「島ネタCHOSA班」2013年11月14日[No.1493]号
やんばるに、スパイシーで甘い香りの葉が付く木があると聞きました。どんな植物なんですか?
(中城村 まるまるさん)
国頭にスパイシーな葉?
香るのは花じゃなくて葉ですか?しかも、スパイシー? これは現場に出掛けるしかないでしょう。向かったのは国頭村辺土名の国頭村森林公園。対応した国頭村森林組合の比嘉洋子さんは同林業研究会のメンバーです。
「はい、ありますよ。ウチナーグチで『カラギ』と呼ばれています」。カラギ? 名前からして辛そう。「ニッケイです。その中でシナモンをご存じでしょう? あのスパイスのもとになるんですよ」
聞くと、カラギは古くから地域の人たちが根や皮を酒に漬けて楽しんでいたそう。芳醇な香りでワインよりおいしいといわれています。すてき!
ところで現在組合員はどのくらいいるんですか? 「約350人ですが、林業に携わっているのは3分の1ほどですね」。かつては村人口の3分の1が山に関わっていたそうですが、時代の変化には逆らえなかったんですね。
根幹弱く試行錯誤
「その背景があったからこそ、カラギに着目したんです。カラギの自生木は、国内では沖縄が北限です。さらにはポリフェノールなどの有用成分が多く含まれています」
比嘉さんを含むメンバー4人でカラギの研究が始まったのが5年前。自生木を苗として成長に合わせて定植。新たな林業を模索する中で、白羽の矢が立ったのがカラギだったわけですね。
「ただ、生育が早い分、根幹が弱いんです。台風は特に怖くて、風と塩害に耐えられず枯れてしまいます。根と皮に傷をつけても枯れてしまう」
比嘉さんたちは、皮や根でなく葉に絞って商品化を模索しました。「カフェインを含まないので、子どもからお年寄りまで楽しんでいただけるようお茶にしようと考えました」
お茶といえば新茶ですね? 「いいえ、新芽は香りも味もしなかったですね。成長して堅くなった葉が適していました」
想像超える人気
行政にも働き掛け、茶葉の袋詰めに続き、ティーバッグを商品化。地元の店とコラボして「クニガミドーナツ」のシナモン味も世に送り出しました。2011年4月には、銀座わしたショップで100袋のお茶を携えて対面販売にこぎつけます。
「試飲会をしたところ、想像を超える盛況で。あっという間に売り切れてしまったんです」。後日、「どうにか入荷できないか」と懇願されたといいますが、商品化が追いつきません。
「今一番の課題は安定供給です。ある程度成長した葉でないとお茶にならず、成長が早いので高い場所に葉が残ってしまい、収穫が難しくなります」
実際にほ場を案内してもらいました。小さなポットに入った苗木から地植えされて大きく育った木までが並んでいます。葉をちぎってもむとシナモンの香りが。「世話は難しくありません。水やりもほとんどしませんし、無農薬です」。国産・無農薬、これは注目される予感。
現在、唯一商品を置いている国頭村奥間のゆいゆい国頭には、やんばる産を中心に常時20種以上のお茶が並びます。
売れ行きはどうですか? 「約2年前から商品を陳列しています。今、うちで扱うお茶の中で一番人気ですよ。口コミで評判が広がっているようです。特に県外からの観光客がまとめ買いしていくんですよ」と同店の店員さん。
比嘉さんが入れてくれた冷たいカラギ茶をいただきました。味も香りもほんのり甘く、後には爽やかな風味が残ります。クニガミドーナツは無添加にこだわったやさしい味。比嘉さんがお土産に持たせてくれた自家製の泡盛漬けは、フッと鼻に抜ける芳醇な香り。これはチビチビ楽しみますか。
古くから山と共にあった国頭の人たちの生活。その中から生まれた新しい特産物。ほ場を見守るようにそびえる緑色のやんばるの山を見ていると、なんだか勇気がわいてきたのでした。