「島ネタCHOSA班」2013年6月27日[No.1473]号
県出身の若手ロックバンド「シベリアンスカンク」が大好きです。彼らが閉校になった学校の校歌をアレンジしたそうです。どんな経緯なのか調べてください。
(那覇市 20代 Yさん)
閉校の校歌がロックに?
校歌とロック? すぐには結びつきませんね。早速、ファンから「シベスカ」と呼ばれる人気バンドに会いに沖縄市のスタジオに向いました。
シベスカが応援
出迎えてくれた美男4人組。インディーズでミニアルバムを含めて3枚、メジャーで2枚のアルバムをリリースし、この日は沖縄でのワンマンライブを控えて全国ツアーから戻ったばかり。もともと豊見城市の2つの中学校の同級生として知り合いバンドを結成した4人。ロックと聞いて激しくとがった若者かと思いきや、穏やかで礼儀正しい雰囲気です。
「僕たち、以前から学校と学生にこだわった取り組みをしてきたんです」とリーダーでギターのジュンタさん(19)。「スクールバンドとしてネクタイにもこだわってます」とドラムのユウイチさん(19)が和ませます。全国区になった今でも、バンド活動に悩む全国の高校生バンドを募り演奏を競い合う「シベスカ軽音部」や、現役高校生のアイデアを曲作りに反映する「スカン部」を定期的に開いているそう。
そして、校歌をアレンジして動画配信する取り組みが「スクールロックプロジェクト」です。第一弾となったのは、2012年3月に閉校したうるま市立伊計小中学校。109年の歴史に幕を下ろした同校を、メンバーは全国ツアー中に知りました。
「出身でもない僕たちがアレンジしていいのか、迷う部分もありました。でも、心を込めて歌えば気持ちは伝わると信じてお願いしたんです」と、ボーカルのチカラさん(19)。閉校間際に全校生徒・教職員らが録音した元歌のCDと歌詞を伊計自治会から取り寄せ、全国ツアーと並行して自分たちの音楽と重ね合わせました。「島の人たちが親しんだメロディーは極力そのままに、今後も歌ってもらえるようテンポにも気を配りました」と、ベースのマーサーさん(20)。完成した曲を島の人たちと一緒に歌いたい—メンバーの思いから、学校でのライブが実現しました。
学校は島の中心
伊計自治会長の玉城正則さんは、「島には約300人が住んでいますが、シベスカを知らない人が多いし、当日集まってくれるか不安でした。それで島内放送でシベスカの曲をかけたり、ポスターを張ったりして呼び掛けたんです」と話します。
そしてことし4月29日。人けの途絶えた伊計小中学校の中庭に、島のお年寄りや親子連れなど約80人、抽選で選ばれたシベスカファン20人が集まりました。「体が不自由なおばあちゃんが椅子に座って最前列でこぶしを振り上げているのにはびっくりしました」と玉城さん。シベスカメンバーも反応に驚いたといいます。「みんなと一緒に楽しもうって気持ちで校歌を含めて5曲演奏したんですけど、すっごいノリノリでうれしかった」とジュンタさん。
「学校はね、島の中心。そこにシベスカが新しい風を吹かせてくれた」とライブを振り返る玉城さん。シベスカの公式ホームページで配信されている当日のプロモーションビデオには、アップテンポな演奏に合わせて体を左右に揺らしながら口ずさむ男性や手拍子を打つお年寄りが映っています。
演奏が終わり、観客にお礼を言うメンバーとがっちりと握手を交わす島の人たちは満面の笑み。シベスカを介し、校歌でつながった絆がつながり続けることを願う調査員なのでした。