「島ネタCHOSA班」2013年06月20日[No.1472]号
「ゆし豆腐」はあんなに中身がパンパンに詰められていて、結び目がキツく縛られているのはなぜなのでしょう。私は不器用なので、調理時にゆし豆腐の汁をこぼしてしまうこともしばしば。良い開け方はないのでしょうか?
(那覇市 Kさん)
ゆし豆腐の開け方は?
確かに開け方は難しいですよね。鍋の中で包丁やハサミを使って開けることが多いようですが、それでも汁がこぼれることもあると思います。汁物などに少量加えたい場合などは、特に難しそうですね。
何かいい方法はないのだろうか。気になるゆし豆腐の謎について調査していきます。
安全性と早さ追求
まずやって来たのは、那覇市安謝にある創業40年の豆腐工場「ひろし屋食品株式会社」。会長の糸数昌治さんと息子で工場長の弘章さんに、ゆし豆腐の開け方について教えてもらいました。
「うちのゆし豆腐は創業当初から袋に入れて販売していました。結び目を手で縛るやり方は現在も変わっていません。『開けにくい』というお客さまからの声もあります。一時期、改善しようといろいろと試行錯誤をしました。輪ゴムや針金で縛って開けやすくすることも考えたのですが、異物混入の可能性をゼロにすることと、できたてを早く小売店に届けるためには、やはり人の手で縛ることが一番安全で早かったんです」と糸数さん。
なるほど。スーパーなどで並ぶゆし豆腐はいつもできたて熱々ですよね。安全性と早さを追求した同食品ならではの思いやりなのですね。
でも例えば、結び目と中身のスペースをもう少しあけてみるのはどうでしょうか? 中身がギリギリまで詰まっているのは理由があるのですか?
「食べ物なので基本的には空気に触れないようにするためでもありますが、結び目とゆし豆腐の間にスペースをあけてしまうと、小売店まで移動する際に揺れてゆし豆腐の形が崩れてしまうんです。汁も含めた中身をたっぷり入れることで、多少の振動でも中身の変形を軽減できます」と弘章さんは説明します。
ゆし豆腐同士がぶつかり合って形を崩さないための工夫だったということなんですね。う〜ん、ここまで考えられていたとは。
しかしこうなると、ゆし豆腐をスムーズに開けるのは不可能なのか? しょんぼりする調査員に、弘章さんは笑顔で答えました。
「実は、僕ら工場の者で考案した開け方があるんですよ。簡単で何も汚さず、少量使う際にも最適ですよ」
えぇ! ぜひ教えていただけますでしょうか。
「まずハサミで結び目の真上を切ります。ポイントは結び目も少し切ることです。すると、結び目が緩み女性の力でも開けやすくなります」
…あ、本当だ。女性調査員の私でも簡単に開けられました。もちろん多少の力は必要ですが、これだと汁をこぼす危険はほとんどありません。こんな開け方があるなんて全然気が付きませんでした。
今後のゆし豆腐の調理がより楽しくなりそうです。
女性の目線で考案
さて、ひろし屋食品の弘章さんから紹介いただき、今度は西原町池田にある「有限会社 池田食品」に来ました。創業30年の同社ではゆし豆腐を輪ゴムで縛って販売しているようです。3代目代表取締役の瑞慶覧宏至(ひろし)さんにお話を聞いてみましょう。
創業当初から輪ゴムを使用していたのでしょうか?
「いえ、最初は手で縛っていました。輪ゴムに変わったのは約10年前で、2代目からになります。調理する人の多くは女性なので、あまり力を入れずに引っ張るだけで開けられる輪ゴムにしました」
お〜! これはビックリ。本当に輪ゴムを引っ張るだけで開きました。汁が飛び散る心配もなく、安心ですね。
「お客さまからも喜ばれています」とほほえむ瑞慶覧さん。
それぞれの開け方を学んだ調査員。客への思いやりや愛情にあふれた「工夫」を知ることができました。汁だけに…。(←パンチ)
母や友人、みんなに教えてあげたくなりました。