「表紙」2022年11月17日[No.1958]号
人生を変えたい人が紡ぐ4つの物語
沖縄市パークアベニューに実在する「トリップショットホテルズ・コザ」の客室を舞台にした 『10ROOMS』は、人生を変えたい人の日常や生きざまを映し出す県産オムニバス・ムービー。 沖縄とアメリカが混ざり合ったような街並みや文化、さまざまな人々が行き交う風景など、コザ の街の空気感がたっぷりとこめられている。県内の俳優や芸人が多数出演し、日本のエンタメ 界で幅広く活躍する加藤雅也さんと尚玄さんも出演。豪華キャストとオリジナリティーあふれる ストーリーが魅力の注目作だ。関係者に見どころを聞いた。
「自由に撮らせてもらった作 品です」とうれしそうな岸本 司監督。4本のエピソードから 構成された本作は、登場人物 を重ねつつコメディー・ファン タジー・ダークファンタジー・ バイオレンスと異なるテイスト でそれぞれが展開する。
「どんなシーンにするか最低 限のルールはプロデューサーと 決めましたが、その範囲で好き にやらせてもらいました。沖縄 が凝縮されたようなコザの街 で夢を持つ人を主役に商店街 の人たちも描いたら、ウチナー ンチュの姿が見えてくるのでは ないか、という思いで脚本を書 き撮影しました」と話す岸本 監督。エピソード名になってい る4つの客室を実際に訪ね、脚 本を膨らませていったという。
複数のエピソードは多様性 の表現にもなるとのこと。
「コザの街はチャンプルーや カオスを感じる、いろんな面が あると思います。本作の登場人 物も人間のクズ、LGBTQ、 過去に引きずられる人や悪人 などさまざま。でもみんなそれ ぞれ、ハッピーになりたいんで す。良い物もダメな物も含めた 多様性を描きました」
岸本監督は県民はもちろ ん、県外の人にも見てほしいと 願う。「沖縄の言葉は標準語に比べると柔らかく聞こえ癒や されます」と話し、大好きな北 野武作品によく出てくる「バカ ヤロー」を「本作では沖縄言葉 にしています」とこっそり教え てくれた。
バラエティーに富んだ出演者
劇団「笑築過激団」座長で国 立劇場おきなわ運営財団の常 務理事を務め、俳優活動も続 ける玉城満さんは出演者の一人。
「知り尽くしている地元がロ ケ地の映画です。伝説のボスを 演じましたが、試写を見て裏の 奥側まで仕切っている役柄 だったと気付き驚いた(笑)。 ダークな部分も楽しめますの で見てください」と話す玉城さ んは、「タランティーノ作品を 上回っているかも !? 」と満足そ うな笑顔を見せた。
「濃厚なハードボイルドシー ンがありますが、僕が演じた 『諦めない男』とのギャップが大 きく、登場人物として同じ世 界に生きているのか疑問でし た」と笑ったのは、多くの沖縄 関連作品に出演している山城 智二さん。「いろんなキャラク ターが出るのがコザらしく、今 までの沖縄映画になかったテ イストで面白いです」と太鼓判 を押した。
お笑いコンビ「ありんくりん」 のひがりゅうたさん、クリスさ んはそれぞれ重要な役で出演 している。せりふの多い映画出 演は初で、貴重な経験になった そう。「出演者ですが、すてきな 映画で何度も見たい。みなさん も楽しんでください」と二人。 俳優としての今後の活躍も期 待したい。
県内アーティストの曲を使用
本作のプロデューサーで舞 台となったホテルの運営会社 取締役を務める神山繁さん は、地元沖縄市を改造する思 いでイベントやテレビ番組製作 など、多数の取り組みを継続 中だ。
「実在の街を映像と音で紹 介できる映画は、エンターテイ ンメントの集大成です。観光地 アピールの分かりやすい映画 を作ると、身内で満足する可 能性がある。賛否両論を巻き 起こすくらい話題性があり、娯 楽として成立させるイメージ で本作を製作しました」と神 山さん。「タブーがあるとやってみたくなる性格なんですよ」 と笑い、アメリカのサスペンス ドラマのロケ地が街の活性化 につながった過去の観光ブーム も念頭にあったと話す。その思 いが、本作のバイオレンス・エピ ソードにつながったようだ。
また神山さんは、本作の音 楽にもこだわったと力を込め て語った。
「県内在住アーティスト 12 組 の楽曲を使っています。子ども のころに聞いた映画音楽は今 でも記憶にありますし、自分の 中では映画と音楽はセット。全 て沖縄県産の本作、ぜひご鑑 賞ください」
鑑賞して撮影場所のパーク アベニューを散策すると楽しさ が倍増しそうだ。
(饒波 貴子)
『10ROOMS』(テンルームス)
2022年/日本
監督・脚本 岸本司/出演:尚玄・加藤雅也・ひがりゅうた・宮城夏鈴・中村映里子・山城智二・クリス・真栄城美鈴・太田享・玉城満ほか
https://10rooms-movie.com
18日(金)からシネマQ、ミハマ7プレックス、シネマプラザハウスで上映
※18日と19日(土)は尚玄さん、26日(土)は加藤雅也さんが舞台あいさつを予定。詳細は公式サイトを参照