「表紙」2021年02月18日[No.1867]号
みんなで造ったスケートパーク
沖縄市中央のパークアベニュー通り。昼過ぎになると、バチンと弾けるような音、ゴーッという滑走音とともに人々のにぎやかな声が響き始める。「SKATE CLUB ORION(スケートクラブ・オリオン)」がオープンした合図だ。日本ローラースポーツ連盟に所属する同施設は、未就学の児童もハイレベルな技をこなす上級者たちも幅広く受け入れ、スケートボードなどの普及促進を担っている。施設運営の中心人物であり、プロスケートボーダーの才哲治(さい・てつはる)さんが目指すのは、児童館や公民館のように親しめる、地域の人たちの居場所の提供だ。
1月17日に開業したスケートクラブ・オリオンは、スケートボードやローラースケートなどを行うための「スケートパーク」という運動施設。内部には、楕円形を半分に切ったような「ランプ」、階段の手すりを模したような「ダウンレール」という設備が置かれ、利用者たちが技(トリック)を磨いている。スケートボーダーたちのダイナミックな動きを見ていると忘れそうになるが、この物件、もともとは「SHOW CLUB ORION(ショークラブ・オリオン)」という遊興施設だったという。才さんら関係者が手作業で店舗を改装した結果、昔の店舗の雰囲気も残しつつ、縦横無尽にスケートボードができる空間に生まれ変わった。
地域に恩返しできる場所に
スケートクラブ・オリオンの前身となった施設は、同じくパークアベニュー内で営業していた「KOZA RAMP(コザ・ランプ)」。こちらも地域の子どもたちを中心ににぎわった施設だったが、スペースが手狭であるという問題を抱えてい たそうだ。活動の幅をもう少し広げたい、そう思っていた才さんの決断を後押ししてくれたのは、地域住民からの理解だった。
比較的新しいスポーツであり、滑走やトリックを行えば、騒音も出てしまうスケートボード。日本国内だと、公共の施設であっても大人の目に入らないような環境にあることが多く、良い印象を持たれない場合もある。しかし、才さんいわく「コザの街は寛大」なのだとか。
スケートボーダーたちが練習をする時に、地域のお年寄り達がやってきて楽しそうに見学したり、「ジャンプ見せて」とお願いしたりする。「『どんどん人を集めてにぎやかにしよう』と言ってくれる人もいます」と才さんはありがたそうに話した。
この背景もあり、コザ・ランプの向かい側、ショークラブ・オリオンだった物件への移転が決まった。場所を大きくすることで「地域に恩返しができるんじゃないか」という考えも生まれていった。
興味のある人は誰でも
約一年をかけて、改装・移転作業を行ったスケートクラブ・オリオン。改装のための資金は利用者からの寄付やクラウドファンディングで多くを賄った。実際の作業に際しては、工具の貸し出しや、自宅にあった廃材の提供など、またしても地域の人々から支援を受けたという。
たくさんの厚意の上に成り立ったことで、才さんの中にあった、同施設を地域の人の居場所にしたいという気持ちはさらに強くなった。現在は、利用料が払えない子どもたちにも、無料で施設や道具を開放している。
「子どもたちが遊ぶことは社会の財産だと思っています」
そう語る才さん。実際にスケートクラブ・オリオンに集まる人々は、上級者が初心者の練習をサポートしたり、トリックを教えあったりということを自然に行っている。スケートボードを共通点にすると、大人も子どもも同じ視点で楽しむことができる、だから興味のある人は誰でも受け入れる。全ての人に開かれたスポーツの魅力を今後もコザから発信し続けたいそうだ。
(津波 典泰)
SKATE CLUB ORION
沖縄県沖縄市中央3丁目15−4 1F
営業時間:14:00〜20:00、日・祝13:00〜20:00
定休日:水曜
スケートボード、ローラースケート、ヘルメットなどのレンタルも可能
@orionskateclub