「島ネタCHOSA班」2012年03月08日[No.1406]号
那覇市西町にあるパシフィックホテル沖縄にイタリアのトレビの泉に似たモニュメントがあると聞きましたが、調べてもらえますか?(2012年03月08日掲載)
沖縄にトレビの泉?
(那覇市、40代女子)
ローマにある「トレビの泉」と言えば、世界的にも有名な観光スポット。調査員も10年ほど前に行ったことがあります。後ろを向いてコインを投げればまたいつの日がローマにもどってこられるというお話がありますね。ン、沖縄にも似たところが…。そう、調査員も写真で見たことがあるのです。写真だけ見れば、本家と変わらない感じがしました。でも、なぜ、沖縄に、なんのために…。それでは調査に行ってみましょう。
10分の6の縮小版
「先代の社長(故國吉眞市氏)が欧州旅行に行った際、トレビの泉を見て感銘を受け造ったと聞いています」と話してくれたのは、総務部総務課係長の儀保勝則さんだ。その隣にはヴェルサイユ宮殿をモチーフしたモニュメントもある。さらに、トレビの泉の後ろにある孤を描いたような男女協力センター「てぃるる」の建物があり、それが泉と調和して、「ここ一帯は一緒になっているのですか」と聞く人もいるという。
ホテル内にトレビの泉が建てられたのは、1993年ごろ。大きなプールをつぶしてヨーロピアン広場としてその一角には大理石の彫刻も置いた。現在、その広場は芝生になりホテル滞在客、利用者の散策の場所になっているが、当時も今も、ガーデンウェディングでよく使われるという。
ローマのトレビの泉もパシフィックの泉も「水がキーワードです」。そう説明した同ホテルの支配人國吉眞和氏は続ける。「かつてローマ帝国は11のパイプで周辺国家に水を引いていたそうです。沖縄も断水があり、水の大事さを痛感する。そういう意味もありこのトレビの泉を先代は造りました」。先代は、モニュメントの美しさはもとより、ローマの歴史と沖縄の共通点を見出してこのトレビの泉を建立したのだ。
ちなみに、パシフィックホテル沖縄のトレビの泉は本物の「10分の6」の縮小版だそうだ。本物を少し説明すると、ポーリ宮殿と一体となったデザインで中央にローマ神話の海の神ネプチューンが立ち、左に豊饒の女神ケレース、右に健康の女神サルースが配置されている。ローマの建築家ニッコロ・サルヴィの設計で、1762年に完成したという。
ホテルのトレビの泉のそばに説明書きがあり、沖縄の「ニライカナイ伝説」と合わせて泉について書かれており、これを読むと、先代の「泉」への思いが伝わってくる。
また戻ってくる
トレビの泉で有名な伝説は、泉に後ろ向きに立ってコインを投げれば、いつの日がまたローマにもどって来るという話だ。これも「観光沖縄」の一翼を担うホテル経営者には魅力的なエピソードだった。パシフィックホテル沖縄に滞在した観光客が、このトレビの泉に向かって後ろ向きでコインを投げる。「また、沖縄にもどってこられるように」と。
実際に、この泉ができた当初は、観光客が投げたコインで池の中はいっぱいだったそうだ。今でも時々投げる人がいるらしく、調査の時に泉の中をのぞいてみたが、5円玉、10円玉が落ちていた。また帰ってきた観光客はいただろうか。
ちょっとしたヨーロピアン気分にひたりたいとき、このパシフィックホテル沖縄のトレビの泉に来てみては。