沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1446]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「島ネタCHOSA班」2012年12月06日[No.1446]号

火山ないのに温泉が湧く?

 よく県外の温泉に行くのですが、県内にも何カ所か天然温泉施設がありますね。沖縄は火山がないのに、なぜ温泉が湧くのですか?(那覇市 T・Kさん)

火山ないのに温泉が湧く?

 沖縄も冬らしくなってきましたね。寒い日には温かいお湯に漬かってほっこりするのが極楽至極な調査員ですが、県内の温泉施設もよく利用していますよ。確かに火山はないけど温泉はある!? まずは琉球列島の成り立ちについて調べてみました。
 神谷厚昭著の「琉球列島物語」(ボーダーインク)によると、琉球列島は520〜300万年前まで大陸とつながっていました。その間、大東島の基盤や読谷村トーナル岩などで火山活動が始まってトカラ海峡ができ、島尻海が最大となり琉球列島地域が大陸から分離。久米島付近で火山活動が盛んになったそうです。
 そんな地形の変遷を見ると、島尻海域沿いに火山帯があったということになります。深く掘れば閉じこめられた温泉が湧き出るということなのでしょうか?? トレジャーハンターの胸の高まりを覚える調査員。実際に温泉を掘り当てた医療法人タピックの理事長で、温泉療法医学博士の宮里好一さんに話を聞いてみました。

どこ掘っても出る?

 南城市佐敷のユインチホテル内に併設される「猿人の湯」は紛れもなく天然温泉。宮里さんが厚生年金休暇センターを継承した翌年には「ユインチ鉱山」を発掘したそうです。

 1年足らずで温泉を掘り当てるとは超人的ですね。「リハビリ専門の医者として温泉保養地の施設を沖縄に作りたいと思ったのが始りです。県の勧めもあり、また、過去の論文やデータからも天然ガスの鉱脈が幅広くありました。『どこを掘っても出る』と9割は確信を持っていました」

 ひゃぁ〜スケールがダイナミックですねぇ。「いえいえ、実は1960年代に米軍と日本とで調査が行われ、予測もあります。1970年には天然ガスを採掘利用しようとした沖縄電力の協力で県の第三セクターとして南部ガス田が作られました。しかし、当時は石油が安価だったため数年で廃業したそうですよ」

 また、知念村では井戸を掘ったら深さ10m辺りでガスが出て火柱が上がった事件もあったそうですね。天然ガスに付随して温泉も湧いたということですか??? 「はい、ユインチ鉱山は約2000mの深さを掘っているのですが、天然ガスと同時に温泉が湧き出しています」。なんと、5000万年〜500万年前の3つの年代にまたがって異なる時代の地質から湧き出した太古の海水が地上に上がるまで自然にブレンドされた日本でも珍しい温泉だそうです。

 500万年前は猿人が愛情表現の一環で、食べ物を両手に抱えて与えようとした行動から、二本足歩行をした最古の人類、アルディピテクス・ラミダスとして人間に進化したといわれる記念すべき年代! そこで、「猿人の湯」と名付けたそうです。

沖縄は資源の宝庫!

 「太古の海水」ということは、猿人時代の海水の化石なのですか? 「海水とは異なる性質があるんですよ」。この黄金湯は、海水の8割は太古の海の成分が凝縮された塩化泉です。温度は58度もあり、鉄分、ホウ素(殺菌作用)、ヨウ素などを多く含んだ豊かな温泉です。保湿成であるメタケイ酸が含まれているのが特徴的で、美肌湯といってもよいそうです。さらに温泉とともに天然ガスなどのエネルギー資源、ヨウ素の産出量も多く、医薬品の原料としても提供しているそうです。

 画期的なことに、この温泉の熱を利用した熱交換システムを作り、全館の光熱費が10分の1になったそうです。

 沖縄は資源的に見ても宝の島のようですね。「沖縄の地層から見ると中部地域あたりまでは掘ったら天然ガスや温泉がでると思いますよ」と宮里さん。

 太古琉球列島ができあがっていく行程で火山により温められた海水の温泉。私たちはそんなお湯に漬かっているのですね! 天然ガスも温泉も地球の恵みですからね。この恩恵にあやかり、つくづくゆがふ島だなと、ありがたく思う調査員でした。


火山ないのに温泉が湧く?
宮里好一さん
火山ないのに温泉が湧く?
熱い太古の海が湧き出した黄金の湯=南城市佐敷のユインチホテル内「猿人の湯」
>> [No.1446]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>