「島ネタCHOSA班」2017年03月23日[No.1665]号
ある日、レキオ編集室に届いた1通のメール。そこには「今帰仁村の山奥の秘境で活動している劇団を見にきませんか?」と書かれていました。今帰仁村の秘境に劇団!? 調査員はさっそく現場に直行しました!
今帰仁村の秘境に劇団!?
教えられた住所をたよりに、車を今帰仁村謝名の山奥へと走らせた調査員。くねくねと続くカーブを何度も何度も曲がっても、道はまだまだ続きます。
ひょっとしてこのまま永遠にたどり着かないんじゃ……と不安になったころ、ようやく建物が見え、ホッと胸をなでおろした調査員でした。
手作りの芝居小屋
「ここはビーチロックビレッジというペンションで、経営者が『劇団ビーチロック』を主宰しているんですよ」と出迎えてくれた同劇団の制作運営担当・島英輝さん。
宿泊用のテントやロッジが立つペンションの敷地内には、木造の建物が。聞けば、この建物を劇場と練習場として使っているとのこと。
「劇団の創設は2014年3月。演劇好きな仲間たち数名と立ち上げ、現在は15人の劇団員がいます」と主宰の新井章仁(あきひと)さんは話します。
劇団員はプロの役者ではなく、それぞれ仕事をしたり、学校に通ったりしながらの参加。住み込みでペンションで働く団員3人もいるそうですが、ほとんどは週に2〜3度、自宅から通って練習に励んでいるとか。
劇団ビーチロックは、創設から約3年の間になんと11回もの本公演を実施。およそ1シーズンに1回というハイペースで、新井さんによるオリジナル脚本の劇を上演しています。
「本公演は主に県内各地の劇場で行われていますが、希望があれば週に最大7回、施設内の芝居小屋で2人芝居の常設上演も行っていますよ」
演技に夢中の14歳
調査員が訪れた日は、3月25日(土)・26日(日)に迫った第12回本公演「オキナワ・シンデレラ・ブルース」の稽古中でした。
物語は、激動の70年代の沖縄を舞台に、閉鎖の危機にあるミュージックバーの娘がスターへの階段を上っていく……というもの。
娘役を演じるのは、同劇団最年少14歳のメンバー、今帰仁中学2年生の松好海(まつ・このみ)さん。
松さんは、小学6年生の時、劇団の初公演を見て感動して入団。以来、第2回公演からずっと出演を続けてきましたが、来年の高校受験のため、今回の公演でいったん卒業することに。
「小学6年生の時からいるので、劇団員の皆さんは家族みたいなものですね」と明るい声でハキハキ話す好海さん。大人顔負けのしっかりした態度に驚く調査員に「劇団員は、大学生が1人いるけど、あとは社会人。いつも大人の中にいるからかな?」と答えてくれました。
「役と自分の行動が合っていない時の演技が難しいですね。どんな思いでこのせりふを言えばいいんだろう、と思う時があります」と好海さん。
「分からない時は、たとえばいたずらっ子の役を演じた時には、実際にいたずらをしてみたこともありました(笑)。あとは想像力。自分が役の人物と似た境遇にいた時を思い出すこともあります」
しばらく練習を見学させてもらった調査員。ひたむきな演技に加え、役者さんたちのお互いの呼吸が、自然と合っていることが特に印象に残りました。家族のような温かい劇団の雰囲気が反映されているのでしょうね。
今週末に開催される本公演は、70年代の時代背景に重ねて、今の時代を生きる人々へのメッセージが込められた意欲作。皆さんも、ぜひ足を運んでみてくださいね。
オキナワ・シンデレラ・ブルース
3月25日(土)13時・18時開演、26日(日)13時開演
宜野座村文化センターがらまんホール
問い合わせ 0980(56)1126