「表紙」2021年09月30日[No.1899]号
人を幸せにするパン作り
沖縄市中央、一番街の裏手通りに面した場所に古くからある「コザベーカリー」。こぢんまりとした店内には「たまごパン」や「もちもち食パン」など人気の定番商品から新商品のパンやクッキー、ケーキまで所狭しと並んでいる。手土産にはこれかな? 明日の朝食はどれにしよう? 迷うのもまた楽しい時間だ。
1975年、沖縄国際海洋博覧会が開催された年にコザベーカリーはオープンした。創業者は崎原清さん。代表取締役の崎原清正さんの父にあたる。当時、小学校低学年だった清正さんは「そのころ、中部にはパン屋さんがほとんどなく、遠方からわざわざ買いに来る人もいました」と振り返る。同じ年にできたばかりの一番街は大いに繁盛し、コザベーカリーにも行列ができたという。
常に客目線で考える
大学時代からパンの配達など家業の手伝いをしていた清正さんは、卒業後も同様に働き続けた。
「小さいころから父の働く姿を見ていましたし、『おいしいパンを作って、お客さんが喜んで笑顔になってくれるのがうれしい』という話など、いろいろ聞いていました。それで、自分もお客さんに喜ばれるようなおいしいパンが作りたいと思ったんです」
現在も清さんの手掛けたロングセラーから、清正さんの考案した商品まで店頭には多くのパンが並ぶ。常に客目線に立ち、定番商品を大事にしながら客を飽きさせないよう清正さんは新しいパン作りに余念がない。
「突然、アイデアが浮かぶこともあります。作るのも大変だけど、お客さんが喜んでくれると思うと、それだけの魅力はあります」と話した。
差し入れや手土産に
同店の一番人気は1個50円の「たまごパン」。3種類の味が楽しめる、丸くて小ぶりのかわいらしいパンだ。
「子どもが100円玉一つ握って、どれがいいかなーと迷っていたりするんですよ。1個50円なので2個買えますよね。 だから値上げもしにくいし、ずっとこの値段で販売することにしました」
たまごパンができたのは10年ほど前のことだった。
「父が15年前に他界して、その5年後に神戸でパン屋を営む父の知人が沖縄に来てくれました。そのときに『一度、神戸においで』と言われて修業させてもらったことがあります。そこには面白い味のもっちりした食感のパンがありました。そのレシピを聞いて自分なりにアレンジしてできたのが『たまごパン』なんです」
いまでは親が子どもの部活動の差し入れ用に、または手土産やシーミーのときなどに気兼ねなく購入できると評判だ。また、「もちもち食パン」や「ピーナツパン」も人気があり、その他クッキーやチーズタルト、アップルパイなど50種類以上の商品が訪れる客を楽しませている。
清正さんは「おいしいものは人を笑顔にさせる力がある。それを大切にしたくて、これからも心を込めて作っていきたい」と話す。
創業46年、時折「学生の頃によく来ました。懐かしいです」などと話してくれる客がいる。「店を続けていてよかった」と思う瞬間だ。そんな喜びをかみしめながら、清正さんは今日も誰かの笑顔のためにパンを焼く。
(﨑山裕子)
コザベーカリー(ゴヤ店)
沖縄市中央1-14-12
☎︎098-937-7293
9:30~19:30(定休日・日曜)