沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1571]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2015年05月28日[No.1571]号

ピンクの霊きゅう車

先日、友人から、沖縄にはピンクの霊きゅう車が走っている、という話を聞きました。最初は冗談だと思ったのですが、その友人は本当だと言い張るのです。興味があるのでぜひ調べてください!

(那覇市 ピンクダンディーさん)

えっ、ピンクの霊きゅう車!?

 ピ、ピンクの霊きゅう車!?

 よく、現実にはありえないもののたとえとして「ピンクのゾウ」などと言われますが、同じくらい意外性に富んだ組み合わせです。果たして、本当にピンクの霊きゅう車があるのでしょうか?

 …などと思っていたところ、調査員仲間から重要な情報が。いわく、「そういえば、通勤路に葬祭場があるんだけど、よくピンクの車が止められているのを見るよ。霊きゅう車かどうかは分からないけど…」

 な、なんですとっ? 

 調査員は、さっそく那覇市天久の那覇葬祭会館本館に向かいました。

まるで高級リムジン

 厳かな葬祭場ということでくれぐれもお邪魔にならないよう、静かに門をくぐった調査員。出迎えてくれた総合葬祭那覇の松田安史さんに「あ、あのぅ〜、こちらにピンクの霊きゅう車は…」とドキドキしながら尋ねます。

 「はい、ご用意しております」とサラリと答える松田さん。えっ? ええっ? えええええっ、本当にあるんですかーっ!?

 「ええ、そちらに止まっていますよ」

 というわけで、さっそく駐車場に案内してもらった調査員。そこには、確かにピンクに塗られた車が止められていました!

 でも、一見したところ、いわゆる「霊きゅう車」というイメージではありません。むしろ、外国映画にも出てきそうな高級リムジンを思わせる形です。

 「霊きゅう車というと、黒塗りにお宮のような装飾を施した、いわゆる『宮型』の車体を思い浮かべるかもしれませんが、現在は宮型の車体は少なくなってきているんですよ」と松田さん。言われてみれば、昔に比べると見かける回数が減っているような…。

 「代わって登場したのが、洋霊車(ようれいしゃ)と呼ばれるタイプです。クラシックカーや高級車のような外見ですので、一目ではそれと気がつかれないことも多いですね」

 聞けば、洋霊車も一般的には黒が多いそうですが、「より明るいイメージの車体もご用意できないか」という思いから、総合葬祭那覇では、9年前に県内で初めて白の霊きゅう車を導入し、好評を得たそうです。

その人らしさ大切に

 「ピンクの霊きゅう車を導入したきっかけは、白の車体をご覧になった方から、ピンクもあったらいいね、という声を頂戴したことです。2014年12月に車体が完成し、翌月から使用しています。同時期にシルバーの車体も加わっていますよ」

 ピンクの車体は受注生産で造り、沖縄初。全国的にも珍しいのではないか、とのこと。

 「ピンクをお望みになるのは、長寿を全うされた方や、女性の方のご遺族が多いですね」と松田さん。

 ピンクの霊きゅう車を見ると最初は皆驚くものの、お見送りが済んでから「これで送り出してもらってよかった」と感謝されることも多いそうです。

 「沖縄には、カジマヤーを過ぎて長寿を全うされた方のお葬式で、ピンクのかるかんを配る風習がありますね。ピンクが案外すんなり受け入れられる理由には、それも関係しているのかもしれないですね」

   ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 最後にもうひとつ。松田さんは「年配の方に顕著ですが、沖縄では、霊きゅう車が通ると丁寧に手を合わせてお祈りされる方が多いですね」と話します。ウチナーンチュには、あの世へ旅立たれる方を敬う心が受け継がれているのですね。

 ピンクの霊きゅう車も、その背景にあるのは、故人をその人らしく送り出したいという気持ち。時代とともに霊きゅう車の姿形は変わっても、故人を敬う心はずっと変わらないのかもしれません。



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ピンクの霊きゅう車
松田安史さん
ピンクの霊きゅう車
これがうわさのピンクの霊きゅう車。まるで高級リムジンのよう
ピンクの霊きゅう車
高級感あふれる白とシルバーの車体も。最近は、こういった「洋霊車」と呼ばれるタイプの霊きゅう車が好まれるようになっているそうです
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