「表紙」2021年12月23日[No.1911]号
仲間の協力に感謝! 新しいことにも挑戦
南城市大里平良の工房で、サメの皮を使い財布やバッグなどを製作する金城立磨(りゅうま)さん(26)。高校卒業後に県内の革製品工房へ就職し、7年間腕を磨いた。その後、2019年に独立し「cafooca(カフーカ)」を立ち上げサメ革の商品を手掛けるように。きっかけは、マグロ漁師の友人から「サメの皮で何か作れないか」といわれたことだった。金城さんは「周囲の協力があったからこそ今がある」との思いを胸に、日々、革と向き合う。
金城さんが営むコンテナショップを訪ねると、オープン当初とは違い商品はほぼ完売状態だった。現在、受注生産で2〜3カ月待ちになるほどの人気ぶりで、「ひたすら夜中まで作業しています」とうれしい悲鳴をこぼす。
念願だったコンテナショップはクラウドファンディングで支援を呼びかけ、今年6月に完成。内装や電気関係、ペンキ屋などの仕事をしている地元の友人や先輩が協力し、黒を基調にしたかっこいいショップに仕上げた。ショップ内の壁には感謝の気持ちを込め、友人らを含むクラウドファンディング支援者の名前を連ねた。
沖縄のサメ事情知り
高校を卒業し、革製品工房で働き始め数年がたったころ、この先ずっとこのままでいいのか、成長していないのでは? と不安になった。 そんなとき、漁師の友人に「サメ皮で何か作れないか」といわれたことを機にサメについて調べてみると―。
「サメ皮は、海外では高級な皮として扱われ、仙台の気仙沼では沖縄とは違う種類のサメが製品化されていた。さらに気仙沼はサメの町といわれ、食用にするためサメ漁に出ている。でも沖縄はサメ漁ではなく、サメ駆除だった。処分され、沖縄ではほとんど需要がない」
そんな現状を知り、県内で捕れるサメの皮を使って製品化に挑戦。まずは県内の漁協に電話し「サメをさばかせてください」とお願いした。それからというもの、サメが水揚げされる県内各地の漁港へ出向き、自らさばいて皮を剥いでいる。
「料理人である地元の先輩に手助けしてもらい、最初は一頭さばくのに3時間ぐらいかかりました。今では20〜30分でできますよ」と話す金城さん。ちなみにサメの肉は、ほしいという飲食店などに提供している。
魅力的な商品へ
cafoocaでは長野県の皮革製造加工メーカー「株式会社メルセン」にサメ皮を送り、なめしてもらう。色を指定し、商品化できる「サメ革」に生まれ変わって初めて手元に戻ってきたときは「感動した」と振り返る。
これまで駆除され、廃棄されていたサメの皮は金城さんの手により、魅力的な商品へと形を変えた。同じデザインの商品でも革の表情や手触りも異なり、それぞれに違う味わいを持つ唯一無二の存在だ。年月を経て育っていくのを想像するのもまた楽しい。
金城さんは、これまでに日本青年会議所主催の青年版国民栄誉賞と称される「JCI JAPAN TOYP 2021」で準グランプリを受賞し、同時に農林水産大臣奨励賞やNHK会長賞も受賞。身近な問題に目を向けながら、ものづくりに励む姿勢が評価された。さらに、長財布は「2020沖縄南城セレクション」に認定され、商工会特産品コンテストで優秀賞を獲得し、自信につながった。最近では「自分がやっていることは間違いじゃなかった」と実感している。そして、力になってくれた友人や先輩たちには本当に感謝していると繰り返し話す金城さん。「革職人としてだけでなく、他のこともやってみたい」と意欲を見せる。今後は新しい世界をのぞかせてくれることにも期待したい。
(﨑山裕子)
cafooca(カフーカ)
南城市大里平良2239
☎︎090-6866-5674
cafooca.com
営業時間:10:00〜18:00(日曜定休)
(留守の場合もあるので、お出掛けの際は連絡を)
サメ革を持つ金城さん。レンガの壁にはクラウドファンディングの支援者の名前を入れた 写真・﨑山裕子
イタチザメの革を中心に、農業被害のため駆除されるニホンジカの革も使用 ※売り上げの一部は児童養護施設や首里城再建の寄付に充てている