「島ネタCHOSA班」2014年08月14日[No.1531]号
那覇市西のコンビニの隣に、巨大シーサーを模した植え込みがあります。この間は、クレーン車まで使って手入れをしていました。誰が何の目的で作っているのか調査してください。
(那覇市 Tさん)
植え込みでシ~サ~!?
連載「私のシーサー」も担当している調査員。ぜひ合いたくてワクワクしながら早速行ってみました。
国道390号、旭橋から三重城に向かう道沿いの駐車場の一角に、こんもりとしたガジュマルがあります。近寄ってみると、おー! 迫力ある面構えです。三重城向けに口を開け、迫力満点。しっぽも立派です。
駐車場の看板には、「国際サンゴ加工所」の文字が。問い合わせると、「はい、うちの従業員が手入れしていますよ」との返事。担当者を訪ねました。
一日掛かりで手入れ
サンゴの加工・販売や観光施設などを運営する「国際サンゴ」で、施設の植物などの手入れを担当する与那嶺巌さんが巨大シーサーの飼育係(?)です。「このガジュマルは、25年前に小さな苗から育てたものです。うちの会社は、この地で生まれて地域の人たちにお世話になっているので、何かシンボルになるものを作ろうということになったんです」
ガジュマルがすくすくと成長した10年前、角地にあるため、地域を見守る魔よけのシーサーに成型するアイデアが社内で上がりました。
「決まったはいいんですが、作業は大変なんですよ」と与那嶺さん。まずは大木全体を長方形に刈り込み、それから顔、胴体などを形作っていきました。高さ約5㍍、体長約7㍍ほどです。「口が開いて見えるよう、竹で縛って枝が伸びるのを待ちました。しっぽは、ロープで引っ張り上げて、枝が上向きになるように工夫したんですよ」
なるほど、表情を作るのが難しいんですね。しかし、やったー完成! で終わらないのが植物とのお付き合いだそう。「特にこの時期、台風の前後は大変です。枝が折れて吹き飛ばないよう刈り込んだり、バランスが崩れたら修正したり。高所作業車で一日がかりです」
今では通りを行き交う観光客が写真を撮ったり、「これ何ですか?」と話し掛けられたりするそうです…。えっ? 与那嶺さんに?
「はい、シーサーの様子を見ながら作業服でしょっちゅう通りに立っているもんですから、『かっこいいですね』などうれしい声をよく聞きます」と笑顔に。
「風が吹くとね、口が上下にパカパカ動いてかわいいですよ」と目を細める与那嶺さんと話していると、調査員の中にもう一つ、緑のシーサーの面影が浮かんできました。えーっと、どこで見たんだっけ?
地域への愛着形に
記憶を頼りに、那覇市壺屋の壺屋やちむん通りへ。確か、スージグヮー(路地)に…、あっありました。住宅のフェンスの上に、高さ約2㍍、長さ約3㍍に刈り込まれたガジュマルが寝そべっています。
個人宅にも関わらず直撃してみました。対応したのは、新里理枝子さん。「はい、うちの父が大切にしていたシーサーですよ」
このシーサーを作り、大事に手入れしていた島袋弘さんは、壺屋で生まれ育ちました。この地にしっくりなじむシンボルを10年前からコツコツと一人で作り上げたそうです。
「フェンスの上にあるので高さもあるし、夏場などは大変そうでした」 それを実感したのは、2年前に弘さんが84歳で亡くなり、このシーサーを引き継いだ後。 「父の地域に対する思いを受け継ぎたいと家族5人で頑張ったんですが、とても、とても」。今は、年に数回、専門業者へ手入れを頼んでいるのだそうです。
地域を見守る2体のシーサー。さまざまな形があるんだなーとあらためて実感した調査員でした。