「表紙」2020年02月06日[No.1813]号
フレッシュな風味をぜひ産地で
自然豊かな大宜味村江洲集落では、耕作放棄地を利用したソバ生産の取り組みが10年以上続いている。県産のソバは、収穫時期が県外の産地とは異なるため、「日本一早い新そば」としてアピールされ、昨今では、和そばへのなじみが薄い県民にも地域の名物として認知されている。大宜味村蕎麦生産組合の平良幸也さんに話を聞いた。
1月下旬、収穫を1週間後にひかえた大宜味村江洲にある平良さんの畑では、白い花と三角形に例えられる形状の実をつけたソバが風に揺れていた。
温暖な沖縄では、県外の産地に比べると、ソバの成長するスピードが早い。この特性を生かし、平良さんは年2回の収穫を行っている。播種(はしゅ、種まき)から収穫に要する期間は3カ月程度。今回訪れた畑は、昨年10月に播種したものだ。
年2回味わえる新そば
大宜味村では、9、10月頃に播種し、翌年の1月に収穫をする「秋植え」と2、3月に播種し、梅雨が始まる前の5月頃に収穫をする「春植え」を行っている。いずれも、ソバの苦手とする高温多湿の時期を外しての栽培だ。「他県の産地では考えられない時季に新そばを提供できるのが、自分たちの強みです」と平良さんは話す。
根を張ったソバの実は、葉などを食べるヨトウムシ(ヨトウガの幼虫)や、実を狙うイノシシやカラスなどを防ぎつつ、収穫を待つ。栽培中は生物による食害のみならず、雨によって枯れてしまう湿害(しつがい)にも注意が必要だ。
「ソバは収穫後の方が手間がかかるんですよ」と話す平良さん。大宜味村蕎麦生産組合では、収穫したソバの実の選別、貯蔵、脱穀、製粉を自前の設備で行っているためだ。ソバは管理状態が適切ならば、1年程度保存することもできる。組合では、店舗などから注文があり次第製粉を行うことで、新鮮なそばの提供を可能にしている。次期の生産に使用する種も収穫したソバから確保しているそうだ。
地域の味として定着
平良さんらが栽培を始めて10年以上が経つ現在、大宜味村産のソバは多くの人々に名物として認知されている。2017年からは、「新そば祭」が開催され、日本一早い新そばを目当てに多くの人が訪れる。昨年は会場である江洲公民館周辺に行列ができるほどの盛況で、限定1000食で用意していたかけそばは、全て売り切れとなったそうだ。平良さんも「新そばはつゆをつけないで麺だけでもおいしい」と太鼓判を押す。
また、江洲集落では月に一回、住民交流の行事として「江洲チャンプルー食堂」が催されている。江洲区の区長らが中心となり、地域の人々にそば打ち体験を提供。最後は調理したそばを味わいながら、参加者が団らんするという地域ぐるみのイベントで、子どもたちにも楽しめる内容となっている。地域を代表する作物としてソバの存在が根付いているのだ。
平良さんの畑にもほど近い食堂「江洲の花」でも一年を通し、大宜味村産のそば粉を使ったメニューを提供している。同店では、注文が入ってから製麺を始めるので、地域で採れたソバの香りを存分に楽しむことができる。
江洲集落ののどかな雰囲気の中で味わう和そばは格別。「そばと言えば、沖縄そば!」というそばじょーぐーも、ぜひ味わってみてほしい。
(津波典泰)
大宜味村産ソバが食べられる場所
新そば祭
期 間:3月7日(土)、8日(日)
会 場:江洲公民館
時 間:10時〜16時
江洲の花
大宜味村大保326-224
☎︎ 0980-43-3040
営業時間:11時〜15時
定休日:水曜