「表紙」2021年02月11日[No.1866]号
人を幸せにする調理師に
1974年設立、「沖調」の通称で親しまれ、多くの調理師を輩出している「沖縄調理師専門学校」。「食と健康を通して、社会に貢献する人材養成」を理念に掲げ、食文化や食品について指導する。実習は西洋料理・日本料理・琉球料理・琉球菓子・中国料理・デザート・介護食と幅広く、各料理の基本から応用までをじっくり学べるカリキュラムを組んでいる。授業の様子を見学し、在校生2人と講師陣に話を聞いた。
調理師を目指す若者たちを約50年にわたって指導している沖縄調理師専門学校。現在は昼間部に1年制と2年制の2つのコースがあり、1年制は早く現場に出たい人向き。2年制は高度な技術を身に付け、多彩なカリキュラムをじっくり学びたい人に向け設定しているそうだ。
卒業間近な2年制コースの見学に行くと西洋料理の授業中。本格的なフランス料理「豚骨付きロース肉のソテー クルミ風味」の調理実習を行っていた。まずは講師の前川孝太さんがデモンストレーションを始め、手際良く進める段取りを真剣に見つめる生徒たちの姿があった。
前川さんは調理方法はもちろん、ソースや付け合わせ、盛り付け方まで細かく説明。「この料理は火の入れ方がポイントになります。豚肉をパサつかせずにしっとりと焼き上げる方法を指導しました」と講義後に教えてくれた。
2年制コースの1年目の重点は基礎と基本を学び、2年目は食材を替えるなどして応用力を育て、生徒たちの成長をはかるのだそう。
「卒業後は沖調生としての誇りを持ち、自分の決めた道で頑張ってほしい。調理人である前に、一人の社会人として活躍してほしい気持ちで、生徒と向き合っています」と前川さんはほほ笑んだ。
学びを生かし就職
前川講師のデモの後、生徒たちはグループを組み作業を分担して調理実習に移る。
豚肉の火入れ具合を難しがっていた赤嶺竜生(りゅうせい)さんは、「火を入れ過ぎると硬くなり、足りないと食中毒が起こる可能性があるんです」と慎重に調理を進める。祖父が農家を営む赤嶺さんは、「沖縄の野菜をおいしく調理できるようになりたい」という思いで入学を決めたそう。やる気を見せると親身に力になってくれる講師陣への感謝も忘れない。京都の老舗料亭に就職が決まった赤嶺さんは「いつの日か沖縄に帰り、店を構えたいです」と目を輝かせる。
恩納村のホテルに就職する仲本祐翔(ゆうと)さんは、西洋料理の盛り付けや種類豊富なソースに魅了され入学を決めた。「西洋に限らず各料理を学ぶうちに、料理に対する意識が変わりました。今日は豚肉の火入れ加減とソースの煮詰め具合が、特に勉強になりました」と話す。卒業後は後輩に指導できるまで成長したいという。「学校での学びを生かし、作業を任せてもらえる調理人になりたいです」と目標を教えてくれた。
琉球の食文化を伝承
こだわりのカリキュラムの中で、沖調が特に力を入れているのが琉球料理の指導と普及。県が認定する「琉球料理伝承人」の資格を持つ職員が4人在籍し、ホームページでは作り方を動画で公開している。担当講師の金城助(ひろ)さんは、食べ慣れているが作り方を知らず、お店で食べる機会の多い琉球料理を再認識してほしいと願う。
「工程と基本、そして味。琉球料理のおいしさを今後も伝えていきます」と金城さん。だしの取り方に始まりお菓子やイナムドゥチなど、沖縄を代表する料理作りのポイントが動画で紹介されている。在校生だけでなく一般公開されているので、気軽に見て学んでほしい。
校長の友利伸次さんは学校の特徴を「専任講師によるきめ細かい指導と、一流の技術を持つ現場のプロ講師陣による特別授業」と語る。「調理師とは?」という質問には、「人々の健康を維持増進させ食の安全を確保し、食文化を継承する重要な役割。人を笑顔にし、幸せにできる素晴らしい職業です」と答え、志望者に「プロの調理師を目指し頑張ってください!」とエールを送った。
取材をした今回、また過去にも筆者が感じたのは、沖調は講師・職員と生徒の距離が近い学校だということ。親しそうに会話し、校内は笑顔があふれている。ホテルの総料理長や専門店勤務、飲食店経営など卒業生の活躍も多い。調理師という職業を目指す人、憧れている人は体験入学を通して学校を知ることから始めてほしい。
(饒波貴子)
沖縄調理師専門学校
那覇市久米1-18-7
☎︎:098-861-7100
https://okicho.ac.jp
※沖調体験入学!
2月23日(火・祝)10時〜13時30分
「琉球料理:イナムドゥチ・麩タシヤー」を在校生のヘルプで調理できます。(参加費無料)