「島ネタCHOSA班」2015年3月19日[No.1561]号
先日、浦添市の外れにある畑で中高年の方々が何かの低木を手入れしていました。聞くと、桑の木だそうです。なぜわざわざ桑を栽培しているのか不思議です。調べてください。
(浦添市 ハルサーさん)
桑を育てる高年齢者!?
桑といえば、初夏に道端で赤黒く熟したシマグワの木の実を見つけると、つい手が伸びる調査員です。う〜ん、ブルーベリーに似たその甘さはなぜか懐かしい…。郷愁を誘う木の実ですよね〜。
インターネットで検索すると浦添市シルバー人材センターの事業と分かり、調査に向かいました。
蚕のお世話係! 登場
浦添市シルバー人材センターの比嘉秀三次長に話をうかがうと、市では平成18年に特産品「うらそえ織」の開発で養蚕事業に乗り出したとのこと。平成22年、この養蚕事業を同シルバー人材センターが高年齢者の生きがいづくり、人材を開拓する目的から受託することに。
「織物用の絹糸を調達するために繭を作る蚕を養います。桑畑は蚕の餌となる桑を生産するために造ったもので、当センターの会員20人ほどで育苗、肥培、草取り、収穫して絹糸の生産につないでいます」
桑の原木は2メートルほどに成長すると、蚕の餌用に先の50㌢を剪定(せんてい)しても4カ月後にもう元通りに達するとか。「『又』を3つ書いて『桑』となすように、いくら刈り取っても〝また〟伸びる樹木」と比嘉次長。
「桑」はそのような木なんですね。勉強になります!
蚕は5月と10月ごろの年2回にひたすら桑の葉を食べ続ける「飼育期」があり、この間およそトラック2台分の桑の葉を消費するとか。それでも飼育期に大量消費する以外は、「又」を3つ書くほど伸びる桑葉の用途がなく捨てざるを得なかったそうです。
そこへ、今回も核となる人物が登場します。
医療事務職を定年退職し、「園芸講座」を受講しようと入会した島袋幸子さん(70)。いきなり、蚕の世話係を任されてしまいました。
「想像してください。大きなイモムシのような蚕が5万匹ですよ。最初は蚕をじかに見ることすらできなかったですよ」
分かります。調査員もイモムシが大の苦手です〜。
そんな島袋さん、「今はイモムシもわが子のようにかわいい」と言い、蚕が繭を作ると餌である桑の葉を食べなくなるのを目にして、余った桑の葉の新たな価値を生み出してしまったのです
「もったいない」から桑茶・菓子
島袋さんは、丹念に育てた桑葉を捨てるのはもったいないと、お茶を発案し、自身で試みることに。
「祖母や母がお茶にしていた。自宅から鍋、コンロを持ち出し、生葉を蒸して、フライパンやホットプレートで煎ったりして試行錯誤しました」
このお茶作りは、沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)との共同研究により、6次産業化に発展。市の研究職員である大塚京平さんは「原料は、沖縄にある40種ほどのシマグワを選別。シマグワには食物繊維がゴボウの約7・5倍あり、血糖値上昇抑制作用が確認されています。お茶は、研究により収穫から粉砕の工程を確立して、乾燥工程を特定することで風味や機能成分を保持しました。また、シマグワの実の糖度はブドウと同じ平均20度で、アントシアニンはブルーベリーの3倍もあるのです。桑の実を特産品に生かせないかと探っているところです」
同センターは葉の粉末、実を活用して紅茶、アイスクリーム、果実のスイーツなどを開発中。
話を聞き終えて桑葉茶で一服。やはり郷愁を誘う優しいまろやか風味です。
高年齢者の方々は、蚕の餌だけでなく、浦添市の伸びる芽を育てているのかもしれないと納得した調査員でした。