「島ネタCHOSA班」2014年05月08日[No.1517]号
先日「泰山石敢當」と書いてある石敢當を見ましたが、普通のものと違いがあるんですか?また、他にも面白い石敢當があったら教えてください! (那覇市 ホリデー毎日さん)
石敢當って何なのさ!?
県内のT字路にかなりの割合で置かれている石敢當。シーサーと並んで、県産魔よけグッズ(?)の代表選手ですよね。
実は隠れ石敢當ファンの調査員。気をつけて見ていると、文字にしろ形にしろ、意外にいろいろな種類を見かけます。でも、そもそも石敢當っていったい何?
意外な起源
知っているようで知らない石敢當のABCを教えてもらうため、沖縄各地の呪符に詳しい琉球大学教授、山里純一さんの研究室を訪ねました。
まず調査員の目に入ったのは、机の上に置かれた小さな石敢當の置物(写真①)。山里さん、これは?
「中国の五大霊山の一つに数えられる山東省の泰山で売られていたお土産物です」
えっ、中国にもあるんですか?
「石敢當の発祥は中国の福建省南部といわれており、中国から沖縄と日本に広まっていったのです」
すっかり沖縄だけとばかり思っていました! 聞けば、本土では「せきかんとう」と呼ばれ、日本全国に分布。最古のものは宮崎県にあるのだとか。ただ、本土より沖縄のほうが身近に定着したのが実情と山里さん。
「沖縄で最古の石敢當は、久米島にあり、『泰山石敢當』と刻まれています(写真②)。ただし、『泰山』と『石敢當』は、もともとセットではなく、別の要素。おそらく、石敢當という文字に、霊山として信仰される泰山の文字を加えることで、霊力がアップすると考えたのでしょうね」
石敢當というのは、昔の英雄の名前なんでしたっけ?
「民話などではそう説明されるのですが、学問の世界では、今ではそれは誤解だとされています」
ええっ、違うんですか?
「じつは中国には、『石敢當』という名の人物はいません。別にいた『石敢』という勇士と混同した説が江戸時代に伝わり、それが広まっていったようです」
石の力、文字の力
では、石敢當とはどういう意味なんでしょうか?
「中国では石に呪力があると信じられていたので、『石敢えて當たる』、つまり邪悪なものに石があたってはねつける、という意味だと推測できます」
確か、魔物は直進しかできないから、T字路のつきあたりに石が置かれるんでしたよね。
「はい。琉球の世の中でも、石そのものが魔よけになるという習俗がありました。それが中国伝来の石敢當と融合したのが現在の姿でしょうね」
石だけでも十分パワーがあるのに、さらに石敢當という文字を付け足したんですね。
「今でも、離島あたりでは文字のない石を置いたケースがけっこうありますよ。最近はそれに市販の石敢當をくっつけたり、ペンキで文字を書いたりした例もありますね(写真③)」
なるほど〜。こんなことしていいのかな?という気もしますが(笑)、興味深いですね。
「もともとは石の霊力が重要だったのでしょうが、時代が下るにつれ、文字の力が先行する事例も出てきます。例えば、木の板や壁、シャッターの上に文字を書いただけでも石敢當になってしまうんです」
うーん、面白〜い! 実はこのあと、変わり種の石敢當の写真をたくさん見せてもらったのですが、残念ながら紙面が尽きてしまいました。今回はその中から一つだけ、平安座島にあったという壁画石敢當をご紹介(写真④)。そのほかは、また別の機会に譲りたいと思います。
皆さんの身近にも、不思議な石敢當があったらCHOSA班まで教えてください!