「島ネタCHOSA班」2013年11月07日[No.1492]号
那覇市の辻のあたりに、昔から信仰を集める井戸があると聞きました。知る人ぞ知るパワースポットとのことですので、詳しく調べてください!
(那覇市 Fさん)
井戸はパワースポット!?
知る人ぞ知るパワースポット…と聞き、ぜひ調べたいと思う一方、井戸というと何だか怖いような気もする調査員。ここは、沖縄の怪異現象の専門家に相談すべき!?
というわけで、沖縄の怪談といえば、やはりこの人。琉球新報小中学生新聞「りゅうPON!」の連載「琉球妖怪大図鑑」でもおなじみ、小原猛さんを訪ねることにしました。
辻の御嶽そばに残る
小原さんに連絡をとり、この井戸について聞いたところ、よく知っているとの返事。というのも、質問のあった井戸に近い若狭公民館のスタッフとしても働く小原さんのもとには、月に一度はこの井戸を探して訪ねてくる人がいるそうです。
井戸があるのは、若狭の隣町の辻にある「唐守森(とぅーまむい)」そば。現在は個人の敷地内となっているため、電話やメールではなく、若狭公民館に足を運んだ人にだけ詳しい場所を伝えているとのこと。
早速、同公民館で場所を聞き、実際に訪れてみました。
井戸の目印となる「唐守森」は、うっそうと木が茂り、昼でも何やらただならぬ雰囲気。近くを歩いていた人にも、「ここは何があるの? ちょっと一人では入りたくない感じだねぇ」と言われました。
実際、唐守森は、辻の開祖として知られるウミナイビをまつった御嶽がある神聖な場所。同時に、武術の達人・鄭大夫(ていたいふ)が牛の妖怪・牛マジムンと戦った場所という伝説もあるそうです。 質問の井戸は、そんな唐守森の隣に、香炉と小さな祠(ほこら)とともに残されていました。
汚して怪奇現象も?
井戸にあいさつをすませた後、小原さんにその由来を聞きました。
「その昔、若狭には、いくつも井戸があったのですが、いずれも塩水が出ていたようです。ところが、いくつかの井戸では、真水がわき出ていたと伝えられています。
詳しいことは分からないのですが、この井戸も真水が出る井戸の一つとして崇拝を集めていたのかもしれませんね」と小原さん。
「水がとても貴重だった昔の沖縄では、井戸は大切なライフラインでしたから、御嶽として崇拝されるのは当然のこと。実際、井戸にはよく、水神様、龍神様がまつられています」
日々の暮らしを支える水神様として崇拝されてきた井戸。しかし同時に、人々に恐れを抱かせる存在でもあった、と小原さんは語ります。
「沖縄では、『井戸をのぞきこむとマブイを取られる』とか、『くしを落とすと呪(のろ)われる』とか、井戸についてのさまざまな言い伝えがあります。井戸を壊すと火事やよくないことが起こる、といった話は今でもよく耳にしますね」
井戸は恵み深いけれども、怒らせてしまったら大変、というわけですね。
「現在でも、工事の最中に埋まっていた井戸が出てくることがあるようですが、そうした場合、工事関係者が井戸を壊すのを怖がって、工事がストップしてしまうそうです。
井戸を汚してしまったために、怪奇現象に悩まされるようになった、という話も聞きます。井戸をきれいに掃除したらピタッと治まったそうですが…」
うーん、そう聞くと怖くなってしまいました。ここは大丈夫でしょうか?
「沖縄の井戸には、カーカンローという子どもの妖怪がいるという話もあったりして、中にはあまりよくない井戸があるとうわさされるのも事実です。でも、私の知る限り、この井戸のことを悪くいう人はいませんよ」
水道が普及し、井戸があまり使われなくなった今でも、沖縄の人々の心には、井戸を恐れ、敬う心が脈々と受け継がれていることを実感した調査員。敬意を払ってパワーを分けてもらいました。
皆さんも、井戸を訪れる際には、くれぐれも敬う気持ちを忘れずに、パワーを充電してくださいね。