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[No.1433]

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「島ネタCHOSA班」2012年09月13日[No.1433]号

駅で売らなくても駅弁?

 ゆいレールの壺川駅には「駅弁」があると聞きました。早速行ってみたんですが、駅にはなく、徒歩5分程の場所の飲食店の中で販売されていました。これって、駅弁って言うのでしょうか?(沖縄市 K・Sさん 2012年9月13日掲載)

駅で売らなくても駅弁?

 沖縄に駅弁? そうか。沖縄都市モノレールが開通してから、ちゃんと駅もあるし、駅弁があってもおかしくないですね。しかし、私も駅の構内で弁当を販売しているのを見たことがありません。では早速、調べてみましょう。

きっかけは駅弁大会

 ここだ。「海人がつくる壺川駅前弁当」と大きな看板。店名は、「壺川直売店さかな」。魚の直売店のようにも見えますね。ちょっと入ってみましょう。

 正午、そろそろおなかがすいてくる時間です。しかし、店内を見渡すと、駅弁は見あたらない。今日は置いていないのでしょうか。 「すみませーん。えっと、今日は駅弁ないんですか?」

 お店のスタッフが「ありますよー」と笑顔で答えた。その後、厨房に向かって「駅弁一つ〜」と伝えます。どうやら、注文を受けてから駅弁を作るようです。

 詳細を知りたくて、那覇市沿岸漁業「壺川直売店さかな」支部長を務める木嶋清さんに話を聞きました。

 木嶋さん、なぜここの駅弁は、駅に置いていないのでしょうか? 普通、駅弁というのは、駅の中で販売するものだと思うのですが。

 「はい。うちの駅弁は、海の素材を使った弁当なので、太陽の下で長いこと置いておくと、鮮度が失われてしまいます。それに、この駅弁は、そもそも東京で行われた駅弁大会に向けて作ったものなんですよ」

 え? モノレール駅で売るために作ったのではないのですか?

 「あはは。実はそうなんです。壺川駅弁は、モノレールが開業する前に既に販売していました。きっかけは、2003年1月に、東京で『元祖有名駅弁と全国うまいもん大会』があったんです。ありがたいことに、関係者から声をかけていただき、出場しました。すると、初出場でベスト8に入ったんですよ。せっかくなので、沖縄に戻ったら販売しようと思ったんです」

 へ〜。てっきり、モノレールの開通に合わせて作ったものだと思っていました。その前から販売していたなら、場所が駅ではないことも納得できます。

 モノレールが開業したのは2003年8月。販売するにはタイミングもバッチリだと思ったんじゃないですか?

 「そうですね。壺川駅ができた当初は、駅の中に販売店もあったんですよ。僕たちの駅弁も、一時期置かせてもらっていました」

 そうなんですか。偶然にもお店の場所は駅と近いですよね。なんだか縁を感じます。

暑さで駅から撤退

 では、なぜ駅構内での販売をやめたのですか?

 「やっぱり、沖縄って暑いじゃないですか。特に本土と比べると気温もそうですが、地下でもなく太陽の光の入りやすいところに駅があるので、余計に食べ物のもちが悪かったようなんです。菓子パンでさえ、一日もたなかったみたいです。僕たちもそぼろ弁当にしてみたりしたのですが、それでもなかなか…ね。ですので、すぐに販売店もなくなり、ここで売るようになったんです」

 確かに、夏の暑い時期に、一日中弁当を置いておくことはできないかもしれませんね。

 そうこうしているうちに、駅弁ができたようです。中身は、おぉ〜! これは凄い! 豪華な海鮮丼のようです。海ブドウもたっぷり。モズクや魚の天プラもあり、沖縄らしさが光っています。メーンの魚は、何ですか?

 「イラブチャーです。日によって、一番いいものを出しています。値段は800円と、普通の弁当よりはちょっと高いけど、新鮮でとっても美味しいですよ」

 食べてみると、本当に美味しい。主に観光客の人が買っていくことが多いのですか?

 「う〜ん。そうかもしれないですね。たまに、電車マニアのような人が訪れて、『駅弁だけ食べに来ました』なんて言われたこともありました」

 そんなこともあるんですね。今後、空港や他の場所での販売も考えているのですか?

 「いえ。この駅弁は、『壺川駅前弁当』ですから。また壺川駅に置かせていただけることを願っていますよ」

 近い将来、沖縄の駅でたくさんの弁当が販売される日がくるといいですね。調査員も現実になるように願うのでした。


駅で売らなくても駅弁?
木嶋清さん
駅で売らなくても駅弁?
ふたが閉まらないほどのボリュームの「海人がつくる壺川駅前弁当」
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