「島ネタCHOSA班」2015年4月16日[No.1565]号
この4月に新しい職場に配属になり、ノートや筆記用具、備品を配布された際「学事奨励会みたいだね」といったら、30、40代の同僚は知りませんでした。学事奨励会ってもうどこもやっていないのですか?
(那覇市 出発(たびだち)の歌さん 50代)
学事奨励会は絶滅!?
「学事奨励会か、懐かしいなぁ」と、つぶやいた最年長の調査員に若い調査員が「何ですか、それ」と質問してきました。それを聞いた最年長調査員は、だからこそ調べてみる価値ありと判断。さっそく社内の同僚や友人、知人仕事関係者20人ほどに「学事奨励会を知っていますか?」と聞いてみました。
すると、45歳前後が知っている世代と知らない世代の境で、知っているという30代の人は自治会活動の盛んな地域出身だと判明しました。
成績優秀者に授与
沖縄で初めて「学事奨励会」が行われたのは1901(明治34)年の那覇区泉崎(現那覇市泉崎)。学年の終わりに成績の良かった生徒に賞品を授与することで向学心を持たせたそうです。それから氏や一門、各集落なども始めるようになり県内各地に広がりました。
戦前の浦添市伊祖集落では、小学生を御嶽に集めて集落の役員たちが飲み物や食べ物を提供し、子どもたちを激励したそうです。
戦後、物不足で何もないときに、貴重なノートや鉛筆を配ったのが始まりで、那覇市寄宮出身の50代後半のMさんの記憶によると、「学事奨励会」の日は子どもたちが銅鑼(どら)を叩きながら「学事奨励会が始まるよ」と呼びかけ町内を回り、子どもたちを区長の家の前に集めて、名簿を読み上げながらノートと鉛筆を配っていたそうです。
自治会の努力で行われる
では、現在はどのくらいの自治会が行っているのか、電話帳からランダムに20件ほど自治会を選んで聞き取り調査したところ、半分以上が行っていないという返事でした。
そんな中、北中城村の瑞慶覧自治会が学事奨励会を行うと聞いたのでお邪魔することに。
「瑞慶覧集落は戦後、米軍基地に接収されたため、住民は離散しました。1962年に現在の場所に新たに瑞慶覧集落ができましたが自治会活動は活発でした。私がここに引っ越してきたのが40年以上前ですが、学事奨励会はそのずっと前から行われていました」と森田眞喜子自治会長。現在はノートや鉛筆ではなく図書券を贈呈、大学生には奨学金制度も設けています。
また、自治会ができて8年目の与那原町東浜自治会でも「学事奨励会」が行われています。自治会長の國仲健次さんよれば「東浜は新しい街。自分たちの街は自分たちで守ろうと自治会を立ち上げ、同時に地域が一体となって子どもを育てようという思いで学事奨励会を始めました。子どもたちが自分の住んでいる街が故郷だと思えるようなるといいですね」と語りました。
最後は那覇市宮城(みやぐすく)自治会。自治会の長老的存在の新垣昴(つとむ)さんと上原盛幸さんによると、戦前までは子どもたちの向学心を育成する目的で行われ、せんべいや鉛筆、ノートなどが配られたそうです。昨年は区の御嶽前広場で自治会の運動会を兼ねて行われています。
浦添市のある自治会は「学事奨励会はありませんが、スポーツや学業で顕著な成績を収めた子どもや、自治会が行う祭りや清掃など積極的に参加している子どもたちに図書券をあげています」
「学事奨励会」という形はなくなっていても、子どもたちに何かしてあげたいという地域の大人の思いは、今も変わらず残っているのだな、と思った調査員でした。