「表紙」2021年07月08日[No.1887]号
絵と言葉で伝える芸術のおもしろさ
レキオ読者ならおなじみの人気連載漫画『ハマとんど〜』。このたび、作者である「画伯さん」ことガンジー石原さんの個展開催が決定した。明日9日(金)から、会場は琉球新報社2階の新報ギャラリーだ。個展に合わせ、数十点以上の新作絵画を用意し、世界の偉人達の言葉も学んだガンジーさん。彼の芸術が達した新境地について話を聞いた。
『ハマとんど〜』は、作者自身をモチーフとした主人公「画伯さん」の日常生活を舞台にちょっと不思議でおもしろい出来事を描くマンガだ。連載開始は2008年1月、今年で13周年を迎えている。画伯さんの友人として登場する「クマ太くん」や「カメ」はもともとガンジーさんが持っていたぬいぐるみから着想を得たそうだ。
笑わずにはいられない急展開、「なんだってー!」と読者をおどろかせるオチ、かと思えば深い意味や思いやりの感じられる内容。エピソードは週によってさまざまだが、作者が身近な人や物事を愛でる視線は共通していると感じる。
2つの作風がお披露目
今回の個展では、『ハマとんど〜』と世界観を共有するようなペン画の作品に加え、 水彩画に文章を添えて1セットとする作品、合わせて約80点を展示予定だ。会場はペン画を展示するコーナーと水彩画・文章を展示するコーナーで大きく2つに分けられる。
ペン画はガンジーさんが最も親しんできた技法。カラフルで「ごちゃごちゃ」していて、細かな描き込みが持ち味だ。現実には無さそうな不思議な出来事が描かれているので「子どもたちにも楽しんでもらえるはず」とガンジーさんは話す。
新しい学び
水彩画とそれに添える文章の作品は、ガンジーさんが約半年前から学び始めたことが反映されている。
約半年前、とは今回の個展開催が決定したタイミング。大規模な個展に際し「今までと同じ表現だけではダメだ」と強く感じたガンジーさんは水彩画教室に通うことを決めたのだ。同時に、哲学書を読み、世界の偉人たちの知恵も学び始めた。
これまで描いていた絵は、ほぼ独学だったというガンジーさん。水彩画教室では、絵を描くということが、頭で対象を理解するのではなく、「目で観察すること」なのだと先生から学ぶ。このことに感銘を受けた彼の作品は、「こんなきれいな絵をかけるなんて」と自身でも驚くほど進歩したそうだ。
文章の部分を構成するのは、自身の遊び心たっぷりな語りと、プラトン、ダンテ、ルソーなどの引用。さまざまな哲学書をねばり強く読み、知識を深めた成果がここには表れている。最初は苦戦したようだが、今では「自分が好きなのは絵よりも言葉を書く方だな」と笑う。
展示のイントロダクションとして、自分なりに考えた「芸術を学ぶ意義について」 という文章も作成した。一見難解だが、彼が世界を見るまなざしを知ることのできるやわらかい内容だ。
個展をきっかけに新しいことを学び、それを鑑賞者にも伝えようとしているガンジーさん。「勉強することって大事だなぁ、って改めて思いました」と、今回の経験で得たことをしみじみと語ってくれた。
会場を訪れる際は、ぜひ時間に余裕を持って、ガンジーさんが得た表現の新境地をじっくりと味わってほしい。開期中は本人も在廊予定だ。」
(津波 典泰)
〈イベント情報〉
『ハマとんど〜』画伯の作品展
期間:9日(金)〜11日(日)
時間:10時〜17時30分(最終入場)
会場:琉球新報ギャラリー2F
(那覇市泉崎1-10-3 琉球新報社)入場無料
※感染防止のためマスク着用をお願いします。また、発熱(37.5度以上)や風邪などの症状がある場合はご来場をお控えください
1975年沖縄市生まれ。30歳を目前にした時に「何か一生懸命やれるものを」と思い立ち、独学で芸術を学び始める。最近は哲学と水彩画を熱心に勉強している。趣味はガーデニングと競馬予想
今回展示する作品の一つ。こちらはガンジーさんが絵を始めて以来得意とするペンを使ったイラスト
水彩とガッシュを使用して描かれた作品。水彩画はガンジーさんが個展に合わせて新しく学んだ技法である。会場では作品に添えられる文章もぜひ堪能してほしい。「言葉遊び」をしつつ、偉人たちの言葉を引用してメッセージを込めているそうだ