「島ネタCHOSA班」2013年01月31日[No.1452]号
以前、やんばるには、日本にいる鳥の半分が生息していると友人から聞きました。本当でしょうか?(宜野湾市 Sさん)
国土の0・1%に半数の鳥が?
ほうほう、半分が生息している…半分!? いくらやんばるが自然豊かといえども、それは言い過ぎじゃないでしょうか? でっかいど〜じゃなかった、北海道なら分かる気もするんですが。まぁ、私が疑っていても疑問は解決しませんし、賢い人に聞こ〜ぉっと。
生息ではなく確認
賢い人を捜し求めてやってきたのは、国頭村比地にある環境省やんばる野生動物保護センターのウフギー自然館。のっけから疑ってかかっている調査員をさわやかな笑顔で迎えてくれたのは、自然保護官の福田真さん。
さっそくですが、福田さん。半分いるなんて大げさですよね?
「いえいえ、確かに日本に生息している野鳥類の半数がここやんばるにいます。ただ、生息ではなく『確認できる』と言ったほうが正確ですね」
ん? 確認? なんかアヤシイ。福田さん、話をややこしくしてごまかそうとしてるでしょ!
「とんでもない。なぜかといいますと、野鳥類には大きく分けて、その地域でずっと暮らす留鳥という種と、季節によって生活する地域を変える渡り鳥の2種類がいるんですね。もちろんやんばるにも両方がいるわけで、そうすると渡り鳥の方は、季節によってはやんばるにいないということになるんです。そこで、年間を通して全体の種の半数が『確認できる』ということになるんです」
あ〜、なるほど、たしかにサシバなんかは秋冬にしかいないですもんね。
「さらにアピールポイントを補足しますと、やんばるの面積は、国土全体のわずか0・1%にしか過ぎないんですよ」
たった0・1%ですかぁ。そんなに狭いところに何種類ぐらいいるんですか?
「まず、日本全体で確認されている鳥はおよそ500種います。つまり、やんばるは約250種ということになりますね」
大切な県民の宝物
そもそも、なぜ半数も?
「理由は2つあります。一つ目はここが生物が住みよい環境である森林だということです」
森林? そりゃ森が住みやすいってのはわかりますけど。
「ええ。『住みやすい』それが重要なんです(笑)。やんばるは亜熱帯地域である北緯27度付近に位置しています。世界的に見て同じ亜熱帯地域はアフリカやインドといった砂漠や乾燥した草原なんですよ。やんばるのような亜熱帯の森は、実は世界的に希少で、ここにしかないものなんです」
なるほど、希少な楽園だからというわけですね。でもなぜここだけに森が?
「降水量の違いですね。たとえばアフリカでは、わずか9㎖しか降りません。ところがやんばるは約250倍、2400㎖も降るんです」
250倍ですか!? スゴイですね。では2つ目は?
「鳥の歴史です。もともと大陸と陸続きだった琉球列島は20万年前に現在に近い形で切り離され、島々で形成された地域になったんです。島になった部分に生息していた生物は、海によって大陸や他の島とは隔てられます。つまり、外からの影響にさらされない、わかりやすく言えば捕食される機会が少なくなります。また、限られた地域に順応するため独自の進化や発展を遂げていったことで多くの固有種や留鳥が生まれていったんですよ」
ほ〜、自分たちだけのパラダイスを作れたってわけですね。 「ええ。固有種の代名詞ともいえるヤンバルクイナが分かりやすいです。本来、鳥類にとって『飛べる』というのは他生物に比べ有利なはずなんです。ところが、飛ばなくてもエサはたくさん食べられるし逃げる必要もない。だったら飛ばなくても良いじゃない? ということから現在の姿になっているんです」
確かに。飛ぶってかなりエネルギーがいりそうですしね(笑)
「ヤンバルクイナもそうですが、トゲネズミやノグチゲラなどたくさん貴重な固有種が生息しています。また、カエルやイモリ、ヘビなどの両生類やハ虫類を合わせると鳥類と同じく日本に生息する種の半数がいるんです。やんばるの森林はそれ自体が日本にとって希少で大切な宝物なんですよ。また、県民にとっても、世界に誇れる財産なんだと知ってもらえたらうれしいですね」
大切な宝物。確かにその通りです。県民の財産として世界に胸をはって誇るためにも、やんばるを守っていくことが私たち県民の義務なのだと心に強く刻み込んだ調査員でした。