「島ネタCHOSA班」2017年12月07日[No.1702]号
そろそろクリスマスですが、地域単位で行われているクリスマス会があれば教えてください。
(50代・孫大好き良子おばぁさん)
与那集落のクリスマス会
街ではイルミネーションがキラキラと輝く季節。調査班は今年も最後まで県内各地を駆け巡りますよー。さぁ、今回もハリきって行きますか!
地域住民が手作り
まずはインターネットで各地のクリスマス会を検索すると、県内たくさんの催し物がズラリ。しかしながら、地域単位のクリスマス会の情報はなかなか見当たりません……。ということで、離島を含む県内たくさんの市町村を渡り歩き、地域の生の声を聞き続ける名物先生にアドバイスを頂くことにしました。訪れた先は、社会学専門で沖縄大学こども文化学科教授の宮城能彦さん。
「地域のクリスマス会といったら、何といっても国頭村の与那集落でしょう。与那は、天然の海と川と山がそろう県内でも稀有(けう)な地域でして、山はイノシシ、川はエビ、海はワイルドな釣り場。毎年大みそかは、共同売店で数量限定の山シシそばが販売されます。クリスマス会は、おばあちゃんおじいちゃんたちが一堂に会するとても温かい行事ですよ」と、昨年のクリスマス会の写真を見せてくれました。
宮城さんから紹介をいただき、後日、与那集落を訪ねた調査員。クリスマス会のまとめ役を務める辺野喜オリエさんが迎えてくれました。
「はい、与那でとれたみかん食べて。こっちはハブ茶。ハブっていっても毒蛇のハブじゃないよ、豆のハブだよ」と、オリエさんの豪快な笑い声とともに調査が始まります。
聞くと、クリスマス会はもともと地域おこしの一環ではじまったとか。前区長を中心に、村の人たちが「このままだったら20年後には与那の集落がなくなってしまう」と手を取り合い、与那の売店で使用できる地域通貨(商品券)を発行したり、集落の遺跡を回る集落ツアーなど、「ユナムンダクマ」で与那ならではの企画を興してきたそう。
「ユナムンダクマ」とは、古くは集落外から来た賊と武器ではなく知恵で対決した「与那の知恵」を表すそうですが、今では自らの手で自らの集落を大切にする「結の心と強いきずな」を意味します。
クリスマスも、最初は売店前でツリーだけ飾っていただけなのに、今ではおばあちゃんたちを囲むクリスマス会にまで成長。区長の宮城忠信さんは「お金はないけど、与那はとにかく食材が豊富で、胃袋が温かい」と、にこっと笑います。
心温まるひととき
続いて、前出の宮城さんが「せっかくですから、与那の集落を歩きましょう」と、集落をたびたび訪れている宮城ゼミの学生とともに集落を案内してくれました。民家の壁につたうトノサマバッタのお迎え(?)からスタート。ギャーと叫ぶ調査員をよそに、一行は祝女(ノロ)が神事で使う土地、湧水(カー)、川の暗渠通り、与那集落が見渡せる山道などを30分ほどかけて案内。自然の息吹と共に生きる与那集落のよんな〜時間が、ひんやりとした冬風を包み込みます。
ゴール地点では、オリエさんが「歩いて疲れたでしょう」と、与那特産のみかんゼリーや野草天ぷら、山シシ肉、与那の桜の花を使った桜茶などでカメーカメー攻撃。宮城区長も「これ、昔のおやつ。歯で皮の裏をこすって食べてみて。お酒に入れてもうまいよ」と、ニッキ(シナモン)の木の皮を差し出します。前区長も「これは特産のマウンテンピッグ(山シシ)」などとギャグ連発。
きょうは寒いはずなのに何だか暖かい。今年の大みそかは、与那売店の山シシそばを目当てにドライブをたくらむ調査員なのでした。