「表紙」2022年01月20日[No.1915]号
「今見てほしい」沖縄市愛あふれる映画
ロックンローラーが輝いていたきらびやかな街、「約50年前のコザ」へとスクリーン上でタイムスリップできる楽しい沖縄映画『ミラクルシティコザ』が完成した。2021年春に撮影した製作秘話、主演を務めた人気俳優・桐谷健太(きりたに・けんた)さんについてなど、平一紘(たいら・かずひろ)監督と主演の大城優紀(おおしろ・ゆうき)さん、津波竜斗(つは・りゅうと)さん、小池美津弘(こいけ・みつひろ)さんに話を聞いた。
現在32歳の平一紘監督がイメージする1970年代の華やかなコザを舞台に、フィクションとして作り上げた本作。現代と70年代の沖縄市を交差させ、コザロックを代表する伝説のバンド「紫」の全面協力を得るなど、タイトル通り奇跡を感じるようなエピソードが詰まっている。
製作のきっかけは2019年、予告編を作って賞を競う「未完成映画予告編大賞」でグランプリを受賞し、費用の支援が決まったことだった。
「受賞から一年後に撮影予定でしたが、コロナ禍で数回延期になりました。その度に主役の桐谷さんは次のスケジュールを考えてくれ、熱意を感じ本当にうれしかったです」と平監督。
「延期になる度に台本が変わり、最初は全く違う内容でしたね」と大城優紀さんは笑顔で語る。インド映画仕立てのミュージカルのような作風から構想が始まったという。
「ドラマや舞台出演は経験しましたが、映画は初。役に立つなら何でもやる感覚で参加しました。事故死する役なので、延期になっても僕の設定は変更なしでした」と笑うのは小池美津弘さん。現場の雰囲気や共演者との交流を楽しんだそうだ。
人気ロッカーだった祖父の魂が乗り移る重要な役を演じた津波竜斗さんは「面白い作品だから出たい訳ではなく、僕でいいんですかという気持ちでの参加でした。見てほしいシーンは演じる翔太のタイムラプス。コマ送りのように見えますが、19時間部屋にこもって撮り続け使われたのは10秒程度。おまけに撮影途中で誕生日を迎えたんですよ」と振り返る。
平監督によると、撮影までに何と26回も台本を書き直したそう。頭をフル回転させてクランクインを迎えたことで気持ちに余裕ができ、現場でのアクシデントには即時に対応できる体制で撮影に臨んだそうだ。
桐谷健太さんも出演
沖縄発の映画ながら、知名度抜群の俳優・桐谷健太さん主演で、全国上映が決定しているのも本作のポイントだ。
「第一印象はきれいな人。横顔が彫刻みたいで本人にそう伝えました」(小池さん)
「リハーサルから一緒に演じてくれてありがたく、フレンドリーな方でした」(大城さん)
「共演シーンは目の奥で語りかけられているようで、ゾクッとしました。与える力がすごい人です」(津波さん)
それぞれが桐谷さんの印象を語る中、平監督は「ライブシーンでの待ち時間にはエキストラの方に向けて『海の声』を歌ってくれるなど、サービス精神が高い人。演技のアイデアを出して共演者を引っ張り、一緒に作品を作ってくれる役者さんでした」と語る。カッコいい外見だけでなく、コメディーセンスのあるチャーミングな素顔も彼の魅力のようだ。
笑って感動するハッピー映画
桐谷さん演じる若き日のハルは、70年代の米兵を熱狂させたロックバンドのメンバー。結成50周年を超え現在も活動中の「紫」の実話を参考にしたそうだ。また映画に賛同したバンド・ORANGE RANGE(オレンジレンジ)が主題歌を書き下ろすなど、劇中の音楽も聞き逃せない。
最後に見どころを聞いた。
「軽いノリで見られますがシリアスな感動シーンもあり、いろいろな場面が埋め込まれた楽しい映画です。ぜひ見てください」(大城さん)
「感想は人それぞれ。まずは先入観なしで見てほしいです。クレームには謝りますが(笑)、作った側としては最高傑作です」(小池さん)
「青い海や空がほぼ出てこない沖縄映画です。新感覚でコザという街を描いていますし、めちゃくちゃ面白いですよ!」(津波さん)
「復帰50周年の年の公開で、たくさんの県民のみなさまが見て楽しく盛り上げていただきたいです。全国でも上映しますので、どんな反応があるか期待でいっぱいです」(平監督)
沖縄市の街の風景に昔のコザの姿を重ね「今見てほしい映画」という思いで製作した本作。映画館で見た後に沖縄市を散策し、鑑賞も体感も楽しんでほしい。
(饒波貴子)
2021年/日本
監督:平一紘/出演:桐谷健太、大城優紀、津波竜斗、小池美津弘 他
https://miraclecitykoza.com
1月21日(金)からシネマQ、シネマライカム、ミハマ7プレックス、サザンプレックスで上映。
(1/20まで沖縄県内のファミリーマートFamiポートで、前売り券販売中!)