「島ネタCHOSA班」2013年04月18日[No.1463]号
先日、ママ友たちと「お話大会」の話題になりました。転勤族の方いわく、このような大会は沖縄に来るまで聞いたことがなかったとのこと。本当だとしたらどんな意図で始まったんですか?
(中城村 Nさん)
「お話大会」沖縄だけ?
「お話大会」、懐かしいですね。クラス代表になるために一生懸命お話しを覚えて身ぶり手ぶり工夫しませんでした? と隣の同僚(東京都出身)に振ると、「聞いたことないなぁ」との答え。結構当時は力入ってたんだけど…。 調べてみると、運営は各学校・地区のPTA連合会が担当していることが判明。早速、県PTA連合会の事務局長・古堅宗男さん(63)を訪ねました。
「正式名称は、『県小中学校童話・お話・意見発表大会』です」。小学校低学年(童話)は民話やおとぎ話などを覚え、小学校高学年(お話)は物語の感想や自分で作った話を語り、中学生(意見発表)は体験談や社会で起こっていることを題材に発表するのが課題です。
発案者はまさかの…
バラエティー豊かな話が聞けるこの大会、沖縄だけなんですか?「はい。沖縄県だけの取り組みですよ」。1つ目のアンサーが出て、ホッとする調査員。でもなぜ沖縄だけ?
「出発点を話しましょうね。始まったのは、戦後間もない1949(昭和24)年で、ことしは64回大会になります」と古堅さん。「当時の沖縄の子どもたちは方言ばかり使って暮らしていたので、標準語があまり使えませんでした。そのために人前で話すことが苦手だったんですね。その状況を憂えた屋良先生が…」
えっ? 屋良先生とはまさか…?
「当時、県教職員会会長で初代公選行政主席(県知事)の故・屋良朝苗先生が設立したんですよ」
沖縄の子どもたちに語彙(ごい)力や発表力をつけてほしい。表現力を高めてほしい。そして世界へ羽ばたいてほしい—。教育に心を砕いた一人の教師の熱意が、今日まで受け継がれているんですね。小学生のころ、「ちょっと難儀ー」と思っていた調査員。屋良先生すみません。
「ただね、物資のない時代でしょう。学校の予算だけでは賞を出すことができなかったんですよ。そこで当時の学校後援会(PTAの前進)が頼まれて援助しました。その後、30年ほど前にPTA連合会も主催者となり、運営を担うようになったんですよ」
学校と父母が子どもたちの将来のためにタッグを組む、大事な行事でもあるんですね。
先入観持たずに審査
審査は、学級代表↓学年代表↓学校代表↓市町村代表↓北部・中頭など地区代表(全6地区)↓県大会と進みます。沖縄独自の取り組みのため九州大会や全国大会はなく、最終審査は県大会です。
では、どのように評価して代表を選ぶのでしょうか。長年教育現場で大会に携わり、現在は審査員の指導にあたる沖縄市民憲章推進協議会会長の新屋孝一さん(72)に教えてもらいました。
「芝居や漫談ではないので、あまりオーバーアクションだと減点になる場合がありますね。それと、審査する父母や先生には、4つの審査規準を頭に入れてくださいと話します」。①きょうだいが代表経験者②親の職業(アナウンサーや教員)③事前に配られる発表原稿の完成度④地区の順位—。なるほど、この4つを重視すれば良いんですね? 「いや、逆です。この4つは判断基準にしないでくださいと言います。特に最後の『順位』。子どもは1週間で変わります。子どもの可能性ってすごいんですよ」
代表経験がなく今後も可能性はない調査員だが、聞いてみた。では、「代表になる子」は特徴があるんですか? 「実体験が豊富な子です。物語を自分のものにして表現するのも上手ですし、創作にしても着眼点が面白い。肌で感じた経験があるからこそ、聞く人にストレートに伝わるんです」。なるほどと相づちを打つ調査員に、新屋さんは「もう一つ」と付け加えます。「ただ単に、代表になるための競争ではないんです。聞く方の子どもたちへの効果も大きいですよ。大人の評価だけではなく、聞いている子どもたちに伝わっているかも重要なんですよ」
終戦から4年後に沖縄独自に始まった同大会。音楽やスポーツなど、全国区で活躍する今のウチナーンチュを見たら、設立した屋良先生もさぞ喜ばれるでしょうね。これからも続いてほしいと切に願う調査員でした。