは命の恩人のように感謝された。「ただ病気のことを話しただけなのに、人の人生を変えてしまった。それからおせっかいが始まった」と照喜名さんは笑う。
沖縄初の認定NPO法人に
退院後、クローン病患者でつくる「クローン病友の会」に入会し活動を始めた照喜名さん。2代目会長にも就任した。膠原病友の会の会長などとも交流を始めた。
当時難病の患者会は県内に2つしかなかった。「難病患者の情報交換や交流できる難病センターをつくりたい」。妻と3人の子どもを抱える中、脱サラ。設立に向けて悪戦苦闘する中、現理事長でもある全保連社長の迫幸治さんが資金提供を申し出てくれた。2001年に設立、翌年NPO法人認証、2009年は沖縄初となる国税庁認定の認定NPO法人となった。
現在、アンビシャスは照喜名さんを含め6人のスタッフで運営。活動は無料相談、就労支援、患者会の運営支援、情報発信、患者が使用する医療機器の貸し出しなど多岐にわたる。
理事や監査役には、難病当事者の他、弁護士、医師、ファイナンシャル・プランナー、企業社長などが集まりさまざまな立場から活動を支えている。
経済的自立も支援
難病患者の自立を目指すために、仕事をつくりだす活動もしている。首里城公園内の売店「笑店(しょうてん)」も経営。沖縄オリジナルTシャツなどを販売し、難病患者に働く場所を提供している。昨年から力を入れているのが、指笛そっくりの力強い音色を奏でる笛「沖縄指笛」の製作。難病患者が在宅で赤粘土で製品を製作し、収入を得ることができるシステムだ。以前は瓦職人、故・奥原崇典さんの窯で焼いてもらっていたが、同氏亡き後は製作を中止していた。米国福祉事業協会(AWWA)からの寄付金で電気窯を購入し、5年ぶりに製作販売の再開にこぎつけた。
設立から約20年。「まだまだ次のステージへの課題は山積み」と話す照喜名さん。医療面や制度面でのサポート強化など、さまざまな課題があるが、今は知名度を上げていくことが先決だと分析する。寄付などの支援強化のためにも、活動内容を知ってもらうことが重要だと語る。
「アンビシャス(大志)」という名称は夢だった設立を実現させた時に名付けた。「夢を諦めずに進んでいけば必ず実現するということを患者さんにも味わってもらいたい」との思いが込められている。持ち前の行動力で、次の目標に向かっての挑戦は始まっている。
(坂本永通子)