沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。週刊レキオ



[No.1625]

　全国放送の番組やステージで物まねを披露し、あのコロッケさんの妹分として活躍。1990年代の物まねブームの中心にいたのが、「しじみ」こと「松下桂子さん」。そんな有名人が県内にいるのでしょうか？　うわさを耳にした記憶はあるものの、確かめた事のない調査員。「しじみさんを探せ！」とばかりに調査します。

2歳で物まねデビュー

　小泉今日子、中森明菜、山口百恵にクレヨンしんちゃん…多数の物まねレパートリーを持つ、松下さん。那覇市若狭に自身がオーナーの「ものまね屋　しじみんちゅ」があると聞き、訪ねました。間もなく本人が来るというのでワクワクです。

　お会いした松下さんは小柄でとてもかわいらしい方。にっこり笑うと、キョンキョン（小泉今日子）の笑顔に重なります。「ご本人が好き、という気持ちで物まねを始めます。憧れて歌声を聞くと自然に体に入ってくる感覚です」。

　経験を重ねるうち、アイドルから演歌歌手まで幅広いジャンルの物まねができるようになったそうですが、歌い始めたのはいつごろですか？

　「2歳です。歌詞も見ずに『真夜中のギター』をフルコーラスで歌ったらしいです。子どもの頃から歌う事が大好きだった私は、テーブルに上がってスポットライト代わりに懐中電灯を当ててもらい歌っていました。でも仕事になるとは思ってなかった」

　大人っぽい曲を歌っていたようですが、幼稚園教諭の母親がピアノを弾き、電器店経営者の父親がカラオケを設置し音楽があふれる家庭で育ったそうです。幼稚園の頃にはアグネス・チャンやフィンガー5、小学生の頃にはピンク・レディーにキャンディーズと流行曲を覚えて歌い、実力を磨き上げた物まね人生。17歳でテレビ初出演を果たした後にテレビ業界の裏方を経験し、オーディションがきっかけで1990年にプロデビューのチャンスをつかみます。

「沖縄病」、在住9年

　篠塚満由美さんとのデュオ「しじみとさざえ」名で歌った「ものまね！想い出の九十九里浜」は、大ヒットを飛ばし、物まね界のスター街道を突き進んだ松下さん。どうして現在は沖縄にいるのでしょう？

　「コンサートで沖縄に来ましたが、滞在18時間でとんぼ返り。海が見られず残念で、すぐ遊びに来たんです。気付いてみると年に5〜6回は通い、東京で仕事をして沖縄でお金を使う生活の繰り返し。それなら住もうと決め、2007年に移住しました。沖縄が大好きになっていたんです！」

　親しみやすい県民性、のどかな風土に、心をつかまれたそうです。そして沖縄生活を始めて半年足らずで出店の誘いを受け、毎晩店で歌って多くのお客さんを楽しませました。でも実は、タダ働き同然の悲しい日々が続いたそう。当時の苦労話は「沖縄で店をやろうと誘われ、時給90円で1年間」という見出しで、全国紙で報道されました。

　それでも泣き言は言わず、「その店のオーナーにレールを引いてもらい、精神的に強くなりました」と話す松下さんは、経営者になる覚悟を決め7年前に現在の店をオープン。

　「お店を持つ夢がかないましたが、人生最大の夢は沖縄に物まね文化を残すこと。東京から来た物まねタレント『しじみ』がいた、と沖縄の歴史に名を刻みたい！」と宣言します。

　話し終えると松下さんは、マイクを取りキョンキョンの名曲「優しい雨」を熱唱！　本人がそばで歌っているかのような状況に、大感動するばかりの調査員。

　「しじみんちゅ」では歌がじかに聞けるのはもちろん、リクエストやデュエットができるかも！？　ただし不在時もあるので、来店前に電話確認が必要です。お店はチャージ1000円に注文分の飲食代を払う、安心のシステムでした。7月3日（日）にはイベント「ナウでヤングにキメNight」（那覇市で開催）で、物まねしながらDJに挑戦する松下さん。そっくりな物まねで、これからも楽しませてください！