「島ネタCHOSA班」2015年12月17日[No.1600]号
11月中旬のある夜、八重瀬町の具志頭小学校そばの遊歩道で、ホタルが光っているのを見かけました。沖縄では1年中ホタルが飛んでいるのでしょうか? 詳しく調べてください!
(宜野湾市 禁煙中の元ホタル族さん)
本島に冬のホタルが!?
えっ、今の時季にホタル!?
ホタルといえば夏の風物詩というイメージしかありませんが…。果たして真相はいかに!?
島ごとに固有種も
〽ほー、ほー、ほーたるこーい、と懐かしい童謡を口ずさみながら、調査員が向かったのは、那覇市立森の家みんみん。出迎えてくれたのは、県内外のホタルの生態に詳しい理学博士の藤井晴彦さんです。
ホタルについてよく知らない調査員。まずは、基本的な質問から始めてみます。えーと、ホタルって清流のそばに住むんですよね?
「いいえ。よく誤解されるのですが、必ずしもそうとは限りません」
あれっ、違うんですか?
「日本列島には、約50種類ほどのホタルが生息しています。そのうち水生のものはゲンジボタル、ヘイケボタル、久米島に住むクメジマボタルの3種類しかいません。あとは陸生です」
なんと! 陸生のほうが圧倒的に多数派なんですね。
「はい。また、これも一般にはあまり知られていない事実ですが、幼虫はすべて光りますが、成虫が光らない種もいます」
ええっ!? これまた、びっくり。さらに聞けば、沖縄には島ごとに固有のホタルが住んでいるとのこと。
うーん、人生いろいろ、ホタルもいろいろ。そんなにいろんな種がいるなら、冬に光るホタルもいそうですね。
「県内には、ヤエヤママドホタル(オオシママドホタルと呼ばれることもあります)という、10月から3月に成虫になり、かつ成虫が光るホタルがいます」
おおっ、やっぱり冬に光るホタルがいるんですね!!
「はい。ただし、名前が示すように、本来は石垣島・西表島・竹富島・黒島など八重山諸島に発生するホタルです」
ん? 質問は本島での目撃情報ですよね。これは一体!?
誰かが持ち込んだ!?
頭をひねる調査員に、あくまで推測と前置きしつつも、誰かが持ち込んでいる可能性もある、と藤井さん。実は、数年前から本島内でヤエヤママドホタルを見たという情報があり、八重瀬町のほか、中城村での目撃例もあるのだとか。
「ホタルは移動できる距離がとても短いんです。特に、ヤエヤママドホタルはメスが飛べないため、自分の力ではほとんど移動できません」
海を渡ることができないのはもちろん、八重瀬町から中城村への距離を移動するのも難しいそう。となると、やはり人の手が介在しているのでしょうか。
でも、たとえ誰かが持ち込んでいるにしても、本島で冬もホタルが見られるようになるなら、いいことなのでは?
「それは間違いです。沖縄には、島ごとに固有のホタルがいますが、他の地域に移動させるとさまざまな悪影響が出ます。持ち込まれた地域の固有のホタルを絶滅させる可能性だってあるんですよ」
ええっ、それは大変!
「沖縄の生態系は多様で豊かといわれますが、そのバランスは脆弱で壊れやすいのです。
人間の場合にはコミュニケーション能力があるので、異文化との接触により新しい文化が生まれ、社会がより豊かになりますが、生き物の世界は事情が異なります。それぞれの地域に固有の種を移動させることで、生態系が崩れ、逆に多様性が失われてしまうことになりかねません」
なるほど、マングースの例もありますしね。生き物をいたずらに人の手で移動させることは慎まなければならないのですね。
「何はともあれ、状況を把握するには、もっと情報が必要です。10月〜3月に本島内で光るホタルを目撃したことのある人は、ぜひお知らせください」と藤井さん。読者の皆さんも、ご協力をお願いします!