「島ネタCHOSA班」2017年09月21日[No.1691]号
海岸を歩いていると龍宮の拝所がありました。浦島太郎が行った竜宮城と関係あるのでしょうか? 興味があるのでぜひ調べてください!
(60代・なっちゃんオバン)
竜宮伝説、沖縄にも!?
「あれ? 海岸にそんな拝所ってあったっけ?」と疑問に思った調査員。ヒントを見つけるべく、沖縄本島中南部の海岸沿いを歩いてみました。そうしたら、どこもかしこも龍宮の拝所がいっぱい!
龍宮神は海の神様
まずは龍宮の拝所を拝む人たちを探すため、うるま市のコミュニティラジオ局「FMうるま」に問い合せ。紹介してもらった同市内の石川漁業協同組合を訪ねると参事の古謝哲次さんが笑顔で迎えてくれました。
「龍宮の拝所ですか? うちの漁港内にもありますよ。龍宮神は海の神様ですから、航海の安全と豊漁を願って、毎年旧暦5月4日だけはみんな漁を休んで、漁師と関係者一同で龍宮神を拝むんです」と古謝さん。
なるほど、龍宮の拝所では、海の神様としての龍宮神を祭っているのですね。漁は、自然の恵みに直結している仕事だからこそ、誰よりも自然の大切さを分かり、それが龍宮神の崇拝につながるのでしょう。
自然への感謝の祈りを大切にしている漁師さんたちの姿にほっこりした調査員に、古謝さんが一夜干しの島魚を手渡してくれました。「はい、あなたもお土産に魚持っていって。島魚の一夜干しの販売は、県内漁協ではうちが初めてなんですよ」。ありがとうございま~す!
琉球人は竜宮リピーター!?
調査員が次に向かったのは図書館。県内各市町村の民俗史を調べてみると、新版「宮古史伝」の中に何やら興味深いことが書かれていました。
概要はこう。「荷川取北宗根の真々佐利という男性が近くの海でエイを釣ったら美しい女になり、結婚したが別れてしまった。また同じ海で漁をしたら、2~3歳の子どもが海から出てきて『母さんから、お父さんをお供して参れ』と言われて来たという。一緒に海の中に入ると竜宮界に出て、元妻と再会した」。
ほほー。沖縄の昔話でも、竜宮が登場するのですね! お話はまだ続きます。
「おもてなしを受けて、3日3夜をすごして人間界に帰る時、不老不死のお酒が入っている瑠璃壺(つぼ)を渡された。人間界に帰ると、すでに3年3カ月が過ぎていた。一家はお酒のおかけで無病息災の長寿を得、金持ちに。それが島中にばれ、みんなが家に来るので『すでに飲み飽きた』と言ってしまったため、壺は白鳥に化して、空高く舞い上がった」
あらら、大変! 不老不死のお酒の壺の行方は!?
「白鳥は、宮国のシカヤプという所に止まった。そこの主人は、ある夜『白鳥は富貴の神であるから、九月の乙卯の日に三日間祭ったら、豊年を賜(たま)う』と神様のお告げの夢を見たので、以後、この伝えにより毎年八月九月の内にンナプカ祭を行うようになった」とのこと。
沖縄で古くから語り継がれてきた話に詳しいNPO法人沖縄伝承話資料センターの副理事長・大田利津子さんは「沖縄では竜宮のような世界があることがたくさん語り継がれています。でも沖縄の昔話では、竜宮に行ったのは浦島太郎だけじゃないですし、竜宮から持ち帰ったのも玉手箱だけではないんですよ」と話してくれました。
余談ですが、浦島太郎が全国的に有名になった理由については、小学校教員を養成する沖縄大学こども文化学科 准教授の喜屋武政勝さんが「『浦島太郎』は教科書に載ったからではなく、逆に、だれもが知る有名な昔話なので教科書に採用されたのだと思います」と説明してくれました。
沖縄にも、独自の形で竜宮の物語が伝わっており、人々の心に龍宮神を敬う心が残っていたことに感動しました!