「島ネタCHOSA班」2015年2月19日[No.1557]号
ホエールウオッチングのシーズンですね。この時期に沖縄にクジラが現れるのはなぜなのでしょうか? 沖縄とクジラのことをいろいろ教えてください。
沖縄の海になぜクジラが多い!?
確かに今の時期は沖縄の海にクジラが回遊していますね〜! 特に慶良間諸島近辺にはザトウクジラがたくさん出没します。
クジラについていろいろ資料を集めていると、座間味村ホエールウオッチング協会があると知り、事務局長の大坪弘和さんにお会いして来て、クジラの生態や協会のかかわりなどを聞いてきました。
さらに、沖縄とクジラの関係なら詳しく展示した博物館が名護市にあることも教えてもらいました。
イルカとクジラの違い
名護市といえばかつてヒートゥ(イルカ・名護ではピトゥという)漁が盛んなところ。クジラのことを調べるのにイルカで有名な名護市の博物館なのと思ったけれど、大坪さんによれば「実はイルカもクジラも同じなんですよ。違うとしたら大きさで、その境はだいたい体長4㍍までがイルカで、それ以上に大きいのがクジラなんです」とのこと。
現在、世界のクジラの仲間は86種類。大きくハクジラとヒゲクジラの2つに分類されるそうです。「名護のヒートゥ漁で、よく獲れたコビレゴンドウやバンドウイルカなどはすべてハクジラ。沖縄でよくみかけるザトウクジラはヒゲクジラです」と、大坪さん。実は名護でもザトウクジラを捕鯨していた時期があるんです。
その沖縄の捕鯨について、詳しく展示されているというのが名護博物館です。2階にはクジラの骨格や漁具、歴史などが展示されていました。そこにはヒートゥは昔から名護の人々にとってユイムン(寄り物/神様からの贈り物)とされ、貴重なタンパク源だったことがわかりました。どれくらい前から漁が行われていたのかは定かではないのですが、数百年の歴史があるそうです。
近代化するにつれて漁船も漁具も進化し、1950年以降はザトウクジラを捕鯨する業者が増え、過剰に獲り過ぎたことにより、58年をピークにクジラの数が減少。その後、沖縄に限らず世界規模でザトウクジラの捕鯨は禁止に追い込まれていきました。
新しい関係を築く
捕鯨禁止から20年ほどたった1985年、座間味村内の島を船で渡っていた若者が、阿嘉島付近で2頭のザトウクジラを目撃しました。漁でほぼ獲り尽くされ絶滅近くにまで追いやられた沖縄の海に、なぜクジラたちは戻ってきてくれたのでしょうか?
「沖縄の海は暖かく特に慶良間諸島周辺の海域は島々に囲まれていることと、ほどよい海の深さがクジラたちにとってデートスポットであり、出産や子育てに最適な場所なのです」
ハワイ諸島や小笠原諸島などの海域も同じ条件だそうです。
ちなみに小笠原では1989年に日本初のホエールウオッチング協会を立ち上げました。その2年後、小笠原を視察した座間味村もホエールウオッチング協会を設立。翌シーズンからはツアーを開始し、国内でも比較的早くに本格的なホエールウオッチングを観光の目玉にしました。
「85年にザトウクジラを発見・感動体験をした若者は、その感動を多くの人に伝えるため、現在はホエールウオッチング船のベテラン船長として観光客のみなさんを慶良間の海へと案内しています」
昔からクジラとの歴史が深かった沖縄。戦後の食糧不足の時代、捕鯨によるクジラの激減はありましたが、今では沖縄観光の目玉の一つとして人とクジラとが優しい関係に発展していることが調査をしてよく分かりました。この時期だからこそ、クジラに会いに行くのもいいかなと思った調査員でした。