「表紙」2021年12月16日[No.1910]号
運動機能の土台を作る教室
「あらゆるスポーツに対応できる12の力」を12の運動で身に付けることをモットーにするK12スポーツスクールは、2017年に比嘉健雄さんが立ち上げた運動教室。比嘉さんが講師となり、県内各地のスタジオなどで毎週約200人に体操やキッズパフォーマンス、アクロバットなどを指導している。「子どもが持つ運動能力を伸ばしたい」という思いでスクールを開設した比嘉さんに、いきさつやキャリアなどを語ってもらった。
「タンブリング」とはマットの上で、跳躍や回転運動をすること。比嘉さん主宰のタンブリング教室を訪ねると、学校帰りの小学生が次々集合。比嘉さんの声かけでストレッチを始め、続けて逆立ちをしたり前転とキックを組み合わせたりするなど、リズミカルに全身を動かしていた。
「ここは運動機能の土台を作る場所。この先みんなが好きなスポーツを始めて活躍してほしいと思いながら、クラスを運営しています」と語る比嘉さん。1クラスの定員を12人までと決め、動きを見ながら1人ずつ指導する。
小学校低学年クラスは倒立とブリッジや片手側転、高学年クラスは勢いをつけてバク転(後方転回)に挑戦するなど、学校の体育の授業に比べ高度な技を習得しようと、みんな熱心だ。そして全員が笑顔。上手にできたとうれしそうに笑い、うまくできなくても笑顔で再挑戦を続け、運動する楽しさが表情から伝わる。
子どもの能力伸ばしたい
元小学校教諭の比嘉さんは、幼少期から体を動かすことが好きで中学生の時に器械体操部に入った。 県中体連では個人で総合優勝、高校生の時に全国大会に出場するなど活躍。だが、けがが理由で志望の体育大学への進学は断念した。
「教育に携わりたかったので教員を目指し、臨時採用されて小学校で勤務しました。学級担任を6年務めやりがいはありましたが、子どもたちの才能をもっと伸ばしたい。教育カリキュラムの指導に、もどかしさを感じるようになったんです。体育は教えたいけど、全教科が得意な訳ではなかったですしね」と笑いながら振り返る比嘉さん。
いったん教職を離れ生き方を見つめ直したことで「スポーツで培ったものとこれまでの経験を生かせることがしたい」と思いを新たにし、2011年に『琉神マブヤー』関連の求人に応募。当時のマブヤーは沖縄のローカルヒーローとして県内外で人気で、ドラマはもちろんスーツアクターとしてショーに出演するなど、演者としての活動を広げた。そして演者仲間とパフォーマンス集団「チョンダラーズ」を結成し、子どものためのアクション講座も開講。体操選手の実績も生かして体操・体育の指導役を任される機会が増えた比嘉さんは、17年に独立し現在に至る。
今後はパフォーマー育成
アクション俳優やパフォーマーとしての活動を続けながら指導役も務める比嘉さんは、子どもたちの成長に関わった実感がうれしいという。
クラスに参加中の小学5年生2人に話を聞くと、「4カ月目ですが、いとこが楽しいというので入りました。バク転に挑戦したり、学校とは違う楽しさです」(今井旺生/いまい・おうきさん)。
「お父さんの勧めで入りましたが、遊び感覚で運動できるので続けています。体育の授業も楽しくなりました」(金城柚奈/きんじょう・ゆずなさん)とのこと。
「逆上がりでもバク転でも、できない子が練習を重ねてできるようになった時。達成感で目がキラキラし、自信がついたと分かります。さらに難しい技に挑戦したり、体育の授業で模範演技をしたと報告されたり、みんなの喜びの共有がとにかくうれしい」と語る。
一方公園で携帯用ゲーム機で遊ぶ子どもを見かけショックを受けることも。
「ゲームは楽しいですが、公園では動いてほしい。運動は生活に欠かせませんし、子どもがずっと続ける生涯運動を広めたいです」と力強く語った。
今後は「巣立った子がスポーツに流れ、オリンピック出場など世界に羽ばたいたらうれしい。キッズパフォーマー育成にも力を入れます」と宣言。また小中学校の体力テストで全国平均値を下回る沖縄の現状を深刻に受け止めながら、「運動が好きな子を増やして貢献できるよう、微力なら活動を続けます」と語る比嘉さん。真っすぐな思いが伝わってきた。
(饒波貴子)
<インフォメーション>
K12スポーツスクール
比嘉健雄指導員によるタンブリング・幼児体育指導・アクロバット指導などの教室。
嘉手納町、沖縄市、南風原町他、県内各地で開催中。イベント出演なども受けているので、メールにてお問い合わせください。
問い合わせ:kdozen.sports@gmail.com