「島ネタCHOSA班」2013年12月05日[No.1496]号
クリスマスといえば真っ赤なポインセチアが店頭に並びますね。県外から来た友人が、庭で大きくなっているポインセチアを見て驚いていたのですが、沖縄だけの現象なんでしょうか?
(那覇市 島ゾーリさん)
ポインセチアは庭木?
そういえば、年数を経た民家で見掛けたことがあるような…。今のシーズンは赤く色づくので目立ちますが、普段は気に留めていませんでした。
調べているうちに、立派な株があるとの情報が。訪ねたのは、那覇市泊の泊小学校。元正門だった崇元寺通り寄りの門のそばに、校舎2階まで伸びたポインセチアの木がありました。
対応したのは教頭の當山忠男さん。「10年前にはすでにあったとのことですよ」
通りに面しているので目立ちますね。クリスマスシーズンに備えて、大切に育てているんですか?
「いや、年に3回のPTAの草刈り作業で周りをきれいにするくらいで、特に何もしていませんよ。肥料を与えたりもしていません。放っておいてもスクスク育っているようですね」と當山さんは話します。
ところで、県内でもポインセチアは出荷用に栽培されているのでしょうか。
県農林水産部園芸振興課に聞くと、「糸満市で出荷の実績があるようですよ」とのこと。さっそく、JAおきなわ糸満支店に電話で問い合わせ、経済部営農課の仲門和則さんに話を聞きました。
糸満市でポインセチアを作っていると聞いたのですが?
「はい。県内では唯一、糸満市内にポインセチアを栽培する園芸農家があります」。
どのくらい作られているのですか?
「出荷は11月後半から12月前半を目安に行われます。約5千鉢出荷されていますよ」。
今回、出荷のピークということで農家の方とはお会いできませんでした。県産ポインセチア、応援したいですね。機会があれば実際のハウスを見てみたいものです。
観賞用は交配種
沖縄の植物に詳しい県緑化種苗協同組合の比嘉正一さんを訪ねました。
「ポインセチアの赤く花びらに見える部分は、葉なんですよ。メキシコ原産で、沖縄には明治時代に導入されたといわれています」と比嘉さん。どのような経緯だったのでしょう。「残念ながら、詳しいことは分かりません。沖縄は、古くから中国、南米、アメリカ、ヨーロッパなど人との交流が盛んです。それで持ち込まれたと思いますね」
庭などで大きく育っているのは沖縄独特の風景なんですか? 「ポインセチアは寒さに弱くて、越冬するのが難しいんです。だから地植えで育つのは、せいぜい国内では奄美が北限ではないでしょうか。沖縄は亜熱帯ですから植物がよく育つんですよ」
なるほど、沖縄の気候に合っているわけですね。
ところで、ホームセンターなどに行くと最近は、赤だけでなくマーブル模様や白っぽいものなどいろいろあります。それも庭で育ちますか?
「観賞用に売られているものは、さまざまな品種の交配種なんです。鉢で楽しむために、色だけでなく丈が長くならないよう節間が短く、葉が大きくなるように改良されています。地植えしても、あまり大きくはならないと思いますよ」と比嘉さん。
そういえば、あちこちの庭に地植えされて大きくなっているものにマーブル模様などは見当たりません。改良以前の原種に近いものだから育っているわけですか。それで古い民家に多く見られるんですね。
自生種は地味
「ポインセチアもそうですが、沖縄の色とりどりの花木は、ほとんどが外から持ち込まれたもの。ヤンバルなどにある自生種には、あまり色がありませんよね?」
ヤンバルの山が赤や黄色に染まった光景は見ませんね。
「沖縄は今、一年中花が咲いてカラフルで美しいですよね。花というのは、人間の心のゆとりの表れとも言えるんじゃないかな」と比嘉さん。確かに。食べるものにも困った時代を経て、現在の観光立県のイメージが定着した沖縄。花で季節を感じ、心癒やされる時代を生きていること自体、感謝しなければ、と思った調査員でした。