「島ネタCHOSA班」2012年12月06日[No.1445]号
私は県外出身ですが、県内に移住する前、クリスマスの時期になると「サンタのミカン」のようなサンタクロースにちなんだ名前のミカンを県内の友人から送ってもらいました。とてもおいしかったのですが、移住後、いくら探しても見つかりません。もう一度、食べたいので探してもらえませんか?(那覇市 Yさん)
サンタのミカンを追え!
ジングルベ〜ル、ジングルベ〜ル、すっずがぁなるぅ〜っと。皆さん。サンタクロースへの願い事は決まりましたか? 私は、かっちょいい自転車を…え? そんなことはどうでもいいから調査を? もう〜せっかちなんだからぁ。ミカン、それもサンタクロースにちなんだ名前の幻のミカンを探せと。了解いたしました。でも、そんなのあったかなぁ?
名付け親登場!
手始めに友人たちに聞いてみると「サンタのミカン? さぁ?」とか「送った人が勝手につけたんじゃない?」など、まったく役立たずな回答ばかり。えぇい、これじゃあ、らちが明かないではないか。もうよろしい。専門家に聞いてみるから! と役立たずたちを尻目に、近所の八百屋さんへ。
「う〜ん。あったような気もするけどねぇ。県内でミカンといえば本部町の伊豆味が有名だから、そっちに聞いてみればいいよ」 なるほど! その手がありました。下調べをしてみると、「伊豆味ミカン生産組合」なるものがあることが判明! さっそく突撃っ…の前に、まずは電話を。
対応してくれたのは組合長の饒平名知春さん。
「サンタのミカンね。はいはい、ありましたよ。正確には『サンタ紅』と言いまして」
へっへっへYさん。やりました、発見です。名前は「サンタ紅」ですって! では安心して、突撃だ!!
やって来たのは本部町伊豆味の同生産組合。出迎えてくれたのは組合長の饒平名さんと、あら?もうお一人いらっしゃる。饒平名さん、こちらの方は?
「ミカン農家の伊佐常信さんです。実は、この方『サンタ紅』の名付け親のお一人なんですよ」
ええ! それは失礼いたしました。名付け親に会えるなんて感激です! さっそくなんですが、どんなミカンなんですか?
「この『サンタ紅』は本来、『大紅』という種類のミカンなんです。50年ほど前に、名護農業試験場伊豆味支所で栽培されていた苗木を分けてもらってこの地域で栽培したのが始りなんですよ」
ほぇ〜、「大紅」ですか。どんな特徴があるんでょう?
「糖度が12〜3度あるんですが、酸味とのバランスがちょうど良いので甘過ぎず、ミカンらしいしっかりとした味わいです。また、味だけでなく見た目も非常に良くてですね。この見た目が名前の由来でもあるんです」
おお! いよいよ、由来ですね!
「まず収穫時期が12月ごろなんですよ。それに加えて、真っ赤に色づくんですね。それで、ちょうどクリスマスシーズンだからということで14〜5年前に『サンタ紅』と命名して地域の名産品として売り出したんです。県外への贈答にも良いと反響も大きかったですよ」
ほほ〜。クリスマスシーズンに採れる真っ赤なミカンだからってことですか。ナイスアイデアですね! ところで、依頼者はどんなに探しても見つからなかったそうなんですが?
「そうでしょう。今はありませんからね(笑)」
ええ!! もうないんですか?やっぱり幻なんですね…。
「いえいえ。名前を変えたんです」
なぜです!? 反響がすごかったんですよね?
一足遅くて?
「実は、それが原因でしてね。反響がすごく良かったもんですから、商標登録したほうが良いだろうと申請したんです。ところが、すでにアメリカ産オレンジでサンタクロースにまつわる名前が登録されていて、残念ながらこの名前は使用できなくなったんです」
ええ〜、残念ですね。せっかく良い名前だったのに。でも、今でも栽培はされているんですよね? 饒平名さん?
「もちろん地域全体で今も栽培しています。10年ほど前に『いずみ紅』と名前は変えていますけど味は変わりませんよ。約30種類のミカンを栽培する『ミカンの里』の自慢の一品です!」
Yさん。お探しのミカンは、現在「いずみ紅」となっていますが、伊豆味を代表するミカンとして今でも栽培されています。今年は台風の影響で数が少ないそうなのでお早めにどうぞ!