「表紙」2022年03月10日[No.1922]号
好きなことをして生きる
豊見城市高安のアトリエショップ「lotti(ロッティ)」。アパートの一室を使い、オリジナルデザインにこだわった個性的な雑貨やアクセサリーを扱う。宣伝はインスタグラムのみで看板も出していないが、ユニークなアイテム目当てのお客さんが足を運ぶ。かつては思い悩むことが多かったという店主の赤木こず恵さん。県外での経験や母の急逝をきっかけに「好きなことをして生きていこう」と決意。編み物やアクセサリー作家の道へ進み、ロッティをオープンした。
豊見城市に広がる住宅街のアパート。階段で3階に上り扉を開けると、思わぬ空間が広がっていた。
2DKの室内には、雑貨、アクセサリー、洋服がズラリ。いずれも、個性あふれるアイテムばかりだ。隅から隅まで埋め尽くす品物は、店主の赤木さん自身、また県内外のさまざまな作家が手作りしたもの。全て独創的なオリジナルデザインであることがこだわりだ。
悩むより自由に
「悩むより好きなことを割り切って仕事にしよう」―。
明るい表情をたたえ、話し出すと熱中して止まらなくなる赤木さん。しかし、実はあれこれ考え込んでしまいがちなタイプで、かつては悩み事が多かったと振り返る。
那覇市で生まれ育った赤木さん。靴屋さんで働いた後、ファッションや雑貨とは関係ない資格職に就いたが、自分に合わないと感じ退職。2007年、結婚を機に大阪へ渡った。
「大阪でパン屋さんの立ち上げを手伝ったのですが、年の近い人がオーナーで。キラキラしていたんですね」
母の急逝も重なり「人はあっけなく亡くなってしまう」と実感。沖縄に戻ったら「好きなことを仕事にして生きていこう」と決意したという。
そんなある日、母がレース編みをしていた光景が頭から離れなくなった。「『やってみて』ということかと思って、編み物の本を買ってきて始めたらすんなり靴下や帽子が編めた」
13年に帰沖。娘のために編んだ帽子がカフェのオーナーの目に留まり、個展を開催。14年からは「Ajimoon(アジムーン)」のブランド名で県内外のイベントに出店するようになり、2018年、自身の作品と県内外の作家の作品を扱うセレクトショップをオープンした。
アイテムの幅も広がった。編み物・布・リボン・ポンポンをつなぎ合わせたオリジナルの布ターバンは、ひと目でそれとわかるインパクトのあるデザインが目を引く。「リバーシブルで何通りにも巻けて、いろいろなアレンジができる」。大人から子どもまで幅広い年代に似合うのが特徴だ。
独自に発見した技法で金属に布地を貼り付け、ヴィンテージビーズと組み合わせたアクセサリーも人気だ。「これをやっているのは世界でも私だけじゃないかな」と笑う。
インスタライブも人気
「アパートの一室から広がる世界をお客さんと楽しみたい」。宣伝はインスタグラムに絞り、店舗に看板などは出していないが、口コミやインスタグラム経由でお客さんが次々と訪ねてくる。
コロナ禍を機に始めたインスタライブも人気だ。スマホカメラに向かって、時にはウチナーグチを交えつつ、息もつかせぬ勢いでアイテムをアピールする。インスタライブでは、リアルタイムで双方向のコミュニケーションが可能。視聴者から寄せられたテキストメッセージに、赤木さんはその場で次々と返答していく。フレンドリーに語りかける口調から、視聴者一人一人に直接語りかけているような臨場感が生み出されるのが魅力だ。時には「これはこういうふうに使ったら○○さんに似合うはず」とアドバイスすることもあるという。
「アジムーンさんのインスタライブを見て、人生観が変わった」という声が寄せられることもある。
「みんな、やりたいと思ってもあきらめていることが多いですよね。実際、私もたくさん悩んできました」と赤木さん。「でも、好き勝手にやっていても、こうやってなんとか生きていける。こういうアパートからでも、世界に向けて発信ができるということを伝えたいです」と力を込める。
(日平勝也)
アトリエショップlotti
豊見城市高安549−14 301号室
営業時間=不定期(インスタグラムからご確認ください)
Instagram @lotti_ateliershop