「島ネタCHOSA班」2011年08月25日[No.1378]号
沖縄の食堂でよくメニューに見る「Aランチ」。店によっておかずの内容とか違うようですが、Aランチについて教えてください。(2011年08月25日掲載)
朝、夜食べても「ランチ」!?
(宜野湾市、女性)
「沖縄には夜も食べられるランチがある」と観光客の間で評判なのがAランチだ。どこの食堂にもその店の名前のついた「ランチ」があるし、「スペシャルランチ」というメニューもある。しかし、どこの食堂でも朝、昼、晩人気なのが「Aランチ」だ。
ニューヨーク仕込み
「Aランチ」。誕生したのはやっぱり、といってもいいのか、コザ(現沖縄市)。2008年に閉店した「ニューヨークレストラン」から生まれた。
「Aランチ」は沖縄市の出身者が昭和30年代にニューヨークで料理の修業をし、帰ってきてレストランを開いたときにメニューの一つにしたという。
沖縄市料理飲食業組合の山城淳組合長は、「考案者は当時の花形職業だったタクシー運転手においしいものを食べさせてあげたいという思いから、いろいろ試行錯誤をしたそうです」とAランチ誕生のきっかけを語る。
一つのお皿にライス、サラダ、ハンバーグ、チキン、カツレツといくつもの「おかず」が入っているのは欲張りで豪華なメニューだ。タクシー運転手さんたちもうれしかったに違いない。
名称を「Aランチ」としたのは、「松・竹・梅」のような格付けの意味がある。店によって「Bランチ」「Cランチ」もあり、お皿の内容も多少異なってくる。ランチにアルファベットを使うあたりに「コザっぽさ」が出ている!?
沖縄市料理飲食業組合では、10月に「Aランチ選手権」を開催する予定。どんな内容のランチが出るのか今から楽しみ。
スープはあっさり
那覇市内の平和通りにある花笠食堂には40年以上も「Aランチ」がメニューにある。店主の山城里子さんは「昔は学生さんが多かった。学生はお金がないので安くてたくさん食べられるものを選ぶ。彼らのお皿にはごはんをたくさん盛った」と当時を振り返り、メニューの経緯を説明した。
調査員もAランチを注文した。お皿のおかずはスパゲティ・ミートソース、ハンバーグ、ポークのフライ(これはかなり厚かった)、チキン、サラダ。ライスは、注文の時に山城さんが「白米、玄米、小豆米、どちらにしますか?」と聞いてきたので玄米にした。スープはあっさりとしたわかめスープ。
最近のAランチは、たくあん、刺身、またスープのかわりにみそ汁とバラエティに富んだ内容が多いのだが、調査員は花笠食堂も昨今の健康ブームもあり「玄米」やあっさりしたスープにしたのかなと思っていたら、なんと40年以上前からライスの種類も選べたという。 また、わかめスープも同じで「おかずのボリュームがあるのであっさりしたスープを」との理由からだそうだ。たくさん食べさせるだけでなく、栄養バランスもちゃんと考えている。Aランチのメニューにはチキン、ハンバーグだけでなく店主の客への愛情も入っているのだ。
調査員が調査している時間(つまりAランチを食べている時間)、店内は地元客はもちろん観光客が入れ替わり立ち替わりで、「Aランチお願いします」の声が聞こえた。
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コザで生まれたAランチは、観光客の間でも話題を呼ぶ「沖縄のメニュー」となった。今は、Aランチよりも豪華な料理が食べられるけど、 ニューヨーク仕込みのお皿に盛られたおかずの一つ一つを見るとやっぱり得した気分になる。