沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1959]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2022年11月24日[No.1959]号

大宜味村 次世代へつなげる村づくりを
株式会社AGARI 松本政隆さん

自然豊かなふるさとで就農

 緑豊かな山々に囲まれた大宜味村田港でシークヮーサー栽培や養豚などを行う 松本政隆さん(36)。露地栽培に加えて、シークヮーサーでは珍しい平張りハウス栽 培を導入し、安定した供給と品質向上を図っている。那覇市での飲食店経営を経 て、故郷で農業を始めた松本さん。若手の農業従事者たちでつくる青年農業者の会 の会長や農業委員も務め、少子化が進む故郷の発展のために奮闘している。

 大宜味村田港の山あいの畑 でシークヮーサーなどを栽 培する松本政隆さん。同じく 農業者である父・政尚さんか ら引き継いだ農地で、シー クヮーサーの他、ゴーヤー、ス イカ、マンゴー栽培、養豚など を手掛ける。

 那覇市で経営していたライ ブハウスを閉め、故郷に戻り 10 年。「 26 歳の時に結婚をし、 子どもができたのがきっか け。自然豊かな所で子育てを したいと、戻ってきた」。父か ら農業を学びながら、養豚か らスタート。「4千頭の豚が排 出するふんを堆肥化し、還元 したいと思って」果物や野菜 作りにも乗り出した。

 シークヮーサーを育ててい る農地は約6千坪ある。草刈 りや肥料入れから収穫・運搬 作業など、 10 人弱の従業員た ちの協力が不可欠だ。「カメム シやカミキリムシ、ナガタマ ムシなどの虫との闘いも大 変」と話す。木が枯れたら一か ら植え付けなければならな い。何年もかけ育ててきた木 を守るために常に自然を相手 に仕事をする日々だ。

珍しい平張りハウスを導入

 2014年にはシークヮー サーの畑の一角をネットで 囲った平張りハウスを導入。 台風被害や害虫を避けて、よ り安定した供給ができるよう になった。ハウスの中のシー クヮーサーの実は露地栽培の ものと比べて傷が少なくきれ いだ。「青切りシークヮーサー は食事や刺身のあしらいなど に使われるので見栄え重視。 台風などの自然災害に直面し た時でも中の実は守られるの で、皆が出せないときに助け られる一農家でありたい」。

 村の農業活性化を目指 し「青年農業者の会」も立ち上 げ、会長を務める。大宜味村の 20 〜 30 代の若手農業経営者た ち約 20 人で構成される。タピ オカ、キク、養蜂、サトウキビ、 パイン、マンゴーなど、さまざ まな農家が参加し、情報交換 なども行う。「戻ってきた時は 過疎化状態で、若者に対して 農業の魅力が伝わっていな かった。大宜味村は『シー クヮーサーの里』や『長寿の里』という歴史がある地域。そ こに力を入れてビジネスと連 結していければ」と考えてい る。また、「お年寄りの収穫作 業を助けるレスキュー隊とし ての面もある」というが、助け は要らないという人も多く、 まだ出番は少ないという。「そ う言っているうちはまだ健康 な証拠。お願いされたらいつ でもいけるスタンバイはでき ている」とほほ笑む。

若者に農業の魅力をアピール

 「今の若い世代が高齢に なっていったときに、下の世 代に引き継いでいけるような 村づくりをしていきたい」と 後継者育成にも意気込む松本 さん。大宜味村の農業委員と しての顔も持ち、若手就農者 を受け入れようと空き家を活 用した移住定住促進なども 行っている。耕作放棄地など も再生利用し、若い人を巻き 込んで盛り上げていくのが狙 いだ。

 最近では県内外から農業をしたいと来ている若い人も少 しずつ増えている。心掛けて いるのは褒めて伸ばすスタイ ルで接すること。「モチベー ションにもつながるし、自信 がついて、チャレンジ精神に 変われば」とサポートしてい る。自身の従業員にも「いつか 独立してほしいので、何が重 要かということを優先的に教 えている。そうしないと大宜 味村の発展はないと思う」

 現在は自身のシークヮー サー農園で体験型観光農園 事業の展開も目指す。「県外 に促進販売に行った際、シー クヮーサーという名前は知れ 渡っているが、どういうもの なのかをまだまだ知らない人 もいると感じた。理解を深め るきっかけになれば」と話す。

 村の活性化を目指し、アイ デアを生み出している松本さ ん。「1年以内にまた目標が見 つかるかも」と笑顔を見せる。 故郷への思いを原動力に、大 宜味村の宝を次世代へつない でいく。

(坂本永通子)



このエントリーをはてなブックマークに追加



株式会社AGARI 松本政隆さん
露地栽培したシークヮーサーを収穫する松本政隆さん。約6千坪の畑で 平張りハウスも取り入れ育てている。シークヮーサーは青切りが8月~9 月、加工用が9月下旬~11月中旬、黄金色のフルーツ用が12月~翌年2 月までに収穫される=大宜味村田港 写真:喜瀨 守昭
株式会社AGARI 松本政隆さん
平張りハウスの 中で収穫作業を行 う松本さん
株式会社AGARI 松本政隆さん
株式会社AGARI 松本政隆さん
ハウスの中の青 切りシークヮー サーの実は、傷が 少なく見た目もき れい
株式会社AGARI 松本政隆さん
シークヮーサー では珍しい平張り ハウスを導入
>> [No.1959]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>