「表紙」2023年06月08日[No.1987]号
自然環境の学び場づくり
「自然と環境の保全は足元から!」をモットーに自然と環境の回復、保全活動などを行っている「おき なわ環境クラブ(OEC)」。自然体験を通じて環境への理解を深めてもらおうと、植生再生活動や環境 教育、人材育成など、さまざまな企画を実施している。創設メンバーでもある会長の下地邦輝(くに き)さんにOECについて話を聞いた。
5月の 13 日(土)の朝、那覇 市の漫湖公園で、「おきなわ環 境クラブ(OEC)」による水辺 の緑化ボランティア活動が行 われた。OECは月に1度、埋 め立て地の漫湖の南北両岸で、 在来植物の再生活動に取り組 んでおり、集まった約 10 人のボ ランティアは以前植えた植物の まわりの下草刈りや追肥に励 んだ。 10 年以上もここでのボラ ンティア活動に参加していると いう那覇市の女性は「最近は 個人的に草刈りなどをする人 も増え、環境が良くなった」と 話す。
OECは1999年に創立。 水辺の緑化活動をメインに、観 察会、エコツアー、人材育成、環 境教育、教材開発などを地域 や学校、企業、行政機関とも連 携を図りながら展開している。
一人一人の理解が重要
会長の下地邦輝さんは大学 時代から約半世紀にわたり沖 縄の水環境の調査研究に取り 組んできた研究者だ。「環境の 課題は一人一人が理解すること が必要。例えばごみ拾いを何度 やっても同じで、元から絶たな いと根本的な解決にならない。 理解を深める活動を定着させ ようと思い(OECを)つくっ た」と話す。
設立当初からサガリバナの 植樹やマングローブの保全な どを実践してきたOEC。汚 染など人間活動による影響を 受けやすい水辺の植物を中心 に扱ってきた。下地さんは「植 物は移動しない。自分が植えた 木の成長も見えるため、入り 方として扱いやすい題材」と植 物に注目した理由を話す。
沖縄本島に2カ所と宮古に 3カ所の5カ所が主なフィー ルド。また、さまざまな地域で 観賞会なども開催し、植物や 自然の解説も行っている。那覇 市の国場川河口の漫湖公園や 川岸、うるま市州崎の「マング ローブテラス」、宮古島市平良 の添道(そえどう)サガリバナ 群生地などで緑化活動を進 め、環境教育の場としても活 用してきた。宮古島の群生地で は 20 年以上前にサガリバナを 植樹。毎年6月下旬から7月 自然環境の学び場づくり 上旬にかけて遊歩道で行われ る夜のライトアップは今年で 11 回目を迎える。一晩で約50 0人が訪れるほど、夏の風物 詩として定着した。漫湖公園 河川敷では、これまでに千本以 上のサガリバナを植樹してき た。「並木の様相は呈してきてい る」と今後の展開に期待する。
自立した環境NPOへ
2002年にはNPO法人 に認定されたOEC。公的機 関からの業務委託や助成金な ども活用しながら活動を続け てきた。2015年には「沖縄 教育旅行社」を設立。「楽しく しっかり学ぶ」をキャッチフ レーズに、今まで培ってき た「自然と環境の学習」のビジ ネス展開を目指す。コロナ禍か ら回復しつつある今、修学旅行 生などの本格的な受け入れに 意欲を見せる。下地さんは「一 番の課題は安定した運営。ど んな素晴らしい理念を持ってい ても、継続できなければ意味は ない。経済的に自立していか ないと」と語った。
設立から 24 年がたち、活動の 成果が表れつつある。「今はわ れわれが植えた木があちこち にあり、木が大きくなってき た。やっと成果が見えるように なり、理解してもらえるような 時がきた」と感じている。赤土 等流出やごみ問題など、まだ まだ環境の課題は多い。「これ までの経験や蓄積を、さまざ まな機会を利用して世の中へ 還元していきたい」と意気込む 下地さん。未来につなげる環境 教育を積極的に続けていく。
(坂本永通子)
添道サガリバナ 夜のお花見
6月24日(土)~7月4日(火)19:30~21:30
添道サガリバナ群生地(宮古島市平良)
200円(サガリバナ協力金)
サガリバナ観賞の夕べ
①国場ガイドツアー 6月29日(木)20:00~21:00
500円 要申し込み 定員:25人
②末吉公園 7月9日(日)・10日(月)19:30~21:00
末吉公園内花見橋近く 無料 申し込み不要
※詳細やその他イベントについてはHPを参照
おきなわ環境クラブ
☎098-833-9493
http://www.npo-oec.com/
写真・村山 望