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[No.2006]

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「表紙」2023年10月19日[No.2006]号

豊富なアイディアを紅型に
紅型研究所 染千花(そめ せん か)
染色家 知花 幸修さん

表現の可能性を広げる

 「紅型本来の魅力は、いろいろな表現ができるポテンシャルの高さ です」―。 紅型研究所 染千花(宜野湾市嘉数)代表の染色家・知花 幸修(ゆきなが)さんは、紅型の古典柄を現代風に再構成したり、スト リートやアニメ・漫画のカルチャーの要素を取り入れた作品を創作した りと、紅型の可能性を広げる数々のユニークな作品を作り出している。

 「最初にオリジナルのデ ザインを作った時に、紅型っ て意外といろいろな表現が できるんだな、と思った」

 子どもの頃から絵を描 くのが好きで、漫画やアニ メが好きだった。進学した 県立芸術大学では、型染 めを学ぶ。大学時代はバン ド活動に力を注ぎ、国内 外でライブを開催。その中 で、ストリートカルチャー を吸収したことが、後に生 み出す独自の紅型作品の バックグラウンドとなった。

 大学卒業後、紅型作家 の母が立ち上げた染千花 で働き始め、紅型教室の 講師を務めつつ、技術を磨 いた。2015年ごろから オリジナル作品の創作を 開始。転機となったのは、 古典紅型のモチーフを幾 何学的文様を交えて現代 的に再構成した作品だ。

 「これを作ったことで、 自分にもこんなデザイン ができるんだ、と」

 その後、ストリートカル チャーや漫画・アニメのモ チーフを取り入れた現代 アート的な紅型作品を手 掛けるようになる。アメリ カと沖縄をテーマに、戦後 の沖縄を象徴する迷彩柄 のヤンバルクイナを描いた り、沖縄のハジチをアメリ カのタトゥー文化のデザイ ン風に描いたり…。また、 紅型はアニメ・漫画とも親 和性が高いと考え、手塚 プロダクション監修の下、 手塚治虫のキャラクター を紅型に仕立てた作品も 制作した。

緻密な技法

 技法の面では、複数の 型紙を用いる手法を追求 した。紅型は、普通、1枚 の型紙で染色するが、複 数の型紙を用いて絵柄を 何層にも重ね合わせるこ とで、より奥行きのあるダ イナミックな絵柄が表現 できるという。

 「紅型という技法だけに とらわれず、型染めという くくりで制作しているの で、自由度の高い作品に なっているのかな、と思い ます」

 図案の制作にはパソコン を活用して絵柄を組み立 て、時には0・1度の単位 で線の角度を調整してい く。彩色についても、さま ざまなパターンを画面上 でシミュレートし、最適な 組み合わせを検討する。一 つの作品を生み出すのに、 数年かかることもあると いう緻密な作業だ。

さらに広がる作品世界

 「今は伝えたいことだけ を表現するようになり、 技法はシンプルになってき ました」

 テーマも、より普遍的な ものへと広げているという。 植物のシリーズもその一つ だ。母の作風に影響を受 けつつ、自身でスケッチを 重ねて図柄を生み出す。

 ヒスイカズラをデザイン した作品は、今年、JTA 全路線のクラスJ座席に 設置するヘッドレストカ バーに採用された。そのほ か、咲元酒造とぎのわんマ リン協会がコラボした泡 盛「青ひとしずくOcea n」では、波とサンゴをモ チーフにラベルデザインを 担当。スポーツシューズブ ランド・オニツカタイガー とのコラボでは、スニー カーを紅型で染色するな ど、その仕事は広がりを 見せている。

 「紅型でできることはた くさんあると思います。ア イデアはよく思いつくの で、それらを形にしていく のが楽しい。頑張ってアウ トプットしていきたい」

 作家活動の傍ら、代表 を務める染千花では、体 験教室や、本格的な技法 が学べる紅型教室の講師 としても活動する。紅型の 制作に興味のある人は、 足を運んでみてはどうだ ろうか。 

(日平勝也)

染色家 知花 幸修さん

問い合わせ
080-6487-8797
(詳しい住所はお問い合わせください)



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染色家 知花 幸修さん
制作に3年をかけた3連1組の紅型タペストリー 「ヒスイカズラ Don't forget me」の前に立つ知花 幸修さん。花の色が映える彩色のバランスはも ちろん、モチーフに沿って自然に視線が楕円状 に大きく流れるよう構成も工夫されている=宜野 湾市嘉数の紅型研究所 染千花
写真・村山 望
染色家 知花 幸修さん
日本の80~90年代の アニメ・漫画をモチー フにした作品「HOKA -Ribbon-」。紅型の技 法を用いてキャンバス に彩色した意欲作。ア メリカン・コミックの人 物を油彩で描いたロ イ・リキテンステインの 絵画「ヘア・リボンの少 女」を意識している
染色家 知花 幸修さん
スポーツシューズブランド・ オニツカタイガーとのコラ ボ。スニーカー100足を限 定で手染めした
染色家 知花 幸修さん
戦後の沖縄とアメリカの関係を象徴する迷彩柄のヤンバル クイナを描いたタペストリーの一部(左)。複数枚の型紙(右 上・右下)を使って何層にも重なった複雑な絵柄を表現
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