沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.2038]

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「表紙」2024年05月30日[No.2038]号

デビュー35周年 後悔のない音楽人生
宮沢和史さん

若手が勝負できる舞台を

 「沖縄をきっかけに旅をしながら音楽を作ってきました」と語る宮沢 和史さん。現在も沖縄民謡の伝承につながる取り組みに力を入れ、 音楽家との交流も大切にしている。35 周年の節目に発表した『~ 35 ~』は、長く付き合うミュージシャンから県内の若手バンドら音楽仲間 と共作して作り上げたアルバムだ。宮沢さんの「今」を聞いた。

 THE BOOMデビュー当時 のヒット曲「星のラブレター」 は岸谷香さん(元プリンセス プリンセス)が、新曲「遠影」 は地元山梨県の後輩・藤巻亮 太さん(レミオロメン)が参加 するなど音楽仲間をゲスト に迎えて制作したアルバム『〜 35 〜』は全7曲。

 「何をやりたいか考え、1曲 ずつ集めた短編集のような作 品です。岸谷香さんのバンド メンバーの2人はウチナーン チュで、親近感とオマージュか ら『星のラブレター』の間奏で 『てぃんさぐぬ花』をハーモニカ で吹きました」とのこと。

 沖縄の未来をテーマに制 作した「Drawing it 」は「演 奏も若い子がいいと思い、 HoRookies(ホルキーズ)にお 願いしました。彼らは沖縄音 楽界の今後を担うバンドです からね」と、沖縄を思う気持 ちがちりばめられている。琉 球古典音楽演奏家の親川遥 さんが参加した「島唄〜琉奏 〜」は特にそうだろう。

 「ブラジル、ロシアはじめ世 界各国で歌った『島唄』が旅 を終えて、琉球に戻ってきた 感覚で録音できました」と語 り、 31 年前に作ったこの曲は 琉球の力を借りてできたと 改めて感じたそうだ。

忘れられない拍手

 「沖縄を知りたくて勉強 し、伝統楽器の三線とロック を融合させてみたいという思 い。永遠に夕凪に包まれた平 和な沖縄を祈り、レクイエムを 歌いたいピュアな気持ちで 作ったのが『島唄』です。歌い 始めたころは批判され、ヤマ トンチュという理由で嫌がら れるのは仕方ない。長く歌い 続けていけば、ウチナーンチュ のみなさんと友達になれるは ず、と楽しみにしていました。 認めてもらえ良い関係になっ たと感じるようになったの は、 20 年くらい過ぎたころで すね」と宮沢さんはほほ笑 む。また、本土と沖縄の音楽 界全体に壁があったとも。

 「触れてはいけないムードが 流れ壁があり、お互いに近付 けませんでした。でも 90 年代 に入り喜納昌吉さんが本土 のレコード会社からアルバムを 出し、ネーネーズがデビューし たのがワールドミュージック ブームに重なり沖縄の音楽が 話題になったというのが僕の 見解です」と語る。「壁を超 えて来い」という喜納昌吉さ んの言葉に励まされ飛び込 んでみると、重かった壁の扉 が徐々に開き、見渡すと同じ 志を持ったミュージシャンが近 くにいて交流が始まったそう だ。面白い時代だったと振り 返る。

 その後東南アジアや南米 など各国の音楽に興味を持 ち、作品に取り入れたりライ ブをしたり、「旅をしながら 音楽を作る」独自のスタイル で活動してきた宮沢さん。

 「 35 年、いろいろありまし た。首のヘルニアでバンドが続 けられなくなって解散し、2 016年にはソロ活動も無理 に。音楽をやめようと思い約 2年離れましたが、東日本大 震災のチャリティーライブで 歌ってほしいと言われて行き ました。でもステージに立つの が怖く歌はボロボロ。そんな 僕だったのにものすごい拍手 をもらったことで、素晴らしい 世界にいたと実感しました」

 

 17 年春ごろから活動を再 開したそうだ。

伝統芸能は宝物

 旅をする音楽人生 で自分しか見ていない ものがたくさんある と語り「みじんも後悔してい ません」と宮沢さんは断言。

 「J-POPの枠にいたら琉球 古典音楽家との交流はなかっ たでしょうし、離島の祭りか ら声が掛かったら行きたい。や りたいことをやっている今、す ごく楽しいです」

 今後は沖縄民謡の若手が 本気で勝負できる舞台を作 り、応援していくそうだ。

 「身近にある伝統芸能は宝 物だと伝えていきたい。1回 音楽をやめた人間なので、感 謝しかないんですよ」

 これからの宮沢さんにも注 目したい。

(饒波 貴子)



宮沢和史さん

宮沢和史・音楽生活35周年
●記念アルバム『~35~』(サンゴー)
恋をする時 with TRICERATOPS、からたち野道 ~35 ver.~ with 坂本美雨、午前0時の近景ほか全7曲収録
CD+DVD(インタビュー映像など)5000円/CD2750円/よしもとミュージックより 発売
●コンサート『 君と探してる楽園』
大阪公演:6月1日(土)開場15:00/開演
16:00/会場:服部緑地野外音楽堂
問い合わせ:キョードーインフォメーション
☎0570-200-888





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宮沢和史さん
1989 年にロックバンド「THE BOOM(ザ・ ブーム)」のメンバーとしてメジャーデ ビュー。今年、音楽生活35 周年を迎え たシンガー・ソングライターの宮沢和 史さん。これまでの出来事を振り返りな がら、4 月にリリースした記念アルバム 『~35~(サンゴー)』について、今後は どのような活動をしていくのかなど思 いを語ってもらった=那覇市・琉球新 報社
写真・村山 望
宮沢和史さん
宮沢和史さん
4月21日開催の「島ぜんぶでおーきな祭 第16回 沖縄国際映画祭」Laugh&Peace LIVEでフィナー レを飾った宮沢さん(提供写真)
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